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東京地方裁判所 昭和63年(ワ)13706号 判決

アメリカ合衆国ペンシルバニア州 ピッツバーグ グラントストリート六〇〇番

原告

ユーエスエクス・エンジニアーズ・アンド・コンサルタンツ・インコーポレーテッド

右代表者社長

イー・エル・スミス

東京都中央区銀座二丁目三番六号

原告

大倉エンジニアリング株式会社

右代表者代表取締役

小澤潤

原告両名訴訟代理人弁護士

花岡巖

右同

手塚一男

右同

新保克芳

福岡県北九州市八幡西区東浜町一番一号

被告

黒崎窯業株式会社

右代表者代表取締役

河野拓夫

右訴訟代理人弁護士

大場正成

右同

尾﨑英男

右同

矢部耕三

右同

磯部健介

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告ユーエスエクス・エンジニアーズ・アンド・コンサルタンツ・インコーポレーテッド(以下「原告ユーエスエクス」という。)に対し金九億五九七〇万円を、原告大倉エンジニアリング株式会社(以下「原告大倉」という。)に対し金六億五九四〇万円及び右各金員に対する昭和六三年一〇月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告らの権利

(一) 原告ユーエスエクスは、その存続期間満了まで、次の二つの特許権を有していた。

(1) 特許第一三二四七一六号(以下「本件第一特許権」といい、その発明を「本件第一発明」という。)

発明の名称 溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構

出願日 昭和四七年六月七日

出願公告日 昭和五八年九月九日

登録日 昭和六一年六月二七日

(2) 特許第一三二八八五九号(以下「本件第二特許権」といい、その発明を「本件第二発明」という。また、「本件第一特許権」と「本件第二特許権」を総称して「本件各特許権」といい、「本件第一発明」と「本件第二発明」を総称して「本件各発明」という。)

発明の名称 溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖装置

出願日 昭和四七年六月七日

出願公告日 昭和五二年六月二一日

登録日 昭和六一年七月三〇日

(二) 原告大倉は、本件各特許権につき、日本において本件各特許権の対象である摺動ゲート閉鎖装置及びその組成物を製造する再実施許諾権付きの独占的通常実施権並びに同装置及びその組成物を販売する再実施許諾権付きの通常実施権を有していた。

2  本件各発明の特許請求の範囲の記載

(一) 本件第一発明

別添公告番号昭五八-四一一四二号特許出願公告公報掲載の明細書についての手続補正事項を掲載した別添「特許法第六四条の規定による補正(昭和六一年九月二六日)の掲載」の特許請求の範囲についての記載のとおり(以下、右補正後の明細書を「本件第一明細書」と、右特許出願公告公報掲載の図面を「本件第一図面」と、各称する。但し、記載箇所の指摘は、特に記するものの外は、右特許出願公告公報の箇所による。)

(二) 本件第二発明

別添公告番号昭五二-二二九〇〇号特許出願公告公報掲載の明細書及び図面についての手続補正事項を掲載した別添「特許法第六四条の規定による補正(昭和六一年一〇月二〇日)の掲載」の該当項記載のとおり(以下、右補正後の明細書を「本件第二明細書」と、右補正後の図面を「本件第二図面」と、各称する。)

3  本件各発明の構成要件

(一) 本件第一発明

〈1〉 溶融金属を収容する容器の注ぎ口のまわりの密封領域に沿って接触摺動し得る摺動面と該摺動面に対しほぼ直角方向に形成された注入開口とを有する耐火物性の摺動ゲート部材を有する。

〈2〉 前記摺動ゲート部材を収容する凹所をもった金属製のキャリアを往復運動可能に支持し容器に着脱可能に結合されるフレームを有する。

〈3〉 前記フレームを容器に結合し前記キャリアを動かして前記摺動ゲート部材の注入開口と容器の注ぎ口とを合致させたりずらしたりすることにより容器から流出する溶融金属の流れを制御する。

〈4〉 前記フレームは前記容器に対して揺動可能に取付けられて前記容器との結合が外されたとき前記耐火物性の摺動ゲート部材を露出する開放位置に揺動できるようになっている。

〈5〉 前記摺動ゲート部材をその摺動面を除いた表面の大部分を前記キャリアとは別体の金属包囲体で包囲している。

〈6〉 かくして金属で包囲された摺動ゲート部材が前記キャリアの凹所の中に該凹所の壁と金属対金属接触する状態で装着され、前記フレームが開放位置に揺動されるとき、凹所に対し容易に着脱できるようにしてある摺動ゲート閉鎖機構である。

(二) 本件第二発明

〈1〉 容器に対して固定され容器の注入開口と整合した開口を形成された耐火物の静止頂板を有する。

〈2〉 前記静止頂板と密着し該静止頂板の開口の周りの密封領域に沿って摺動可能な、その開口または開口のない部分が前記静止頂板の開口と整合したとき夫々容器からの溶融金属の流れを許容しまたは停止させるゲート・プレートを有する。

〈3〉 前記ゲート・プレートを収容しかつ支持する主フレーム構造体を有する。

〈4〉 圧縮されるとき弾発力を前記ゲート・プレートに作用させるように前記主フレーム構造体に装架された弾性押圧体を有する。

〈5〉 前記主フレーム構造体の一方の側に間隔を置いて取り付けられた複数個のブラケットを有する。

〈6〉 これらのブラケットの夫々には容器に取り付けたピンが嵌まり込む長孔が形成されている。

〈7〉 この長孔はその長手方向が前記ゲート・プレートの上面に対しほぼ垂直になる方向に形成されている。

〈8〉 前記主フレーム構造体の他方の側に取り付けた支承部材に着脱可能に係合するラッチ装置が容器に取り付けられ、該ラッチ装置は前記支承部材に係合させると前記ゲート・プレートの上面が前記静止頂板の下面に対し両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持されるようになっている。

〈9〉 前記主フレーム構造体が前記ラッチ装置で保持されているとき前記ピンを前記ブラケットの長孔に摺動させながら前記ゲ-ト・プレートを前記静止頂板に向って動かすようになっている。

〈10〉 前記弾性押圧体の弾発力に抗して前記ゲート・プレートを前記静止頂板に密着せしめてこの密着状態を維持する装置が設けられている。

〈11〉 摺動ゲート閉鎖装置である。

4  本件各発明の特徴

(一) 本件各発明は、いずれも、溶融スチール、アルミニウム、真鍮等の溶融金属を、収容する容器からインゴットケース等に注入するに際し、溶融金属の流れを制御するために、容器の注ぎ口に取り付ける摺動ゲート閉鎖機構(又は装置)である。

摺動ゲート閉鎖機構における溶融金属の流れの制御は、注入開口を有する上下一対の耐火物からなるゲート部材(ゲート・プレート)を、相対的に摺動せしめ、両者の注入開口を合致させたりずらしたりすることによってなされる。

この場合、ゲート部材は高温の溶融金属の作用で損傷しやすく、また短時間の使用で摩耗するため、頻繁に(少なくとも一日に一回といった程度で)新しいものと交換することが必要となる。そこで、摺動ゲート閉鎖機構においては、ゲート部材の交換作業の能率を高め、また、交換作業に際して耐火物を損傷させないようにすることが重要な課題となる。

前記一対のゲート部材のうち、一方は容器に固定された基板の凹所に取り付けられ、他方は、基板に対し着脱できるフレームに支持され、駆動装置により往復運動し得るキャリァの凹所に取り付けられる。前述した各部材の交換は、基板からフレームを外して行われる。

(二) 本件第一発明の特徴は、次のとおりである。

(ア) 従来の摺動ゲート閉鎖機構においては、〈1〉熱衝撃によって生ずるゲート部材のひび割れの拡大防止、〈2〉ゲ-ト部材の成形誤差の調整、〈3〉ゲート部材(耐火物)と基板又はキャリア(金属)との熱膨張の差の吸収等の目的のために、ゲート部材は基板又はキャリアの凹所にモルタルで固定されていなければならなかった。

その結果、ゲート部材を新しいものと交換するためには、モルタルを崩してゲート部材を凹所から取り出し、凹所から完全にモルタルを取り除いた後、再び凹所にモルタルを敷き、その上に新しいゲート部材を載せ、位置及び高さを調整してから長時間加熱してモルタルを硬化させ、更に冷却するのを待たなければならなかった。また、キャリアに固定されているゲート部材を交換する作業は、キャリアをフレームから外し、クレーン等の運搬器具で別の場所に運び、右に述べた手順でゲート部材を交換し、キャリアを再びクレーン等で運んでフレームに取り付けるという、非常に労力と時間を要するものであった。

このような交換作業の時間を短縮するために、予め別のキャリアに新しいゲート部材をモルタルで固定させたものを用意しておき、キャリアごと交換する方法も試みられたが、この方法も、キャリアの取外し、運搬、取付けに少なからず労力を要し、また一個の容器に対して余分のキャリアを用意しておかなければならないという問題があった。

(イ) これに対し、本件第一発明は、従来のようにゲート部材をキャリアの凹所にモルタルで固定する代わりに、ゲート部材の摺動面を除く大部分を金属包囲体で包囲したことを特徴とする。これにより、ゲート部材は、キャリアの凹所に対し、金属包囲体を介して金属対金属接触することになるので、金属包囲体と一体のまま、凹所に対し容易に着脱できるようになっている。

(ウ) かくて、本件第一発明の場合、交換現場では、容器の基板からフレームを開放位置に揺動させ、キャリアの凹所から摩耗した金属包囲体付ゲート部材を取り出し、新しい金属包囲体付ゲート部材を嵌め込み、フレームを再び基板に結合する作業を必要とするだけで、モルタル作業を必要としないので、これによって交換作業の能率は、従来に比べ格段に向上することとなったのである。

(三) 本件第二発明の特徴は次のとおりである。

摺動ゲート閉鎖機構(又は装置)においては、ゲート・プレートの交換作業の能率を向上させ、また交換作業に際して耐火物を損傷させないようにすることが重要課題であるが、本件第二発明はこのような課題の解決をもたらすものである。

(ア) すなわち、前述のとおり、従来ゲート・プレートの交換な基板からフレーム(構造体)を外して行われるのであるが、本件第二発明は、フレームの一方の側(ヒンジ側)に取り付けた複数個のブラケットに形成されている長孔に、容器に取り付けたピンを嵌め込み、これによって、フレームを容器に対して揺動及び垂直運動できるようにし、また、フレームの他方の側に取り付けた支承部材に、容器に取り付けたラッチ装置を係合及び離脱し得るようにしている点に特徴をもつものである。

(イ) 本件第二発明は、この構成により、フレームの開閉、ひいてはゲート・プレートの交換作業を極めて容易なものとしている。すなわち、フレームの一方の側は、容器の基板にヒンジ状に結合しているので、容器を横倒しにした場合、フレームを一人の従業員が書物のように開き、ゲート・プレートを交換することができるのである。これにより、以前にはフレームを基板から取り外すために、数人の作業員とクレーン等が必要であった作業が、たった一人の作業員でもできるようになったのである。

(ウ) 更に、前記長孔は、フレームを閉じた状態では、その長手方向がゲート・プレートの摺動面に対しほぼ垂直になるように形成されているので、ゲート・プレートを交換した後、フレームを閉じ、フレームの他方の側にある支承部材に前記ラッチ装置を係合させたときには、一対のゲート・プレート(耐火物)は、ほぼ平行に向き合った状態に保持され、次いで、締め付け機構によって密着させたとき、両者を一様の圧力で圧接させることができるのである。すなわち、本件第二発明は、前記長孔とピンを取り付けた機構により、一対のゲート・プレート(耐火物)を均一な接触圧をもって密着させ、また、閉鎖の際に両者が局部的に当接することによって起こる耐火物の損傷を避けることができるようにしているのである。

5  被告の行為

被告は、昭和五三年四月七日から別紙物件目録(一)ないし(三)記載のスライディングノズル(以下、個々のスライディングノズルを「被告装置(一)」、「被告装置(二)」、「被告装置(三)」といい、これらを総称して「被告各装置」という。)及び同目録(四)記載のスライディングノズル用プレート(以下「被告プレート」という。)を製造、販売した。

6  本件第一特許権の侵害

(一) 別紙物件目録(一)ないし(三)のA、Cの構成は本件第一発明の構成要件〈1〉を、B、Cの構成は構成要件〈2〉を、Cの構成は構成要件〈3〉を、D、Gの構成は構成要件〈4〉を、ぞれぞれ充足する。

(二)(1) 別紙物件目録(一)ないし(三)のH及び別紙物件目録(四)記載のとおり、被告の製造、販売する耐火物のプレートは、その摺動面を除き、その側面周囲は金属製フープで、摺動面の反対側の面はスティールシートでそれぞれ覆われている。したがって、側面周囲で金属製フープに覆われていない部分があるとしても、プレートの「摺動面を除いた表面の大部分」は金属で覆われている。そして、これら金属製フープ及びスティールシートは、いずれもスライド金枠とは別体の金属体であり、両者が「金属包囲体」として摺動面を除く耐火物のプレートを包囲していると評価できる。

構成要件〈5〉の「金属包囲体」とは、本件第一明細書に、「本発明は従来のように摺動ゲート部材をキヤリアの凹所にモルタルで固定する代りに摺動ゲート部材を摺動面を除き大部分金属包囲体で包囲することを特徴とする。したがつて摺動ゲート部材はキヤリアの凹所に対しては金属包囲体を介して金属対金属接触をなしているので金属包囲と一体のまま凹所に対し容易に着脱できる」(四欄一七行ないし二三行)と記載されているとおり、プレートとキャリアの凹所と金属対金属接触を可能にし、容易に着脱できるようにするためのものであるから、金属包囲体それ自体が一体となっている必要はなく、摺動ゲート部材が金属包囲体と「一体」で着脱できることに意味があるのである。

被告プレートは、その摺動面の反対側の面とスティールシートとの間にセラミックマットが接着されているが、セラミックマットにどのような効果があろうとも、スティールシートの存在によって金属対金属接触が可能となっている以上、本件第一発明の構成要件〈5〉に該当することに変わりはない。

したがって、被告各装置及び被告プレートは、本件第一発明の構成要件〈5〉を充足する。

(2) 被告は、スティールシート(薄鉄板)は、耐火性シートであるセラミックマットの金枠への焼付き防止のためのものであると主張する。

しかし、セラミックマットの金枠への焼付き防止ということも、結局、本件第一発明の金枠からの容易脱着という目的と何ら異なるところはない。もし、被告が共同開発したと主張する、乙第四号証の一の示すように、金枠とプレートとの間に耐火性シートを介在させることで「摺動ノズルを極めて迅速に取替え、且つ使用済の鋳込装置からの煉瓦の取外し等の手入れを容易にすること」(同号証一頁下から七行ないし四行)が可能なら、被告製品にスティールシートは本来不要のはずであり、被告製品は、スティールシートを用いて金属対金属接触させたことによって、初めてプレートレンガの交換の容易性という効果を得ることができたのである。このことは、被告の出願である甲第一六号証においても、「(3)外側に鉄板を貼って表面を保護しているので、耐熱可撓性シートの破損がなく、プレートレンガのセット作業が迅速、容易にできる。(4)プレートレンガの解体に当り、耐熱可撓性シートの表面を鉄板が覆っているため、この鉄板がスライディングノズル用金枠と分離し、耐熱可撓性シートが該金枠へ焼付くのを防止できる。」(一六九頁右下欄一行ないし八行)と明示されているところである。

そもそも、被告の出願である乙第六号証(二欄一一行ないし二九行)の記載から明らかなとおり、被告各装置は、本件第一発明の実施例に示されたような金属ケースとプレートとの密着性の欠点を除去することを目的として考案されたものであり、被告プレートの構成は、本件第一発明の開示する金属対金属接触による容易脱着という特徴を維持したまま、その改良技術として実用新案になっているのである。したがって、被告各装置が本件第一発明の技術的範囲に属するのは当然であり、それを今になって争おうとすること自体無理なのである。

(三)(1) 別紙物件目録(一)ないし(三)のⅠ記載のとおり、被告各装置は、その摺動金枠及びそれに取り付けられた金属性ブロックにより、耐火物製のプレート(下部プレート)を収容、保持する凹所が形成されている。そして、下部プレートの摺動面の反対側に接着されたスティールシートは、右凹所の底面と金属対金属接触する状態で装着される。また、側面においては、耐火物性のプレートに囲繞締着された金属性のフープが凹所を形成する金属性ブロックの内側面と金属対金属接触する状態で装着される。

このような金属対金属接触の結果、開閉金枠が開放位置に揺動されるとき、被告各装置の下部プレートは、モルタルによって固定される耐火物性のプレートを着脱する場合に比べてはるかに容易に凹所に対して着脱できるようになっている。本件第一発明の構成要件〈6〉の「凹所に対し容易に着脱できる」というのは、本件第一明細書に、「交換現場では容器の基板からフレームを外しキヤリアの凹所から摩耗した金属包囲体付ゲート部材を取出し新しい金属包囲体付ゲート部材を嵌め込みフレームを基板に結合する作業を必要とするだけでモルタル作業を必要としないので少数の作業員で極めて短時間で交換作業を行うことができる」(四欄二六行ないし三二行)と記載されているとおり、モルタルで固定する場合と対比して「容易」であることを意味するから、被告各装置の下部プレートは、右構成要件〈6〉を充足する。

(2) 被告は、被告各装置の凹所の底面は本件第一発明の「凹所の壁」ではないと主張する。しかし、従来技術は、キャリアの凹所の底面及び側面にモルタルを用いてプレートを固定していたのであり、それを解決した本件第一発明の金枠の「凹所の壁」が、その側面に限定されないことはいうまでもない。

被告は、本件第一発明では凹所の底には負荷パッドがあるというが、それは実施例にすぎず、何ら被告主張の根拠とはなり得ない。しかも、負荷パッドはそれ自体金属でできており、キャリアと一体であるから、負荷パッドの金属面は凹所の底面にほかならないのである。

(3) 原告ユーエスエクス作成の審判請求理由補充書(乙第一一号証)は、実施例の金属ケースの利点を説明しているが、本件第一発明が実施例に限られるものではない。しかも、右乙第一一号証で本件第一発明の利点として第一に説明しているのは、交換現場でモルタルを使用しないため、凹所からの着脱が容易であるという点である(一二頁七行ないし一八行)。被告製品は、スティールシートとスチールフープを備えた結果、金属対金属接触が可能となり、「モルタルを使用して凹所内に結合する必要はない」。すなわち、容易に着脱できるという本件第一発明の作用効果を発揮するのである。被告作成の「クロサキ・スライディングノズル」との名称のパンフレット(乙第二二号証)中の「クロサキ・スライディングノズルだけの特長」の項でも、「プレートれんがを金枠内に取付ける際モルタルはノズル孔まわりのみ使用するので取付け、取外しが容易でかつ乾燥が不要です」と述べているのであり、被告各装置が本件第一発明の作用効果を有することは明らかである。

このことは、被告社員が雑誌「耐火物」の一九七四年一〇月号に被告各装置の開発について発表した論稿(甲第一九号証)の次の部分からも明らかである。

「2・4 プレート、ノズルレンガの交換の簡易化

プレートやノズルの交換を早くするためモルタル類の使用を少くした。プレートには外周にスチールフープを巻き、裏面には膨張吸収耐火紙とブリキ板(原告註 同号証の図4では薄鉄板とされている。)を貼り付け、下部ノズルも薄鉄板の外筒に嵌めた。従ってモルタルを使用する部分は、プレートとノズルが接合するダボ部分のみである。プレートやノズルの交換時に、金物にモルタル類の付着が無く掃除が簡単である。」(三一頁右下欄)

すなわち、スチールフープと薄鉄板からなる構成は、プレートの交換の簡易化を目的とするというのであり、被告が主張するような、割れ防止等の他の目的については、何ら記載されていないのである。

(4) 被告は、被告各装置と本件第一発明の実施品の使用回数の差について主張するが、金属ケースを用いている原告製品と被告製品とでそのような差はない。被告のパンフレット(甲第一三号証Ⅱ-31)で原告製品(Flocon)と被告製品が比較されているが、プレートれんがの割れ防止の項目で、原告製品については、「プレートれんがは割れ防止のためにモルタルでメタルケースに固定されている。れんがのコストが高い」と記載されているにすぎない。また、同号証では、れんがの寿命の実際の比較もされているが(Ⅱ-37)、これによっても、被告製品約五回に対し、原告製品約四回であって、被告の主張が事実に反することは明らかである。

(四) したがって、被告各装置は本件第一発明の技術的範囲に属する。

(五) 別紙物件目録(四)記載の被告プレートは、被告各装置にのみ使用されるものである。

被告は、間接侵害が成立しない理由として、三枚プレート方式とヒンジレス型装置の存在を挙げる。しかし、被告製品のスライディングノズルが一つ一つ受注生産される以上、プレートのサイズ等は個々のスライディングノズルによって異なるはずであるから、全く同じプレートが二枚プレート方式にも三枚プレート方式にも共に使用できるということは、まず考えられないことである。また、ヒンジレス型は、プレートを交換する際に、開閉金枠を固定金枠から開放することも、その際金属対金属接触により容易にプレートが着脱できることも全く同じである。そして、特許請求の範囲で「フレームは前記容器に対して揺動可能に取付けられて前記容器との結合が外されたとき前記耐火物性の摺動ゲート部材を露出する開放位置に揺動できるようになっており」とあるのは、開閉金枠(フレーム)が容器に固着されておらず、それを開けて摺動ゲート部材を交換できるようになっている構成を示すものであって、開閉金枠と固定金枠がヒンジ結合されていることは必要でない。したがって、被告のいうヒンジレス型の開閉金枠も、特許請求の範囲で「容器に着脱可能に結合されるフレーム」にほかならず、本件第一発明の技術的範囲に属する。

(六) よって、被告が、被告各装置及び被告プレートを製造、販売する行為は、いずれも本件第一特許権を侵害する。

7  本件第二特許権の侵害

(一) 別紙物件目録(一)ないし(三)のA及びC記載のとおり、被告各装置の耐火物である上部プレート4は、容器の注ぎ口と整合する開口をもっているから、「容器の注入開口と整合した開口が形成された耐火物の静止頂板」に該当し、容器に固定された固定金枠1に取り付けられているから、「容器に固定」されている。したがって、被告各装置は本件第二発明の構成要件〈1〉を充足する。

(二) 別紙物件目録(一)ないし(三)のA及びC記載のとおり、被告各装置の下部プレート5は、上部プレート4の開口のまわりの摺動面と互いに接触摺動することで、容器からの溶融金属の流れを制御できるようになっており、容器からの溶融金属の流れを許容し又は停止させる「ゲート・プレート」に該当するから、被告各装置は構成要件〈2〉を充足する。

(三) 別紙物件目録(一)ないし(三)のB及びDに記載のとおり、被告各装置の開閉金枠2は摺動金枠3を支持し、この摺動金枠が「ゲート・プレート」である下部プレートを収容しているから、開閉金枠は、「ゲート・プレートを収容し、かつ支持する主フレーム構造体」に該当する。よって、被告各装置は構成要件〈3〉を充足する。

(四) 別紙物件目録(一)ないし(三)のKに記載のとおり、被告各装置のバネ12は、「主フレーム構造体」である開閉金枠の外側に設けられたバネ箱11の中に納められているから、「主フレーム構造体に装架された弾性押圧体」に該当し、圧縮されるとその弾発力を下部プレートに作用させるようになっているから、被告各装置は構成要件〈4〉を充足する。

(五) 別紙物件目録(一)ないし(三)の第4図に記載されている、開閉金枠2の軸孔10が存在する突起部分が構成要件〈5〉の「ブラケット」に該当し、開閉金枠の両外側に二つずつ間隔を置いて存在するから、被告各装置は構成要件〈5〉を充足する。

被告は、被告各装置にはブラケットが両方にあるから侵害でないと主張するが、両方にあるということは「片方にある」という要件を満足していることは明らかである。

(六) 別紙物件目録(一)ないし(三)のDに記載されているとおり、被告各装置の固定ピン〈1〉及び〈2〉は、固定金枠から延びたブラケット88’の丸孔に取り付けられているから、「容器に取り付けたピン」に該当する。ピン〈1〉、〈2〉は抜き差し自由であっても、開閉軸として機能しているのであるから、ピンが固定(固着)しているか否かは、本件第二発明とは何の関係もない。軸孔10は、目録F記載のとおり、長径が短径より長い「長穴」となっているから、被告各装置は構成要件〈6〉を充足する。また、この「長穴」は、その長手方向が下部プレートの上面に対しほぼ垂直になる方向に形成されているから、被告各装置は構成要件〈7〉を充足する。

(七) 別紙物件目録(一)ないし(三)のKに記載のとおり、開閉金枠の外側に設けられた箱の中に取り付けられたバネ押しは、金枠の開閉軸側だけでなく他方の側にもあるから、構成要件〈8〉における「主フレーム構造体の他方の側に取り付けた支承部材」に該当する。別紙物件目録(一)のトグル・リンクとトグル、別紙物件目録(二)の先端にボルトを有するアーム及び別紙物件目録(三)の圧着治具は、バネ押しと係合するようになっており、構成要件〈8〉における「容器に取り付けられたラッチ装置」にそれぞれ該当する(圧着治具は使用するにあたって、まず、容器「固定金枠」に取り付けられる。)。

そして、これらラッチ装置をバネ押しに係合しても、バネを圧縮する前は開閉金枠が閉じられた状態と同じであり、別紙物件目録(一)ないし(三)のLに記載のとおり、上下プレートの摺動面は互に間隔が開いているか、あるいは部分的に当接しているにすぎない。すなわち、上部プレートを下部プレートとは、本件第二明細書に記載されているとおり、互に「軽く接触する状態か若干・・・間隔を置いた状態で保持される」(甲第四号証訂一七頁下から一七行ないし一六行)から、構成要件〈8〉の「ラッチ装置は前記支承部材に係合させると前記ゲート・プレートの上面が前記静止頂板の下面に対し両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持されるようになっている。」に該当する。開閉金枠を「閉じる」操作により、開閉金枠が密着するのでない限り、閉じる操作の過程あるいは結果として上下プレートが部分的に接触しても、「両者が間隔を置いて向き合う」状態に該当する。本件第二発明は、上下プレートが局部的に接触して破損することを防止しようとしたものであり、被告がいうような、全く接触しないという意味での「何の制約もなく衝突すること」を防止しようとしたものではない。

よって、被告各装置は構成要件〈8〉を充足する。

なお、被告各装置ではピン〈3〉を挿入しているが、被告が主張するとおり、「ピン〈3〉の機能は開閉金枠を閉じたときに、再び開いてしまわないように一時的に開閉金枠を保持することだけである。バネ押しに力を加える段階でピンに力が加わることはなく、したがって、ピンを抜きさっても何ら差支えがない」のであるから、被告各装置が右に述べたとおり、構成要件〈8〉を充足することを何ら妨げるものではない。

(八) 右のように、開閉金枠がバネ押しとトグル等との係合により保持されているときは、本件第二発明の構成要件〈9〉における、「前記主フレーム構造体が前記ラッチ装置で保持されているとき」に該当する。

別紙物件目録(一)ないし(三)のK、Lに記載のとおり、バネ押しを押圧することにより、「長孔」である軸穴10の中でピン〈1〉、〈2〉の位置が移動し、下部プレートが上部プレートに押し付けられ、バネの圧縮により両プレートは面圧が負荷されて密着する。そして、この負荷状態は別紙物件目録(一)のトグル、別紙物件目録(二)のボルト及び別紙物件目録(三)のフックにより維持されるようになっているから、被告各装置は構成要件〈9〉、〈10〉を充足する。

なお、別紙物件目録(三)の場合、「密着せしめる装置」と「密着を維持する装置」は細かくいうと異なるが、本件第二発明において両者が同一である必要はない。

(九) 別紙物件目録(一)ないし(三)記載のスライディングノズルが構成要件〈11〉を充足することは言うまでもない。

(一〇) 被告は、別紙物件目録(一)ないし(三)のLの記載について、これをそのまま認めないが、以下にのべるとおり、被告の主張によっても、被告各装置の製造、販売が本件第二特許権を侵害することに変わりはない。

(ア) 被告は、被告各装置では開閉金枠を閉じたときに、上下プレートは完全に接触するか、少なくとも部分的に当接するかのいずれかである旨主張する。しかし、実際の被告各装置には、完全に接触するために開閉金枠が微動するだけの非接触部分があるのである。したがって、上下プレートが「完全に接触する」といっても、実態は本件第二明細書に開示されている「軽く接触する状態」(甲第四号証訂一七頁下から一七行)にほかならないから、被告各装置は、本件第二発明の構成要件〈8〉を充足する。

(イ) 被告は、「軸穴10中でのピン〈1〉、〈2〉、〈3〉の位置は軸穴の長手方向に移動し」という記述は、被告各装置には当てはまらないと主張する。

しかし、被告が実際にその理由として述べるのは、ピン〈1〉、〈2〉、〈3〉は丸孔によって固定されていて不動であるというに過ぎず、開閉金枠が微動するときに開閉金枠の軸穴が固定したピンの位置に対して動くことは認めている。したがって、被告の主張によっても、被告各装置が構成要件〈9〉を充足することに変わりはない。なお、被告は、開閉金枠の閉じられ具合によっては開閉金枠が微動しないこともある旨述べているが、実際にはそのようなことはあり得ないし、また、そのような例外的な場合の存在によって、被告各装置が構成要件〈9〉を充足する事実が左右されることはない。

(ウ) 更に、被告は、上下プレートがバネの収縮に伴って密着することはなく、密着するのはバネの収縮前であると主張する。

しかし、本件第二発明の構成要件〈10〉は、バネの収縮に伴って上下プレートが完全に接触することを要件としているのではなく、バネの収縮に伴って上下プレートにバネの収縮で面圧が加わることを要件としているのである。すなわち、溶融金属が上下プレートの摺動面から流出しないように上下プレートに面圧が加わった状態を「密着」と呼んでいるのである。したがって、仮に被告主張のとおりバネの収縮前に上下プレートに接触していたとしても、その後バネの収縮で所定の面圧をプレートに付与する以上、面圧付与に伴って完全に接触するのであって、被告各装置は構成要件〈10〉を充足するのである。

(二) 被告は、本件第二発明について、「この平行を維持したまま垂直運動で、両者を(全面にわたり)均一な接触圧をもって密着させる手段によって解決した。」等と主張する。これは、スライディングノズルが容器の下に来る位置のままで、すなわち容器を横転させずに、開閉金枠を開閉するのが本件第二発明であると主張しているにほかならない。しかし、本件第二図面第4図に記載されているように、開閉金枠の開閉は容器を横転して行われるのであり、被告の主張は本件第二発明を全く曲解している。確かに、本件第二明細書には、「垂直運動」との記載がある部分があるが、これは図面上の関係を水平、垂直といっているにすぎないものである。

仮に、本件第二図面第5図、第6図が容器を横転させずに開閉金枠を開閉した場合の動作を示すとしても、被告各装置を同様の状況で開閉させると、開閉金枠を閉じても上下プレートの間には必ず間隔があり、ピンを差すとその状態が保たれ、面圧付与操作により両者は密着し、当然「長孔」である軸穴中でピンが摺動する。

被告は、被告各装置の開閉金枠の水平方向回転中は、軸側の軸孔とピンとの関係は、ピンが軸孔の特定位置に止まる必然性も、特段の機構もない旨主張するが、本件第二発明はそのようなことを問題にもしていないし、実施例記載の装置にもそのような機構は存在しない。すなわち、実際に容器を横転させて開閉するとき、実施例の装置において、長孔中でピンがどの位置にあるとは決まっていないし、特定位置に保持する機構も存在しない。被告は、結局、本件第二発明について、垂直方向への動きを想定しているとし、また、長孔とピンがそれだけで積極的にピンの位置を規定し得るという曲解に基づいて、それと被告各装置とを対比して異同を論じているのである。

被告は、被告各装置では、長孔の利用ではなく、耐火物の材料の強度で局部的衝突による損傷を回避しているとする。しかし、長孔でなければ、局部的接触は回避されず、摺動面を接触させようとすれば、摺動面が大きく削り取られることになる。それでは摺動面を平滑に仕上げた意味は失われるのであり、材料の強度ということでは右問題は全く解決されない。被告各装置では、仮に局部的接触があっても簡単に解消されるのであり、これは軸穴が長孔になっているからにほかならない。

(三) 以上のとおり、別紙物件目録(一)ないし(三)記載の被告各装置は、本件第二発明の構成要件を全て充足するから、それを製造、販売する被告の行為は、いずれも原告の有する本件第二特許権を侵害する。

8  損害等

(一) 原告ユーエスエクスについて

(1) 被告が、本件第二特許権の出願公告の日より後である昭和五三年四月七日から昭和六三年四月六日までの一〇年間に製造、販売した被告各装置の販売高は、被告装置(一)について四三億一二〇〇万円、被告装置(二)について一五億六八〇〇万円、被告装置(三)について六億円をそれぞれ下回らず、合計金六四億八〇〇〇万円を下回らない。また、被告が、本件第一特許権の出願公告の日である昭和五八年九月九日から昭和六三年四月六日までの間に製造、販売した被告プレートの販売高は合計金一一二億一四〇〇万円を下らない。したがって、被告が右各期間中に被告各装置及び被告プレートの製造、販売によって得た販売高合計は金一七六億九四〇〇万円を下回らない。

(2) 本件各特許権の特許権者である原告ユーエスエクスが本件各特許権の実施に対して通常受けるべき金銭の額(実施料相当額)は、各目録記載の製品毎ではなく、全体の販売高を基礎として算出されるべきものであり、累計販売高一〇億円までの分に対して一〇パーセント、一〇億円を超え二〇億円までの分に対して七・五パーセント、二〇億円を超える分に対して五パーセントに相当する金額であるから、被告の得た右販売高合計に対する実施料相当額は金九億五九七〇万円を下回らない(なお、各製品毎の損害額の内訳は、右実施料相当額を各製品の販売高に応じて按分した額である。)。

(3) 被告は、被告各装置及び被告プレートを製造、販売し得る何らの権限もなしにこれらを製造、販売することによって、右実施料相当額の利得を得、原告ユーエスエクスに同額の損失を与えたものであるから、原告ユーエスエクスに対し、右金員を不当利得として返還する義務を負う。

(二) 原告大倉

(1) 原告大倉は、製造に関する前記独占的通常実施権に基づき、日本において本件各特許権の対象である摺動ゲート閉鎖装置及びその組成物を独占的に製造し得るものであり、かつ、同装置及びその組成物の販売につき通常実施権を与えられた者がこれまで他にないことから、前記通常実施権に基づき日本において同装置及びその組成物を販売し得る唯一の存在であるところ、被告は被告各装置及び被告プレートを製造、販売することにより、故意又は過失により、原告大倉の右独占的通常実施権及び右通常実施権を侵害し、これによって原告大倉に得べかりし利益相当額の損害を与えた。

(2) 被告が昭和六〇年四月七日から昭和六三年四月六日までの三年間に製造、販売した被告各装置の販売高は、被告装置(一)について一二億九三六〇万円、被告装置(二)について四億七〇四〇万円、被告装置(三)について一億八〇〇〇万円をそれぞれ下回らず、合計金一九億四四〇〇万円を下回らない。また、右期間の被告プレートの販売高は金七四億七六〇〇万円を下回らない。右製造、販売について原告大倉が被った得べかりし利益相当額の損害は、少なく見積もってもそれぞれの製品について、右各販売高の七パーセントを下回らない金額となるから、合計で六億五九四〇万円となり、被告は、原告大倉に対し、右金員を損害賠償として支払う義務を負う。

9  よって、原告ユーエスエクスは、不当利得返還請求権に基づいて、被告に対し、金九億五九七〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和六三年一〇月二八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを、原告大倉は、不法行為による損害賠償請求権に基づいて、被告に対し、金六億五九四〇万及びこれに対する右同期間中右同割合による遅延損害金の支払いを、それぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1(一)のうち、原告ユーエスエクスが本件第一特許権、本件第二特許権について権利者として登録されていたことは認め、その余は知らない。同(二)は知らない。

2  請求原因2は認める。

3  請求原因3は認める。但し、同3(二)の分説された構成要件〈6〉、〈8〉ないし〈10〉に相当する部分の補正は、本件口頭弁論終結時において施行の、平成六年法律第一一六号特許法六四条(以下「改正前特許法」という。)に違反するから、同法四二条によって、補正前の文言どおりに特許されたものとみなされる。

4  請求原因4(一)の記載は、本件各発明の背景的説明であり、同旨の説明が本件各発明の明細書中に存在することを認める。同(二)(ア)の記載は、従来技術の問題点に関する記述であり、同旨の内容が本件第一明細書中に存在することを認める。同(イ)の記載が本件第一明細書中にあることは認める。但し、本件第一発明は、従来のゲート部材をモルタルで固定する必要性自体を不要としたのではなく、ゲート部材をキャリアの凹所に直接モルタルで固定することを不要としただけである。同(ウ)の記載が本件第一明細書にあることは認める。なお、右記載で「モルタル作業を必要としないので」と書かれているが、これは「交換現場では・・・モルタル作業を必要としない」とつながっているのであって、本件第一発明がそもそもモルタルの使用自体を不要としたものではない。同(三)の記載は、全体として本件第二発明の核心的特徴を曖昧にし、発明の実質的内容を拡大して特徴づけているので否認する。

5  請求原因5のうち、別紙物件目録(一)ないし(三)の図面及びAないしKは認める。同目録L項のうち、「右Kのような手段により」、「面圧の加わった状態となる」の部分は認めるが、その余の記述は、次のような点で誤りを含み、また不明瞭であるから否認する。

被告各装置では、開閉金枠を閉じたときに、上下プレートは完全に接触するか、少なくとも部分的に当接するかのいずれかである。したがって、L項の「開閉金枠を閉じた状態では間隔が開いているか或は」という部分は否認する。単に「部分的に当接していた上下プレートの摺動面」というように限定するのも正しくない。

また、L項には、「右Kのような手段により、軸孔10中でのピン〈1〉、〈2〉、〈3〉の位置は軸孔の長手方向に移動し、・・・上下プレートの摺動面が互いに密着し」という曖昧かつ誤った記述がなされている。

第一に、原告は、右L項の意味について、バネが収縮する前又は収縮に伴って、ピンの位置が移動することを示すと主張するが、上下プレートが収縮に伴って密着しピンの位置が移動するということはなく、被告各装置において上下プレートが密着するのは「バネが収縮する前」の段階である。

第二に、L項の「軸孔10中でのピン〈1〉、〈2〉、〈3〉の位置は軸孔の長手方向に移動し」という記述は、被告各装置にはあてはまらない。ピン〈1〉、〈2〉、〈3〉は固定金枠の丸孔〈9〉にも通されているから、ピンの位置は丸孔によって固定されていて不動である。なお、開閉金枠が微動するときに、開閉金枠の軸孔が固定されたピンの位置に対し動くが、L項の単に「長手方向に移動する」という表現は曖昧であり、設計された機構上所定の方向に移動するのか、そうでないのかを明らかにしておくべきである。被告各装置では、いずれか一方に「長手方向に移動」するのではなく、上下プレートの当接の状況によって固定金枠方向に動くことも、逆の方向に動くこともある。更に、開閉金枠の閉じられ具合によっては開閉金枠が微動しないこともある。したがって、以上の点においても、右記述は右のいずれを意味するのか不明瞭である。

第三に、被告各装置において、ピンの存在は何ら特別な意味をもつものではない、ピン〈1〉、〈2〉の機能は開閉金枠を回動させるための軸であり、またピン〈3〉の機能は開閉金枠を閉じたときに再び開いてしまわないように一時的に開閉金枠を保持することだけである。バネ押しに力を加える段階でピンに力が加わることはなく、したがって、ピンを抜き去っても何ら差支えがない。

別紙物件目録(四)は認める。

6  請求原因6(一)は認める。同(二)ないし(六)は争う。

7  請求原因7(一)ないし(四)及び(九)は認める。同(五)ないし(八)、(一〇)、(一一)は争う。被告各装置のブラケットが、開閉金枠の両外側に二つづつ間隔を置いて存在することは、本件第二発明の「前記構造体の一方の側に間隔をおいて」存在するに該当しない。

8  請求原因8は否認する。

9  請求原因9は争う。

三  被告の主張

1  本件第一発明についての非侵害の主張

(一) 本件第一発明の特徴

(1) 解決すべき技術課題

本件第一発明の技術分野における従来技術は、摺動ゲート閉鎖機構のキャリアにゲート部材を取り付けるためにモルタルで固定していた。モルタルの使用は、〈1〉ゲート部材が高温で割れるため、割れの拡大による溶融金属の漏れを防止する、〈2〉ゲート部材に適正な面圧を付与するためには、ゲート部材の厚さが常に一定していなければならないが、耐火物からなるゲート部材を正確に一定寸法に成形することは極めて困難であるため、成形誤差をモルタルで調整する、〈3〉モルタルが耐火物製のゲート部材と金属製のキャリアの熱膨張の差を吸収するクッション作用をする、という理由で実際上不可欠であった(本件第一明細書三欄一行ないし二五行)。しかし、現場でモルタルを用いてゲート部材を交換することには、時間がかかる等の問題点があり、本件第一発明の目的、課題は、キャリアに取り付けるゲート部材の交換作業を短時間で極めて簡単にできるように改良することにあった(本件第一明細書四欄一二行ないし一六行)。

(2) 解決手段

本件第一発明が、右の目的のために採用した技術は、摺動ゲート部材を金属ケースに収容し、金属ケース付き摺動部材をキャリアの凹所に嵌め込むという、カセット方式である。

摺動ゲート部材は、別の専用工場で金属ケースにモルタルで固定され、収容される。金属ケースは、金属の性質上寸法精度よく製作できるので、キャリアの凹所にぴったりと嵌め込むことができる。交換現場では、キャリアの凹所に金属ケース付き摺動ゲート部材を単に嵌め込み、取り出すだけの作業で容易に着脱できる。

(3) 解決手段を具現する発明の構成

本件第一発明の特許請求の範囲〈5〉、〈6〉の構成は、摺動ゲート部材を金属ケースに収容し、金属ケース付き摺動部材をキャリアの凹所にぴったり嵌め込むという、本件発明のカセット方式を表現したものである。

すなわち、構成〈5〉の「摺動ゲート部材をその摺動面を除いた表面の大部分を前記キャリアとは別体の金属包囲体で包囲し」とは、摺動ゲート部材を金属ケースに収容することであり、構成〈6〉の「かくして金属で包囲された摺動ゲート部材が前記キャリアの凹所の中に該凹所の壁と金属対金属接触する状態で装着され」とは、キャリアの凹所の壁と金属ケースの側部が接触する状態に装着すること、すなわち、キャリアの凹所に隙間なく嵌まり込む寸法に成形された金属ケースを当該凹所に嵌め込んで装着することを表わしている。更に、構成〈6〉の「前記フレームが開放位置に揺動されるとき、凹所に対し容易に着脱できる」とは、フレームを開けば、金属ケースをカセット取替えと同じように簡単にキャリアの凹所に着脱して取り替えることができるという意味である。

(二) 被告各装置の特徴

(1) 解決すべき技術課題

被告各装置の構成で意を用いたのは、いかにしてプレートレンガを溶鋼流出作動中の高温下で、中央孔からの圧力による亀裂に耐え、長持ちさせ、使用回数を増やすかという点であった。

この課題への取組みは、被告が、原告とほぼ同時期、むしろ原告に先行する形で独自に開始している。

すなわち、被告と共同開発を行っていた新日本製鉄株式会社が昭和四六年三月二三日出願した実用新案登録願昭四六-二〇二四五号「摺動ノズルを有する鋳込装置」(乙第四号証の一、二)では、モルタルを使用せず、プレートレンガと金枠底面との間にアスベストやセラミックファイバーの耐火性シートを介在させる構成を示している。そして、プレートレンガの金枠に対する保持は、金枠とプレートレンガの間隙に小さいくさび状金物を打ち込んでなされた。これは、新規なプレートレンガの固定方式である。

被告は、その後、プレートレンガを摺動金枠に固定する方式として、くさび状金物を打ち込む方式を更に改良し、金属ブロックを介してボルトでプレートレンガを締付け固定する現在の方式を開発した(昭和四八年一月二六日実用新案登録出願。乙第五号証)。

また、プレートレンガの構造についても改良がなされ、昭和四八年二月、プレートレンガにスチールフープを巻く方式が実際に採用され、次いで、プレートレンガにスチールフープを巻くとともに、裏面にセラミックシート、薄鉄板を貼る現在の方式が開発された(昭和四九年四月三日実用新案登録出願。乙第六号証)。

(2) 解決手段

プレートレンガの強化という観点から、被告装置が採用した手段は、〈1〉フープによるプレートレンガの締付け、〈2〉プレートレンガを金枠に取り付けるにあたり、金枠に取り付けた金属ブロックがくさびの役をするように、中央に向かってボルトで締め付ける形で金枠の空所に保持する、という二段の締付け予加圧である。

ここでは、カセット式嵌込みという思想は入り込む余地はない。

(3) 解決手段を具現する被告装置の構成

(ア) プレートレンガの構造については、別紙物件目録(一)ないし(三)第7図ないし第9図に示されているように、側面にプレートレンガの厚みより約一〇ミリメートル狭い幅のスチールフープが予熱してまかれ、これによってプレートレンガが締め付けられている。

スチールフープの主な機能は、プレートレンガに対し、側面から中心方向に圧縮応力を加えておくことによって割れを防ぎ、また、割れた場合でも割れの拡大を防ぐことにある。

プレートレンガの摺動面の反対側の面には、レンガの表面を完全に覆うよりやや小さいセラミックシートと厚さ〇・二五八ミリメートルの薄鉄板が貼り付けられている。

セラミックシートの主な機能は、摺動金枠の変形が生じた場合でも、プレートレンガにかかる曲げ応力を緩和し、割れを防ぐとともに、その断熱効果によって、金枠への熱伝導によりプレートレンガが部分的に冷却されてプレートレンガ内に大きな温度差が生じることを防ぎ、温度差で生じる熱歪み応力によるプレートレンガの割れを防ぐことにある。また、薄鉄板の主な機能は、セラミック板の金枠への焼付きを防止することにあり、鉄板はセラミック板の弾力性を損わないように薄くしてある。

(イ) プレートレンガの摺動金枠への固定取付手段に関しては、下部プレートは、別紙物件目録(一)ないし(三)第6図に示されているように、摺動金枠に対し、金属ブロックを介してレンガ押さえボルトで締め付けて固定される。ボルト締めは、金属ブロックをプレートと金枠との間にくさびを打ち込む役目をする。摺動金枠の枠部とプレートレンガのスチールフープは接触しておらず、両者の間には間隙が設けられている。

被告各装置の方式では、プレートレンガがレンガ押えボルトによって適正なトルクで締め付けられることにより、プレートレンガの割れの防止及び割れの拡大防止の効果がある。また、プレートレンガは、製造上寸法のばらつきが生じやすいが、被告装置の方式では、プレートレンガをボルトで締め付けているので、ボルトによる寸法のばらつきの調整が可能であり、更に、プレートレンガ側面と金枠との間に間隙があるので、プレートレンガの寸法精度のばらつきが問題にならない。

(三) 本件第一発明と被告各装置との比較

(1) 技術課題、解決手段の相違による発明思想の相違

(ア) 本件第一発明は、摺動ゲート部材を金属ケースの中にモルタルで固定収容し、金属ケース付きゲート部材をキャリアの凹所に嵌め込むカセット方式によって、ゲート部材の着脱取替えを容易にした。

これに対し、被告各装置の技術は、スチールフープ、セラミックシート、薄鉄板の三点セットの開発により、プレートレンガ自体の高温による割れを防止し、また割れの拡大を防止してプレートレンガの寿命を延ばすことを目的としている。また、プレートレンガを摺動金枠にボルト締めによって固定する方式は、くさび状金物を打ち込む方式から発展した、全く新規な固定方式である。

被告各装置は、この両方の新技術の組合わせによって、プレートレンガの割れ、割れ拡大の防止を図っている。特に、プレートレンガは、その周囲をスチールフープの焼きばめなどの手段によって締め付けられ、更に、摺動金枠中に固定するときに、レンガ押えボルトによって締め付けられ、二重の締め付けによって、プレートレンガの割れ、割れ拡大防止が図られている。

このような、被告各装置のプレートレンガに対する二重の締付け方式は、本件第一発明の金属ケースによる嵌め込みカセット方式とは全く技術思想を異にするものである。

(イ) 本件第一発明では、製鉄工場現場での着脱にはモルタルを使用しないだけで、これが全く不要というわけではなく、摺動ゲート部材を金属ケースの中でモルタルにより固定し、寸法精度の調整をする必要がある。これに対し、被告装置は、モルタルの使用を考慮する余地がなく、むしろ使用することは、フープによる締付け、取付けの妨げとなるものである。

(ウ) 被告各装置では、プレートレンガの着脱の容易さよりも、プレートレンガの強化、割れ防止を優先しており、プレートレンガの摺動金枠への着脱には、ボルトによる締め付け、解除を必要とするため、本件第一発明のカセット嵌め込み方式による着脱の容易性は図られていない。

(2) 構成上の相違点

(ア) 金属包囲体について

(a) 本件第一発明の金属包囲体は、その発明思想からも明らかなとおり、摺動ゲートをその中に収容して、キャリアの凹所に簡単にカセット式に着脱できる「金属ケース」を意味する。

〈1〉 本件第一明細書において、「金属包囲体70」が図面の説明では「70……金属ケース」と記述されている。

審査経過においても、金属ケースという言葉は、しばしば使用されている(乙第一一号証、乙第一二号証、乙第一四号証)。

〈2〉 「凹所の壁と金属対金属接触する状態で装着され」ることを可能にするためには、この金属包囲体の外面は、摺動ゲートの凹所の内壁(側壁)に接して嵌合できるような正確な寸法、形状の精度を要求される(本件第一明細書四欄一七行ないし三二行参照)。

〈3〉 金属包囲体は、「摺動ゲート部材をその摺動面を除いた表面の大部分を……包囲」したものでなければならず、収容した摺動ゲート部材を金属包囲体内壁との間のギャップはモルタルで埋められるようなものでなければならない(乙第一一号証。審判請求理由補充書一一頁六行ないし末行参照)。

(b) 被告各装置においては、

〈1〉 カセット式に、摺動金枠の凹所に着脱できるような「金属ケース」と呼べるものは、全く使用していない。

〈2〉 プレートレンガにスチールフープ、セラミックシート及び薄鉄板を装着したものは、摺動金枠の凹所と「金属対金属接触」を可能にし、これによってカセット式着脱を可能にするような、寸法、形状になっていないことは、一見して明らかである。

〈3〉 プレートレンガとスチールフープとの間には、ギャップも生じる余地はなく、モルタルを埋めることはできない。プレートレンガを収容し、その摺動面を除く大部分を包み込むような「金属包囲体」にあたるものはない。

〈4〉 被告各装置のスチールフープは、プレートレンガの割れを防止するために、焼きばめ(フープを予め加熱して膨張させた状態でプレートレンガに巻き付け、冷えてフープが収縮したときにプレートレンガに大きな圧縮応力がかかるようにすること)などの手段で、プレートレンガの外周から中心へ向けて圧縮応力をかけている。このようなスチールフープの機能は、単に摺動ゲート部材を包むだけの金属包囲体(金属ケース)とは機能的に全く異なるものである。

〈5〉 被告各装置のスチールフープ、薄鉄板は、セラミックシートとともにプレートレンガの耐久性を向上させる複合的な構成であり、また、スチールフープはプレートレンガの側面の中央に巻き付けられており、プレートレンガの側面の上側と下側ではプレートレンガが露出しているから、スチールフープと薄鉄板は、「摺動面を除いた表面の大部分」を覆ってはおらず、金属ケースではない。

(イ) 「キャリアの凹所の壁と金属対金属接触する状態で装着」について

(a) 本件第一発明の「金属対金属接触」とは、キャリアの凹所の壁と金属包囲体の側部との接触状態のことである。そして、キャリアの凹所に隙間なく嵌まり込む寸法、形状に成形された金属包囲体を当該凹所に嵌め込んで装着することによって、「金属包囲体」は、キャリアの「凹所の壁と金属対金属接触する状態で装着され」るのである。

(b) 被告各装置は、

〈1〉 摺動金枠へのプレートレンガの取付けに関しても、金枠の凹所にぴったり嵌め込む、カセット着脱方式ではなく、金属ブロックを介して、レンガ押えボルトで周囲から中央へ向け締め付け、凹所の空間に保持する方式である。

〈2〉 プレートレンガと摺動金枠との間には間隙が設けられているから、プレートレンガが「凹所の壁と金属対金属接触する状態で装着される」ことはない。

(c) 原告は、被告各装置において、下部プレートのスチールシート(薄鉄板)が、凹所の底面と金属対金属接触し、また、スチールフープが金属性ブロックの内側面と金属対金属接触する状態で装着されると主張する。

〈1〉 しかし、凹所の底面は、本件第一発明の構成要件にいう「凹所の壁」ではない。このことは、実施例では現に凹所の底面は金属包囲体と接触していないことから明らかである。

本件第一発明の明細書に開示された装置では、ゲート部材12を収容した金属ケース70がキャリア14の凹所に装着されたときに、金属ケースの底部は負荷パッドによって支えられる構造になっている(第5図)。そして、頂板とゲート部材との間に面圧をかけるためにフレーム全体を容器方向へ動かすと、金属ケースはキャリアの凹所の中を側壁に沿って摺動するが、凹所の底には負荷パッドがあるため、金属ケースの底はキャリアの凹所の底とは接触しない。

もともと、現場でのモルタルの埋込みの必要性を解消するため、金属包囲体の寸法精度等が問題となるのは、キャリア凹所の壁との関係であって、底面においては、多少のギャップがあろうと、嵌め込みに不都合はないのである。

〈2〉 金属ブロックの内側面は、キャリアの凹所の壁とは異なる。被告各装置においてキャリアに対応するのは、摺動金枠3である。したがって、キャリアの凹所とは、摺動金枠の枠部19によって囲まれている部分であり、凹所の壁に対応するのは、摺動金枠の枠部の側壁23である。

本件第一発明では、キャリアの凹所の壁が金属包囲体と接触するのに対し、被告各装置における金属ブロックは、プレートレンガを摺動金枠の枠部の側壁23(すなわちキャリアの凹所の壁)と接触しないように、間隙を設けて保持しているのである。

〈3〉 本件第一発明は、金属ケース付き摺動ゲート部材をキャリアの凹所に嵌め込むだけのカセット方式であるから、固定具で固定する必要がないことをその特徴としている。

本件第一発明の出願人は、審判請求理由補充書(乙第一一号証)の中で、本件第一発明の利点の一つとして、次のように述べている。「金属ケースをキャリアの凹所に適合する所定寸法に正確に製作することは容易であるのでキャリアの凹所に対し金属ケース付摺動ゲートを嵌め込むだけで固定具で固定する必要はない。」(同号証一二頁末尾から二行ないし一三頁三行)。

このことからも、被告各装置のようにプレートレンガをボルト締めによって摺動金枠に固定する方式は、本件第一発明と異なることは明らかであり、ボルト締めの手段である金属ブロックが本件第一発明のキャリアの凹所の壁と評価されることはない。

(ウ) 「凹所に対し容易に着脱できる」について

(a) 本件第一発明は、カセット式の摺動ゲート部材をキャリアの凹所に嵌め込み、取り出すだけであるから、その着脱は極めて容易である。本件第一発明の「容易に着脱」とは、右のようなカセット式着脱の容易さを表現したものであり、着脱の容易なものは何でも含むというものではない。

(b) 原告は、被告各装置のスチールフープや薄鉄板により着脱が容易になるかのごとく述べているが、これらにそのような機能がないことは明白である。

また、原告は、スティールシートのためにセラミックがキャリアの凹所の底面に焼き付かないから容易に着脱できるとし、あたかも、本件第一発明において、金属包囲体にゲート部材を収容したことによりキャリアの凹所との焼付きを解消し、着脱を容易にしたかのごとき主張をしている。しかし、このようなことは、本件第一発明の課題として、何ら問題となっていない。

(3) 作用効果の相違

(ア) の本件第一発明は、「摺動ゲート部材を金属包囲体で包囲することに発明思想が存在するものであり、これにより摺動ゲート部材の交換作業の能率を従来に比べて格段と向上することができ」(本件第一明細書一一欄九行ないし一二行)とその効果を要約している。その意味するところは、摺動ゲートを金属ケースに収容してキャリアの凹所にカセット式に着脱するので、取替えが簡単ということである。

これに対し、被告各装置のプレートレンガの取替えは、このようなカセット式嵌め込みによる着脱方式ではなく、簡単な嵌め込みはできない。その意味で、取替えの便利という点では、本件第一発明のような簡便さはない。

(イ) 本件第一発明では、製鉄所の現場での摺動ゲートの取替えを簡便にするため、現場でのモルタルによる固定をなくした反面、摺動ゲートを金属ケースに収容するときのモルタル固定を、摺動部材製造過程で予め行う必要がある。つまり、製鉄所現場での摺動ゲート取替時のモルタル使用を、摺動部材製造工場の金属ケース内モルタル固定作業に振り替えたものである。

本件第一明細書には、「摺動ゲート部材の成形において寸法精度の高いものが得られる場合にはモルタルを介在させることなく摺動ゲート部材を金属包囲体で包囲しこれに直接固定するだけで本発明は所期の目的を達成できることは明らかであろう」(一一欄三行ないし八行)との記載があるが、これは発明思想と矛盾する。そのような寸法精度が得られるならば、金属包囲体は不要である。そして、金属ケースでは、モルタルのような割れ拡大防止、クッションの役割は果たせない。

一方、被告各装置では、交換の現場でも製造工場でも、モルタルによる固定は不要であり、むしろモルタルは使えないのである。

(ウ) 本件第一発明の金属包囲体は、カセット式のケースであり、ぴったりキャリアの凹所に嵌め込まなければならない(金属対金属接触)ので、精度の高い寸法、形状が要求される。

これに対し、被告各装置の場合、プレートレンガの取付けは、摺動金枠の凹所の空間に金属ブロックで支えて保持し、金属ブロックと凹所の壁との間隔はボルトの締付けで調整できるので、プレートレンガもこれに巻き付けるスチールフープも、おおよその寸法、形状で充分であり、本件第一発明の金属包囲体のような精度を要求されない。

(エ) 本件第一発明の摺動ゲート部材と金属包囲体の構成及びそのキャリア凹所への取付けについては、取替作業の便が優先され、耐火物の強度の補強、つまりは使用回数の増加という経済面はほとんど考慮されていない。金属包囲体と摺動ゲート部材との間にモルタルを埋めることで、割れの拡大を防止する作用は若干期待できるが、いずれにせよ割れ防止策は無きに等しい。

これに対し、被告各装置では、二重に予加圧を加え、使用回数の増加を図っているので、何回も繰り返し使うことができ、使用者からみた経済効果は大きい。

被告各装置のプレートレンガは一〇回くらい使用できるとしても、本件第一発明によった場合、せいぜい二、三回、場合によっては一回限りしか使用できないものと思われる。原告の指摘する甲第一三号証のⅡ-37頁の表は、一九七六年から一九七七年にかけての実績で、ここに出てくる被告のプレートは、スチールフープ巻付けもボルト締めもない、本件の対象品とは別のものである。被告の二段締めプレートの使用回数はこれよりもはるかに改善されている。

(四) 間接侵害の主張について

上部プレート及び下部プレートとして用いられているから、本件第一発明の技術的範囲に属する被告装置にのみ使用されるものとはいえない。

(2) YPH型中のヒンジレス型装置における使用

(ア) 被告の製造、販売するスライディング・ノズル装置のYPH型中には開閉金枠と固定金枠とを結合するピンや軸孔のような手段が全く存在しないヒンジレス型と呼ばれる装置があり、被告の製造、販売するスライディング・ノズル装置全体の数パーセントを占めている。

ヒンジレス型装置においてプレートレンガを交換するときは、固定金枠と摺動金枠とを一体として容器の取付板から取り外し、クレーンで容器から離れた耐火物交換台に運び、耐火物交換台上で圧着ラムを用いて面圧フックを外して面圧を解除する。これによって、固定金枠と開閉金枠とは拘束のない状態になるので、さらに開閉金枠(及び摺動金枠)をクレーンによって固定金枠から取り外す。上部プレートは固定金枠から取り外される。開閉金枠は、耐火物交換台の上で反転プレームを用いて一八〇度反転させ、下部プレートが摺動金枠から取り外される。スライディング・ノズル装置を容器に取り付ける手順はこれと逆である。この装置における上下部プレートは、いずれも周囲をスチールフープで巻き付けられ、また裏面にはセラミックシート及び薄鉄板が貼ってあり、別紙物件目録(四)のプレートレンガと同じ構造である。

(イ) 本件第一発明では、特許請求の範囲に「前記フレームは前記容器に対し揺動可能に取付けられて前記容器との結合が外されたとき前記耐火物性の摺動ゲート部材を露出する開放位置に揺動できるようになっており」と記載されていて、摺動ゲート部材の交換のときはフレームが開放位置に揺動される。

これに対し、ヒンジレス型装置は、開閉金枠と固定金枠とがピンによりヒンジに固定されておらず、前記のとおり、プレートレンガの交換のときは、固定金枠と開閉金枠とを一体として容器から取り外し、さらに開閉金枠は固定金枠から分離される。したがって、ヒンジレス型装置は、本件第一発明の摺動ゲート閉鎖装置と基本的な構造が異なる。

(ウ) 別紙物件目録(四)のプレートレンガは、右のとおり、本件第一発明の技術的範囲に属さないヒンジレス型装置においても、上部プレート及び下部プレートとして用いられているから、本件第一発明の技術的範囲に属する被告各装置にのみ使用されるものとはいえない。

(3) 本件第一発明の構成要件には、摺動ゲート部材(下部プレートレンガに相当)のみしか規定されていない。被告の下部プレートは、本件第一発明の構成要件に含まれていない頂板(上部プレートレンガ)と同じ構成である。すなわち、別紙物件目録(四)のプレートレンガは下部プレートにも上部プレートにも使用される。

したがって、仮に被告装置が本件第一特許権を侵害するとしても、別紙物件目録(四)のプレートレンガが本件第一発明の構成要件要素である下部プレートとして使用されるか、構成要件要素でない上部プレートとして使用されるかは、ほぼ五分五分の割合であるから、被告各装置「のみ」に使用されるとはいえない。

2  本件第二発明についての非侵害の主張

(一) 本件第二発明の特徴

(1) 解決しようとする技術課題

ゲート・プレートを静止頂板に向かって閉じるとき、両者の耐火物の最初の接点での局部的衝突で、そこに力が集中すると破損のおそれがあることを懸念し、これをどうして避けるかというのが課題である。

(2) 解決手段

ゲート・プレートの閉鎖運動を、水平に至るまでの揺動とその後の垂直運動との二段階とし、第一段階の揺動の終点で、一旦静止頂板と間隔を置いてほぼ平行に向かい合ったところで保持し、次に、この平行を維持したまま垂直運動で、両者を(全面にわたり)均一な接触圧をもって密着させる手段によって解決した。

(3) 解決手段を具現させるための構成

右解決手段の具体的構成は、〈1〉長孔を利用して、ゲート・プレートの揺動と垂直運動の二段階運動を可能にする機構と、〈2〉ゲート・プレートが静止頂板と間隔を置いて平行に向き合う位置で一旦保持するラッチ装置、である。

(ア) 長孔の利用は、次のように行われる。

第一段の揺動中には、長孔の上端を保持ピンに係合させて、水平に達したときでも長孔の長手方向にある程度の間隔が保持される。

本件第二明細書には、「長孔の上端を保持ピンに係合させて回動する」とか「揺動」という表現が用いられているが、これは、保持ピンに長孔を通して重力で垂下している主フレームが、振り子のような運動で回動する状態を表現しているものと解される。

ラッチ装置は、ゲート・プレートが揺動して、水平位置で静止頂板と向き合う位置まできたところで、これを受け止めて、一旦この位置に保持するものである。

(イ) 次に、垂直方向にゲート・プレートを移動させるときは、主フレームを右の水平方向で一旦ラッチ装置で保持された状態で、「ピン28を前記ブラケット35の長孔、35に摺動させながら、前記ゲート・プレート12を前記静止頂板9に向って動か」す(特許請求の範囲)ことで、垂直移動を可能にしている。

(二) 被告各装置の特徴

(1) 本件第二発明に対応する解決すべき技術課題の不存在

被告各装置では、特にゲートプレート閉鎖時の耐火物の局部的衝突を回避するための考慮はしていない。

(2) 本件第二発明に対応する解決手段の不存在

被告は材料メーカーとして、ゲートプレートの開閉時の耐火物の局部的衝突程度では、耐火物は破損しない強度を確保しているから、閉鎖方式は、全く通常の回動式扉の閉じ方であって、特段の工夫はしていない。

耐火物をレンガと呼ぶこともあるが、これは通常の建築レンガや陶器などのようにもろいものではなく、かなりの強度を有するものである。被告各装置で開閉金枠を閉じるときは、扉を閉めるように回動して、両プレートは必ず衝突するまで一挙に閉じる。この場合、一つの閉じる動作で全面密着になるにせよ、一部隙間が残るにせよ、回動の帰結として、衝突は局部的衝突から始まる。

プレートレンガは、摺動金枠の面より少なくとも五ミリメートル以上は突出しているから、金枠によってプレートレンガの間に間隔が生じることもなく、回動閉鎖のための動作は、必ず両プレートが直接衝突するまで続けられる。したがって、間隔を置いて向かい合うところに保持されるということはない。

揺動と垂直運動という二段の運動もない。

(3) 構成

被告各装置の開閉手段は、全く何の仕掛けもない普通の扉の閉め方である。被告各装置のプレートを収容した開閉金枠の開閉運動は、容器Vを横転させ、SN装置の摺動方向が垂直になるような位置をとるから、部屋の扉を開閉するように常に水平方向の回動運動であり、垂直面から水平面に移動する揺動ではない。

その後、面圧を加える処理過程で、部分的にギャップが埋まり密着することがあっても、「一様の圧力で圧接する」ことでもなく、「垂直」運動でもない。

(ア) 軸孔は本件第二発明の長孔の役割をしない。

(a) 被告各装置の開閉金枠の水平方向回転中は、軸側の軸孔とピンとの関係は、ピンが軸孔の特定位置に止る必然性も、特段の機構もない。

本件第二発明は、「主フレームは長孔、35’の上端を保持ピン28に係合させて回動する」ことによって、「静止頂板9に対しゲート・プレート12は主フレーム13の枢着点側においてもある程度の間隔を保って揺動」する(甲第四号証訂一七頁二四行以下)。

被告各装置では、回動中軸孔の一端を上端、他端を下端と呼ぶ関係にはないし、ピンが軸孔の一端に止る必然性も、回転軸側で上部プレート(作業中は横にある。)に対し、間隔を保って回動するという機構にもなっていない。

(b) 本件第二発明の長孔は、主フレームの揺動中は、孔の上端に保持ピンがあり、次の垂直移動中には長孔の中を保持ピンが相対的に摺動することにより、摺動可能の距離の範囲で移動できる。

被告各装置の軸孔は、第二段の作用もしない。面圧をかけるためセットしたとき、両軸孔の中で、ピンは軸のどの位置にあるとは決まっていない。

しかも、開閉金枠は垂直面のままであり、部分的間隔を得るために動いたとしても水平方向移動であり、「垂直」方向移動ではないし、ピンの位置は終始不定であるから、孔の中で一方から他方に向かって摺動することにならず、その移動により開閉金枠の移動を許容するという関係も成立しない。

(イ) 被告各装置には、ラッチ装置に相当するような、開閉金枠を両プレートが間隔を置いて向き合った位置で保持する装置はない。

(三) 本件第二発明と被告各装置との相違

(1) 発明思想の相違

本件第二発明は、ゲート・プレートを閉じるとき、耐火物の局部的衝突による損傷を懸念し、プレートを収容する主フレームの閉鎖装置を揺動と垂直運動の二段階とし、揺動の終りでゲート・プレートが、静止頂板と間隔を置いてほぼ平行に向き合うように保持する。この二段の運動を可能にするように長孔が利用され、また、主フレームを右の位置に保持するため、ラッチ装置を使用する。

被告各装置では、閉鎖時の耐火物の局部的衝突による損傷を考慮した回避手段は用いていない。損傷は材料の強度で回避している。閉鎖手段は、全く通常の扉の開閉のような水平方向の回動という一動作で閉じる。被告各装置の軸孔10は、本件第二発明の長孔のような、二段階操作に利用するためのものではなく、通常の公知の用途の軸孔である。また、ラッチ装置に該当する機構もない。被告各装置は、本件第二発明の技術課題も顧慮しておらず、したがって、その解決手段も利用していない。

(2) 構成の相違点

(ア) 本件第二発明の構成要件〈5〉においては、「主フレーム構造体の一方の側に」取り付けられると規定しているのに対し、被告各装置では、別紙物件目録(一)ないし(三)の各第4図に示されているように、ブラケットは開閉金枠の両側にあるから、構成要件〈5〉を充足しない。

(イ) 構成要件〈6〉は、ブラケットには、「容器に取り付けたピンが嵌まり込む長孔が形成されている」旨規定する。そして、原告らは、被告各装置の固定ピン〈1〉、〈2〉が「容器に取り付けたピン」に、軸孔10が「長孔」に該当すると主張する。

しかし、本件第二発明にいう「ピン」と「長孔」は、単なるピンと長円形の孔のことではなく、本件第二発明における二段階操作を可能とするためのヒンジ結合を形成する「ピン」と「長孔」でなければならないところ、次に述べるとおり、被告各装置にはそのような「ピン」と「長孔」は存在しない。

(a) 本件第二発明において、主フレームのブラケットに「容器に取り付けたピンが嵌まり込む長孔が形成されている」ことの第一の意味は、容器に取り付けたピンに長孔の上端を係合させて主フレームを揺動させ、ゲート・プレートと静止頂板との間隔を保ちながら第一段階の揺動運動を行うことを可能にすることである。

これに対し、被告各装置の開閉金枠の開閉は、扉を回動するような一動作の水平運動であり、軸孔中のピンの位置は終始不定であって一定位置に止める機構はないから、第二発明の長孔とピンのような関係や長孔と揺動との関係は生じない。

(b) 本件第二発明の場合、第二段階の垂直運動においては、これに伴ってピンが長孔の中を摺動する。このことは、本件第二明細書に、「この作動により長孔35’の下端が保持ピン28に係合するまで主フレームが押し上げられ」(甲第四号証訂一七頁三五行、三六行)と記載されているところから明らかである。

これに対し、被告各装置では、ピンの軸孔中の位置は終始不定であり、ピンが軸孔中で長手方向に摺動することにより垂直運動を可能にしているものではない。被告各装置の軸孔が真円ではなく一方に長いのは、単に誤差を吸収するためのもので、既に公知の軸孔に使用されていたものである。

(c) 本件第二明細書の出願公告時の明細書における特許請求の範囲の記載においては、「容器に固定されたピン」とされており、公告後の補正でその意味は変わっていないはずであるから、「容器に取り付けたピン」とは「容器に固定されたピン」の意味であると解される。

これに対し、被告各装置のピン〈1〉、〈2〉は抜差し自在であって容器に固定されていないから、この点においても被告各装置は構成要件〈6〉を充足しない。

(ウ) 構成要件〈7〉には「長孔」の記載があるところ、右のとおり、被告装置には「長孔」が存在しないから、構成要件〈7〉も充足しない。

(エ) 構成要件〈8〉は、支承部材とラッチ装置について規定し、ラッチ装置を支承部材に係合させると、ゲート・プレートの上面が静止頂板の下面に対し、両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持される。

これに対し、被告各装置では、開閉金枠を閉じると上下のプレートは当接してしまい、上下プレートが間隔を置いて向き合う状態に保持されることはない。また、そのような状態を保持するためのラッチ装置と支承部材も存在しない。したがって、被告各装置は構成要件〈8〉を充足しない。この点を詳しく述べると次のとおりである。

(a) 原告は、バネ押しが支承部材に該当し、別紙物件目録(一)のトグル・リンクとトグル、別紙物件目録(二)のアーム、別紙物件目録(三)の圧着治具(以下、これら三つを総称して「トグル等」という。)がラッチ装置に該当すると主張する。

しかし、本件第二発明のラッチ装置と支承部材は、これらを係合して「ゲート・プレートの上面が静止頂板の下面に対し両者に間隔を置いて向き合う状態に保持」する機能を有するものであるが、被告装置のトグル等をバネ押しに係合するのは、開閉金枠を閉じた後の、既に局部的衝突に始まる耐火物間の当接が起こった後のことであり、支承部材とトグル等は上下プレートを間隔を置いた状態に保持することはできない。トグル等をバネ押しに係合する目的は、バネ押しに圧力を加えることにある。

なお、本件第二発明では、フレームの回動軸側に長孔を有するブラケットがあり、主フレームの他方の側には支承部材があり、これに係合するラッチ装置が容器に取り付けられているという組合わせであるのに対し、被告装置では、トグル等もバネ押しも軸孔もブラケットもいずれも両側にある。

(b) 原告は、トグル等をバネ押しに係合しても、バネを圧縮する前は開閉金枠が閉じられた状態と同じであり、別紙物件目録(一)ないし(三)のL項に記載のとおり、両プレートの摺動面は互いに間隔が開いているか又は部分的に当接しているにすぎないから、被告各装置は構成要件〈8〉を充足すると主張する。

しかし、右L項の記載のうち、開閉金枠が閉じられたときに、上下プレートの摺動面は互いに間隔が開いているという部分はそもそも事実に反している。

また、原告は、被告各装置では、上下プレートが完全に接触するといっても、実際には開閉金枠が微動するだけの非接触部分があるから構成要件〈8〉を充足するとも主張する。

しかし、被告各装置において開閉金枠を閉じたときに上下のプレート摺動面が当接することは、まさに本件第二発明が避けようとしたことであり、構成要件〈8〉はこれを避けるために当接する前にラッチ装置を支承部材を係合させて上下プレートを間隔を置いて向き合う状態に保持するのである。したがって、上下プレートが当接した後の状態を云々して構成要件〈8〉を満たすという原告の主張は、本件第二発明のそもそもの目的を忘れた主張である。

(c) 原告は、本件第二明細書の発明の詳細な説明中の、上下プレートが「軽く接触する状態か若干・・・間隔を置いた状態で保持される」という記述を引用して、被告装置が部分的に当接しているのは、「軽く接触する状態」にあたると主張する。

しかし、右の「軽く接触する状態」とは、本件第二発明のピンと長孔とを利用した揺動運動によって、主フレームを枢着点側においてもある程度の間隔を保って揺動させたうえで、ラッチ装置を支承部材に係合させた状態の説明であって、被告装置のように、単に開閉金枠を閉じて上下プレートが衝突した後の部分的当接は、右の「軽く接触する状態」ではない。

なお、この「軽く接触する状態」の記載は、公告後の補正で加えられたものであるが、本件第二発明の「局部的当接」を回避するという目的を無にするまでの拡大解釈の根拠とはなり得ないし、そこまで拡大するような変更であれば、許されない変更であって、特許法四二条によって無視されることになる。

(d) 構成要件〈8〉の「主フレーム構造体の他方の側に取り付けた支承部材」は、本件第二発明の出願公告時の公報の特許請求の範囲の記載によれば、「構造体の他方の側に固着した部材」であった。両者はその趣旨において同じはずであるから、構成要件〈8〉の右記載部分は、「主フレーム構造体の他方の側に固着した支承部材」の意味であると解される。仮にそうでなく、公告時の範囲を拡大している趣旨であれば、特許法四二条により、公告時の文言で解釈される。

原告が、被告各装置における「支承部材」であると主張するバネ押しは、開閉金枠の外側にあるバネ箱の中のバネの上に取り外し可能に、しかも、バネの収縮に従って移動できるように取り付けられているだけであり、開閉金枠に固着されていないから、その点でも構成要件〈8〉と異なる。

(オ)(a) 構成要件〈9〉は、その前段において、「主フレーム構造体がラッチ装置で保持されているとき」と規定するが、前記のとおり、被告各装置にはラッチ装置もなく、保持もしないからこれに該当しない。

(b) 構成要件〈9〉は、その後段において、「ピンをブラケットの長孔に摺動させながらゲート・プレートを静止頂板に向かって動かす」旨規定する。

これは、本件第二発明の二段階操作における第二段階の垂直運動を表現したものである。第二段階の垂直運動中、ピンは長孔の中を上端から下方へ摺動することを意味する。

被告各装置の軸孔は、右のような垂直運動を可能にするための摺動とは無関係であり、面圧をかけるためにセットした後でも、軸孔中のピンの位置は終始不定であり、右のような作用は全くない。

(c) 原告は、バネ押しを押圧することにより「長孔」である軸穴10の中でピン〈1〉、〈2〉の位置が移動し、下部プレートが上部プレートに押し付けられるから、構成要件〈9〉を充足する旨主張する。

構成要件〈9〉の「ゲート・プレートを静止頂板に向かって動かす」とは、ゲート・プレートと静止頂板とがラッチ装置によって間隔を置いて向き合う状態に保持されている状態から、ゲート・プレートを静止頂板に向かって動かすことであり、この移動に伴って長孔の上端にあったピンの位置はその長さだけ長孔と摺動して相対移動する。ゲート・プレートと静止頂板はこの第二段階の垂直運動によって初めて接するのである。また、「ピンを長孔に摺動させながら」という要件は、第二段階の垂直運動において、本件第二図面の第6図から第3図への移行のように、ピンが長孔の上端から下端に摺動するような動作を意味する。

これに対し、被告各装置では、開閉金枠を閉じたときに上下プレートは接触しているから、下部プレートを上部プレートに向かって動かすという動作は存在しない。バネ押しは、本来密着した両面間に面圧をかけるものである。したがって、被告各装置においては、面圧をかけるためにバネを収縮させるときに、軸孔のピンは動かない。また、上下プレートの部分的間隙のために、バネ押しにトグル等を取り付ける過程又はバネを押して収縮に至らないときに、軸孔10中のピン〈1〉〈2〉が微動することことがあっても、バネと軸孔の位置も不定、部分的間隔の生じ方も不定であるから、ピンと軸との相対移動方向及び移動の程度は全く予測できない。ピンを抜いても、バネによる面圧付与の作業は可能である。

(カ) 構成要件〈9〉は、「前記弾性押圧体の弾発力に抗して前記ゲート・プレートを前記静止頂板に密着せしめてこの密着状態を維持する装置が設けられている」であるが、本件第二発明の公告時の特許請求の範囲によれば、右部分に対応する記載内容は、「前記ばね装置の弾力に抗して前記ゲート・プレートを前記頂板に接近させて密着させる装置があり、ラッチを解除して前記構造体を開いた位置に揺動させると前記ゲート・プレートと前記頂板とに接近できるようになっている」である。すなわち、出願公告時の特許請求の範囲には、ばね装置の弾力に抗してゲート・プレートを頂板に接近させるという内容が含まれていたのに対し、公告後の補正によってその内容が除かれている。しかし、特許請求の範囲は、公告後の補正によって拡大することはないから、構成要件〈9〉は、弾性押圧体の弾発力に抗してゲート・プレートを静止頂板に接近させて密着せしめることを含んでいるものと解すべきである。

これに対し、被告各装置では、プレート間に面圧を付与するためにばね押しに圧力を加えても、上下のプレートが密着した後でなければ、ばね押しが収縮して弾発力を生じることはなく、ばねの収縮に抗して下部プレートが上部プレートに接近するように移動することはない。

したがって、被告各装置は構成要件〈9〉を充足しない。

(キ) 以上のとおり、被告各装置は、本件第二発明とその構成を異にし、被告各装置は本件第二発明の技術的範囲に属しない。

(3) 作用効果の相違

本件第二発明の構成によれば、ゲート・プレートを静止頂板に向かって閉じる際、一旦間隔を置いて向き合わせて停止し、次に均一な接触圧力を保って密着するので、静止頂板9とゲート・プレート12が点接触することはなく、いわば軟着陸をする。この閉鎖機構では、局部的衝突による損傷のおそれはなくなる。

被告各装置は、この点について、何らの防止策も講じていないので、水平方向の回動による閉鎖の際に、両耐火物の点接触に始まる局部的衝突を伴う当接が一般的に起こる。しかし、被告装置では、前記のとおり、この程度の衝突では破損しない材質が用いられているので、実際上の不都合はない。

第三  証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1のうち、原告ユーエスエクスが、本件第一特許権、本件第二特許権について権利者として登録されていたことは当事者間に争いがなく、右事実と成立に争いのない甲第一号証ないし甲第四号証によれば、原告が本件各特許権の存続期間中、本件各特許権を有していたものと認められる。弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第五号証によれば、請求原因1(二)の事実が認められる。

請求原因2(本件各特許権の特許請求の範囲の記載)、請求原因3(本件各発明の構成要件。但し、本件第二発明の構成要件〈6〉、〈8〉ないし〈10〉を除く。)、請求原因4(一)の記載が本件各発明の明細書中に、同(ニ)(ア)(イ)(ウ)の記載が本件第一発明の明細書中に存在すること、被告が別紙物件目録(一)ないし(四)の製品を製造、販売していたこと(但し、別紙物件目録(一)ないし(三)のL項のとおりの構成であることを除く。)は当事者間に争いがない。

二  被告製品(一)ないし(三)のL項について

1  別紙物件目録(一)ないし(三)のL項のうち、「右Kのような手段により」、「面圧の加わった状態となる」という部分は当事者間に争いがない。

2  まず、被告各装置の開閉金枠を閉じた状態で、上下プレート間に間隔が開いているか否かについて検討する。

成立に争いのない乙第二六号証、乙第二七号証、訴外会社製鉄所現場におけるYPH型SN装置及び被告会社SN検査場におけるYPH型SN装置を撮影したビデオテープであることに当事者間に争いのない検乙第一号証、被告会社SN検査場におけるYPN型SN装置を撮影したビデオテープであることに争いのない検乙第二号証によれば、次の事実が認められる。

(一)  被告において、顧客先の製鉄所現場で実際に使用されている被告装置(三)と被告が製造して顧客に納入する直前に被告装置(二)を、いずれも被告のSN装置検査場に運んで、開閉金枠を閉じた際の上下プレートの接触状況の確認を行なった。

その方法は、次の三方法で行われた。

第一、感圧紙(所定以上の力が加わると発色する性質を有する紙で、テストに用いられたのは、厚さ〇・一七ミリメートルで、五kg/cm2面以上の力によって赤の発色をする。)を上部プレートの上に貼り、通常作業をするのと同じように開閉金枠を閉じたときに感圧紙がどのように変化するかをみるテスト(以下「感圧紙テスト」という。)。

第二、上部プレートに白ペンキを塗って、通常作業をするのと同じように開閉金枠を閉じ、その後開閉金枠を開いて下部プレートに白ペンキがどのように付着するかをみるテスト(以下「ペンキテスト」という。)。

第三、開閉金枠を閉じた状態(単に閉じたのみで面圧付与の作業をする前)で被告装置(二)、(三)の下から上方に照明を当てて、カメラを被告装置(二)、(三)の上にセットして上下プレートレンガの間隙の様子をみるテスト(以下「照明テスト」という。)。

(二)(ア)  まず、感圧紙テストの結果であるが、取鍋を横転して開閉金枠を開き、作業員が上部プレートの底面よりやや面積の大きい長方形の感圧紙で上部プレートレンガの全体を覆って、感圧紙の四隅をテープで静止頂板に止め、その後、作業員が開閉金枠を手で閉じ、開く際には、開閉金枠が固定金枠に押し付けられることのないように、予め取り付けられていたロープを引っ張って開閉金枠を開けた。その結果は、被告装置(三)については、下部プレートの右縁中央下部に対応する上部プレートの左下縁(以下、「(ア)(イ)において上下左右の方向は、乙第二六号証写真35ないし38、乙第二七号証写真37ないし42にあらわれた状態をいう。)にあたる部分及び下部プレートの上縁部に対応する上部プレートの上部の一部分が赤く発色し、それ以外の大部分は発色していなかった。

被告装置(二)については、下部プレートに対応する上部プレートの下方約四分の三の部分の、感圧紙が右縁中央付近を除いたほぼ全体にわたって発色していた。

(イ)  次に、ペンキテストであるが、これは、同じく取鍋を横転して開閉金枠を開き、作業員が上部プレートに全体に白ペンキを数回塗り、ペンキが乾かないうちに、作業員が開閉金枠を手で閉じ、開く際には、開閉金枠が固定金枠に押し付けられることのないように、予め取り付けられていたロープを引っ張って開閉金枠を開けた。その結果は、被告装置(三)については、下部プレートの上部約四分の一の部分の全面及び上部プレートの左縁の下方に対応する下部プレートの右縁中央部分に白ペンキが付着していた。白ペンキの付着の程度は上部約四分の一の部分が付着が多く、右縁中央下部は付着が少なかった。

被告装置(二)については、二回のテストのうち一回目は、上部プレートに対応する下部プレートの上部約四分の三は中央部左端を除いてほぼ全面に、二回目は、上部プレートに対応する下部プレートの上部四分の三はほぼ全面に付着していた。

(ウ)  更に、照明テストでは、開閉金枠を作業員が手で閉じた後、照明を下から当てて、その光が開閉金枠の上部まで届くか否かを確認することにより、上部プレートと下部プレートとの接触状況を観察した。それによると、被告装置(三)については、二回のテストのうち一回目は、上下部プレートの接触面の上から見て左端の部分は光が通ったが、その余の部分では光は観察できなかった。二回目は、接触面の上から見て右半分は光が通っているが、左半分は光が通っていなかった。

被告装置(二)については、二回のテストのうち一回目は上下プレートの接触面のうち上から見て右端部分は光が通ったが、その余の部分では光は観察できなかった。二回目は接触面の上がら見て左側ほぼ半分は光が通っているが、右半分は光が通っていなかった。

(三)  以上の各テストの証拠力及びその結果について検討する。

(ア) まず、右三つのテストとも、開閉金枠を閉じた状態で上部プレートと下部プレートとが接触するか否かを調べるための方法として合理性を有するテストと考えられる。確かに、原告らが成立に争いのない甲第一八号証によって指摘するとおり、ペンキテストについては、ペンキの厚み自体がテストの結果に影響することは否定できないし、また、照明テストについては、光が通っていない部分については、必ずしもその部分が上下全体にわたって接触しているとは限らず、一部でも接触していれば、その部分な光が通らないものである。しかし、ペンキテストについては、ペンキの塗付はほぼ一様になされているにもかかわらず、テストの結果、ペンキの付着量には相当の差があり、これが接触の度合いの強弱を表しているから、少なくとも付着量の大きい部分はペンキがなくとも接触している部分と推認される。照明テストについては、右原告の指摘の点を考慮してテストの結果を評価すれば足りるものである。

そして、そのテストに使用された装置及び実験の方法についても格別不自然な点はなく、実験は、被告装置(二)、(三)の使用状況に基づいたものと認められる。被告装置(一)については、テストの対象となっていないが、成立に争いのない乙第二八号証によれば、被告装置(一)については、昭和四九年七月頃まで製造され、昭和五七年頃まで使用されていたが、現在稼働中のものは一基もないためテストできなかったものであり、また、右証拠及び別紙物件目録(一)と同(二)、(三)をと対比すると、被告装置(一)と被告装置(二)、(三)の上下プレートの接触状況は同様であると認められる。

(イ) そこで、具体的に検討するに、右(二)によれば、感圧紙テスト、ペンキテスト、照明テストのいずれの結果によっても、被告装置(三)の上部プレートと下部プレートは一部接触しているものと認められ、原告らが主張するように間隔が開いている場合があること、逆に被告が主張するように、上下プレートが完全に接触する場合があることは認められない。テストの内容及び方法からみて、右テスト結果は、被告装置(二)、(三)の一般的状況を反映しているものとみることができる。

このことと、右(ア)の事実によれば、被告各装置において、開閉金枠を閉じた状態では、上下プレートの摺動面は部分的に当接していたものと認めるのが相当である。

そして、弁論の全趣旨によれば、右のように部分的に当接していた上下プレートの摺動面が、K項のような手段により、互いに密着するものと認められる。

3  次に、軸孔10中のピン〈1〉、〈2〉、〈3〉の位置について検討する。

(一)  別紙物件目録(一)ないし(三)中のL項以外の部分、前記乙第二六号証、乙第二七号証によれば、次の事実が認められる。すなわち、ピン〈1〉、〈2〉、〈3〉はいずれも、開閉金枠と固定金枠とを連結するために用いられるものである。連結は、開閉金枠を閉じ、固定金枠のブラケットに設けられた丸孔9と開閉金枠に設けられた軸孔10の位置を合わせ、その両方の孔にピン〈1〉、〈2〉、〈3〉を通すことによって行なわれる。プレートレンガの交換時には、スライディングノズル装置の摺動方向が水平面に対して垂直になるような位置をとるため、丸孔、軸孔の通ずる方向も垂直となり、ピン〈1〉、〈2〉、〈3〉はいずれも、この垂直方向へ挿入される(以下、上下方向は別紙物件目録(一)ないし(三)の第4図、第5図に示された上下方向で表す。)。このうち、ピン〈1〉、〈2〉は、丸孔及び軸孔に、開閉金枠を開くときも閉じるときも常時通されており、これによって開閉金枠が回動可能となっている。ピン〈3〉は、ピン〈1〉、〈2〉が取り付けられたブラケットとは反対側にある他方のブラケット上下二か所に取り付けられる。開閉金枠を閉じたとき、開閉金枠の軸孔の設けられた部分は、固定金枠の上部のブラケットの丸孔の設けられた部分の下及び下部のブラケットの丸孔の設けられた部分の上にそれぞれ接し、その位置で、それぞれの軸孔と丸孔とが通ずる。これにより、上部のピン〈3〉が通る孔は、上部が丸孔、下部が軸孔となり、下部のピン〈3〉が通る孔は上部が軸孔、下部が丸孔となる。

ところで、軸孔は、長径が短径プラス九ミリメートル(タンディッシュ用小型装置では短径プラス三ないし六ミリメートル)であり、丸孔は真円である。軸孔は、その長手方向が上部プレートの下部プレートとの接触面の延長と垂直に交わる方向になっている。軸孔と丸孔の大きさの比は、別紙物件目録(一)ないし(三)の構造の説明からは明らかでないが、図面からみると、丸孔の直径は軸孔の短径とほぼ同じ大きさであり、かつピンの外径とは、挿入、抜き出しが可能な程度のクリアランスを有するものと認めちれる。

(二)  前記乙第二六号証、乙第二七号証、検乙第一号証、検乙第二号証によれば、開閉金枠に面圧をかける際に軸孔中のピンは、その相対的な位置が微動することが認められる。

この動きの様子は肉眼では必ずしも明確とはいいがたいが、前記認定のとおり、開閉金枠を単に閉じた状態では、上部プレートと下部プレートとは部分的に当接しているにすぎず、両者の間には隙間があること、開閉金枠の面圧を解除したとき、圧縮されていたバネ箱の中のバネが急に元に戻るので、その反動で開閉金枠全体が手前方向に動く現象が観察されていることをも合わせれば、開閉金枠を閉じて面圧をかける前と後とでは、上下部プレートの密着の程度が異なり、面圧をかけるに従って、下部プレートが上部プレートに密着していくものであることが認められる。

そして、右密着の際には、バネとバネ押しとを収容したバネ箱が開閉金枠と一体として成型されているところから、開閉金枠自体も、バネを介してバネ押しに加えられる力によって固定金枠に接近し、面圧を付与するものと考えられる。すなわち、固定金枠の底面、開閉金枠に取り付けられた摺動金枠の底面及び開閉金枠の底面はいずれも金属製であって変形することはなく、また、上部プレート及び下部プレート自体も硬質で変形するとは考えられないから、結局のところ、開閉金枠に固定された下部プレートの摺動面を固定金枠に固定された上部プレートの摺動面に密着させるためには、原理的にみて、開閉金枠自体が僅かながらも固定金枠方向へ移動するものであり、これにより軸孔中のピン〈1〉、〈2〉、〈3〉の相対的位置が軸穴の長手方向へ移動し、開閉金枠の移動と上下プレートの摺動面の密着と面圧をかけることを可能にしているものと認められる。

4  以上の検討の結果及び当事者間に争いのない事実によれば、物件目録のL項は、「右Kのような手段により開閉金枠に対し第3図の上方向への力が作用するため、軸孔10中でのピン〈1〉、〈2〉、〈3〉の位置は、軸穴の長手方向に相対的に移動し、開閉金枠を閉じた状態では、部分的に当接していた上下プレートの摺動面が互いに密着し面圧の加わった状態となる。」とするのが相当である。

三  被告各装置が、本件第一発明の技術的範囲に属するか否かについて

1  別紙物件目録(一)ないし(三)のA、Cの構成が本件第一発明の構成要件〈1〉を、B、Cの構成が構成要件〈2〉を、Cの構成が構成要件〈3〉を、D、Gの構成が構成要件〈4〉をそれぞれ充足することは当事者間に争いがない。

2  被告各装置が、本件第一発明の構成要件〈5〉「前記摺動ゲート部材をその摺動面を除いた表面の大部分を前記キャリアとは別体の金属包囲体で包囲している。」を充足しているか否かについて判断する。

(一)  まず、右構成要件にいう「金属包囲体」の意味について、検討する。

(1) 本件第一明細書の発明の詳細な説明の欄の記載によれば、従来技術においては、ゲート部材を基板又はキャリアの凹所に対しモルタルを使用して強固に固定していたところ、この従来技術には、次のような問題点があったものとされている。「以上のような理由でゲート部材は基板またはキヤリアの凹所にモルタルで固定されているために、これを新しいものと交換するためにはモルタルをくずしてゲート部材を凹所から取出し、更に凹所から完全にモルタルを取除いた後再び凹所にモルタルを敷きその上に新しいゲート部材を載せて位置および高さを調整してから長時間加熱してモルタルを硬化させ更に冷却するのを待たねばならない。特にキヤリアに固定されているゲート部材を交換するためにはキヤリアをフレームから外しクレーンで別の場所に運び上述の手順でゲート部材を交換し新しいゲート部材を取付けたキヤリアを再びクレーンで容器に運びフレームに取付けるという作業が必要である。この作業はキヤリアが重量物であるために慎重なクレーン操作が必要である上フレームへの取付けには特別な治具を必要とし、更に前述の通りモルタルを硬化させるために長時間加熱してから自然冷却するまでの間作業を中断しなければならないために非常に労力と時間を費す作業となっている。この交換作業のために費される稼働時間の損失を短縮するために予め別のキヤリアに新しいゲート部材をモルタルで固定させたものを容易しておきゲート部材の交換に際しキヤリアごと交換する方法もとられているが、この方法はモルタルの加熱、冷却時間が節約できるとしても依然としてキヤリアの取外し、運搬、取付けに要する労力と少なからざる時間が残されており、更に1個の容器に対して余分のキヤリアを用意しておかなければならないという問題がある。」(三欄二六行ないし四欄一一行)

そこで、従来技術の右のような問題点を踏まえたうえで、本件第一発明の目的について、「本発明は上記摺動ゲート閉鎖機構において、特にキヤリアに取付けるゲート部材(以下摺動ゲート部材と称す)の交換作業を短時間で極めて簡単にできるように改良することを目的とするものである。」(四欄一二行ないし一六行)と記載されている。

そして、本件第一発明の特徴について、「本発明は従来のように摺動ゲート部材を金属性のキヤリアの凹所にモルタルで固定する代りに摺動ゲート部材を摺動面を除き大部分金属包囲体で包囲することを特徴とする。したがつて摺動ゲート部材はキヤリアの凹所に対しては金属包囲体を介して金属対金属接触をなしているので金属包囲と一体のまま凹所に対し容易に着脱できる。金属で包囲された摺動ゲート部材は交換現場とは別の専用工場で一貫生産できるので寸法精度を非常に高く維持できると共に生産性を高めることができる。交換現場では容器の基板からフレームを外しキヤリアの凹所から摩耗した金属包囲体付ゲート部材を取出し新しい金属包囲体付ゲート部材を嵌め込みフレームを基板に結合する作業を必要とするだけでモルタル作業を必要としないので少数の作業員で極めて短時間で交換作業を行うことができる。」(四欄一七行ないし三二行)と述べている。

以上のとおり、本件第一明細書の発明の詳細な説明では、金属包囲体付ゲート部材の使用によって交換作業が短時間で行えることが強調されているが、金属包囲体の具体的形態についての詳細な説明はなく、「摺動面を除き大部分金属包囲体で包囲する」ことがどのような状況を意味するものであるかは必ずしも明らかでない。もっとも、本件第一明細書の「図面の簡単な説明」の項には、図面上の番号10の説明として、「金属包囲体(金属ケース)」と表示され、また、発明の詳細な説明においては、摺動ゲートの「金属包囲体70」とされている図面中では番号70が付されている部材の説明として「金属ケース」と表示されてかることから、金属包囲体は金属ケースと同義のようにうかがわれる。

(2) 成立に争いのない乙第七号証及び原本の存在、成立に争いのない乙第八号証ないし乙第一五号証によれば、本件第一発明の出願の経過について、次の事実が認められる。

(ア) 本件第一特許権は、昭和四七年六月七日出願(一九七一年六月七日米国でした特許出願に基づく優先権主張)の特許出願昭和四七年第五六七八七号(以下「原出願」という。乙第七号証)から昭和五一年に分割出願されたものであるが、昭和五四年五月二四日付で本件第一発明は英国特許第一一九三六六七号明細書、特公昭三五-一四五一八号公報により進歩性がないものとする拒絶理由通知書(乙第八号証)が発せられた。そして、その理由のなお書きにおいて、「原特許出願の明細書及び図面には、摺動ゲートの摺動面を除く外面全体を金属で包囲しているのに対して、本願発明では「摺動面を除く外面のうち少なくともその側面が金属で包囲されている。」ように変更してきたが、係る事項は原特許出願の出願当初の明細書又は図面に記載されておらず、これらの記載から自明な事項と認められないので本願出願日のそ及は認められない。」とされた。

原出願の当初の明細書には、発明の詳細な説明中にその実施態様の(15)として、本件第一発明の金属包囲体に関連する記載があるが、そこでは、「ゲート・プレートと頂板の側部が金属ケーシング内にあり頂板に接触するゲート・プレートの表面部が高耐食性耐火材料で形成されていることを特徴とする第(11)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構」とされ、右第(11)項は、「ゲート・プレートが、容器の注入開口と整合するオリフイスを有する頂板と共働し、前記頂板が、容器に取付けた取付け部材の凹所に取はずし可能に受け入れられていることを特徴とする第(6)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。」とされている。そして、右「金属ケーシング」が記載されているのは、第五図であり、これは、補正後の本件第一公報の第5図とほぼ同一の図面であって、その断面図が記載されている第2図、第3図とも合わせてみると、「金属ケーシング」は、その側面、底面が一体となっているものと認められ、右拒絶理由通知がその理由のなお書きにおいて、原出願が「摺動ゲートの摺動面を除く外面全体を金属で包囲している」としているのは、このことを指摘しているものと認められる。

(イ) その後、昭和五四年一一月一六日付で再度拒絶理由通知書(乙第九号証)が発せられ、その理由では、米国特許第三五一一四七一号明細書が引用され、「上記刊行物には、注入装置の摺動ブロックを交換するためにバスケット内の凹所に取外し可能にブロックを収容することが記載されている。このブロックが熱歪による亀裂の発生防止或いは亀裂成長を防止するためにブロックを金属板で被覆することは、当業者が容易になし得たものと認める。」とされた。

昭和五五年五月三〇日付で拒絶査定(乙第一〇号証)がされたが、その理由は、右拒絶理由通知書に記載した理由と同一であった。

(ウ) これに対し、原告ユーエスエクスは不服の審判を申し立てた(昭和五五年審判第一七五八三号拒絶査定に対する審判事件)。原告ユーエスェクスは、昭和五六年八月一七日付の審判請求理由補充書(乙第一一号証)で、本件第一発明の構成要件の五番目として「ホ 摺動ゲートは摺動面を除く外面のうち少くともその側面を金属で包囲されておりフレームを容器から開放するとキヤリアをフレームに支持させたまま摺動ゲートだけをキヤリアの凹所から簡単に取り外したり収容したりすることができる。」(五頁四行ないし九行)を挙げ、その説明として、「従来のものがキヤリアの凹所内に収容される摺動ゲートがモルタルで凹所内に固定されているため凹所から簡単に取外すことができないのに対し、本発明はホに示す如く摺動ゲートが摺動面を除き金属で包囲されているため凹所から簡単に取出すことができると共に凹所に簡単に収容することができることを特徴としている。」(五頁一二行ないし一九行)と述べている。

また、本願発明の目的として、短時間でしかも少ない労力で摺動ゲートを交換できるようにすることを挙げ(目的については、一六頁一〇行ないし一三行においても、「本発明において摺動ゲートを金属ケースで被覆した最大の目的は本書並びに意見書において繰返し述べたように摺動ゲートの交換を容易にすることである。」と述べている。)、「この目的を達成するために摺動ゲートを従来のキヤリアの凹所にモルタルで固定する代りに前記ホに示す如く摺動面を除いて大部分金属ケースで包囲し金属ケースで包囲された摺動ゲートをキヤリアの凹所に収容することを特徴とするものである。金属ケースに対しては摺動ゲートは勿論モルタルで固定されその際摺動ゲートの成形誤差が調整され金属ケースと合せて一定厚さに製作される。即ち前述の理由で耐火物製摺動ゲートの短所を補うために従来摺動ゲートとキヤリアの凹所の間に介在させていたモルタルを本願発明は摺動ゲートと金属ケースの間に介在させ摺動ゲートを金属ケース付としてキヤリアの凹所に対して金属対金属接触の状態で着脱可能に嵌入できるようにしたものである。」(一一頁六行ないし二〇行)とし、更に本願発明の利点として、「金属ケースをキヤリァの凹所に適合する所定寸法に正確に製作することは容易であるのでキヤリアの凹所に対し金属ケース付摺動ゲートを嵌め込むだけで固定具で固定する必要はない。」(一二頁一九行ないし一三頁三行)としている。

更に、拒絶理由通知書記載の引例との関係に触れて、「本願発明は摺動ゲートを交換可能にするために摺動ゲートをキヤリアの凹所内にセメントで固定しないということだけを特徴とするものでなく、摺動ゲートを摺動面を除き金属ケースで包囲することを特徴とするものであり」(二〇頁一四行ないし一八行)としている。

また、原告ユーエスエクスは、特許請求の範囲において出願人は摺動ゲートの成形誤差調整と亀裂の拡大防止のために金属ケースと摺動ゲートの間にモルタルを介在させることを明記するよう訂正する用意があるとし、その訂正案の中で、「前記摺動ゲートをその摺動面を除いた表面の大部分を前記キヤリアとは別体の金属ケースで包囲すると共に前記耐火物の接着層を該摺動ゲートと前記金属ケースとの間に介在させ」(二三頁一三行ないし一六行)としている。

これらの記載によれば、右段階における構成要件ホにおいて「摺動面を除く外面のうち少なくともその側面を金属で包囲されており」という部分は「少なくともその側面を」とあるものの、摺動面を除いた表面の大部分を意味するとしているものであり、包囲する金属の形態はキャリアの凹所に適合する所定寸法に製作され、キャリアの凹所に嵌め込むだけで、固定具で固定する必要がないケース状のものを指しているものと解される。

(エ) 原告ユーエスエクスは、昭和五七年四月二八日付の審判請求理由補充書(第二回)(乙第一二号証)においても、右(ウ)の審判請求理由補充書と同様の趣旨から、前記訂正案を訂正して特許請求の範囲の一部を「前記ゲート部材の各々を装着すべき前記各凹所の底との間に耐火物の接着層を介在させて前記基板及び前記キヤリアに夫々固定し」(二頁一三行ないし一六行)としたい旨記載した。

しかし、これに対して、昭和五七年一二月一六日付で明細書の記載不備を理由として拒絶理由通知書(乙第一三号証)が発せられた。その理由は、次のとおりであった。「(1)ゲート部材を接着層を介して金属ケースで包囲した点の作用効果が明細書に記載されていない。(明細書28頁によると摺動ゲートが金属で包囲されているためにひび割れが生じても耐火材全体の崩壊につながらないと記載されているが、これは理由補充の主張と矛盾する。)〈2〉頂板9、摺動ゲート12が共に取りはずし簡便であることが明記されていない。」

これに対し、原告ユーエスエクスは、明細書全部を訂正する手続補正書を提出し、それとともに、昭和五八年五月一三日付意見書(乙第一四号証)において、右全文訂正明細書の内容を説明し、「訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明は・・・審判請求理由補充書において本願発明の構成要件の一つとして主張したゲート部材と金属ケースの間に接着層を介在させる点を限定していませんが、本願発明はこの限定がなくてもゲート部材を金属ケースで包囲するという着想だけで十分特許発明を構成すると考え、この主旨に沿って明細書全文を訂正し本発明の要旨が明瞭になるように訂正しました。」(二頁四行ないし一五行)とし、「摺動ゲート部材を金属ケースで包囲しキヤリアの凹所に対し着脱自在にする着想だけでも十分特許に値する発明を構成すると考えます。」(三頁一二行ないし一五行)とした。

(3) 以上のように、本件第一明細書の発明の詳細な説明の記載においては、本件第一発明の特徴の一部として、「摺動ゲート部材を摺動面を除き大部分金属包囲体で包囲すること」、「金属で包囲された摺動ゲート部材は・・・寸法精度を非常に高く維持できる」と記載されており、図面の簡単な説明における番号の説明において「金属包囲体(金属ケース)」、「金属ケース」と表現されていること、出願経過における原告ユーエスエクスの主張においても、本件第一発明における金属包囲体は、プレートの摺動面を除く面の大部分が金属ケースで覆われていること自体は一貫して変更がなく、その金属ケースは、キャリアの凹所に適合する所定寸法に正確に製作され、キャリアの凹所に嵌め込むだけで、固定具で固定する必要がないものとされていることに照らすと、本件第一発明における「金属包囲体」とは、摺動ゲート部材の摺動面以外の大部分を覆いキャリアの凹所に嵌め込むだけで、固定金具で固定する必要がない程に所定寸法に正確に製作された一体の容器状の金属ケースを意味しているものと解される。

(二)  被告各装置の構成Hは、「上部及び下部プレートは、第7~9図に示されているように側面にプレートレンガの厚みより約一〇ミリメートル狭い巾のスチールフープが予熱してまかれ、これによって締め付けられており、又プレートレンガの摺動面の反対側の面にはレンガの表面を完全に覆うよりやや小さいセラミックシート17と厚さ〇・二五八ミリメートルの薄鉄板18が貼りつけられている。」というものである。

このような被告各装置の構成においては、スチールフープと薄鉄板とは一体とはなっておらず、両者の間には間隙が存在しているから、被告各装置のプレートレンガは、一体となった金属ケースで包囲されているとはいえないのみか、仮にスチールフープ及び薄鉄板を一体のものと同視しても、それはプレートレンガの側面に巻かれたスチールフープとプレートレンガの摺動面の反対側の面にセラミックシートを介して貼りつけられている薄鉄板からなるものであって、その寸法は結局プレートレンガの寸法によって定まるものと認められ、キャリアの凹所に嵌め込むだけで固定具で固定する必要がない程に所定寸法に正確に製作されたものともいえない。

右のとおり、被告各装置において本件第一発明の構成要件の摺動ゲート部材に相当するプレートレンガの摺動面を除いた表面の大部分は、「金属包囲体で包囲している」とはいえないから、被告各装置の構成Hは構成要件〈5〉を充足しない。

3  次に、被告各装置が、本件第一発明の構成要件〈6〉のうちの「かくして金属で包囲された摺動ゲート部材が前記キヤリアの凹所の中に該凹所の壁と金属対金属接触する状態で装着され」という部分を充足するか否かについて判断する。

(一)  まず、右構成要件にいう「金属対金属接触する状態で装着され」の意味について検討する。

(1) 本件第一発明の特許請求の記載は、「・・・摺動ゲート閉鎖機構において、」「前記フレームは・・・摺動ゲート部材を露出する開放位置に揺動できるようになつており、前記摺動ゲート部材をその摺動面を除いた表面の大部分を・・・金属包囲体で包囲し、」「かくして金属で包囲された摺動ゲート部材が前記キヤリアの凹所の中に該凹所の壁と金属対金属接触する状態で装着され、前記フレームが開放位置に揺動されるとき、凹所に対し容易に着脱できるようにしたことを特徴とする」「摺動ゲート閉鎖機構」という文章構造であることは明らかである。特許請求の範囲の記載内容と右文章構造によれば、フレームが摺動ゲート部材を露出する開放位置に揺動できる構成と摺動ゲートの摺動面を除いた表面の大部分を金属包囲体で包囲した構成が「かくして」以下の構成の技術的前提となっていること、「かくして」以下の構成においては、金属で包囲された摺動ゲート部材がキャリアの凹所の中にキャリアの凹所の壁と金属対金属接触する状態で装着されることによって、フレームが開放位置に揺動されるとき、金属で包囲された摺動ゲート部材が凹所に対し容易に着脱できるようにしたものとされていることが認められる。

(2) 前記2(一)(1)のとおり、本件第一明細書の発明の詳細な説明の欄の記載によれば、本件第一発明は、「従来のように摺動ゲート部材を金属性のキヤリアの凹所にモルタルで固定する代りに摺動ゲート部材を摺動面を除き大部分金属包囲体で包囲すること」(四欄一七行ないし二〇行)によって、摺動ゲート部材を金属包囲体と一体のままキャリアの凹所に対し容易に着脱できることを特徴とするものである。

したがって、本件第一発明の技術分野は、摺動ゲート部材のキャリアの凹所に対する固定方法に関するものであり、従来技術において行なわれていたモルタルによる固定を、本件第一発明においては、摺動ゲート部材の摺動面以外の大部分を包囲する金属包囲体とキャリアの凹所の壁との金属対金属接触によって代えようとするものである。

また、同じく発明の詳細な説明には、本件第一発明の特徴として、「金属で包囲された摺動ゲート部材は交換現場とは別の専用工場で一貫生産できるので寸法精度を非常に高く維持できると共に生産性を高めることができる。」(四欄二三行ないし二六行)との記載、「交換現場では容器の基板からフレームを外しキヤリアの凹所から摩耗した金属包囲体付ゲート部材を取出し新しい金属包囲体付ゲート部材を嵌め込みフレームを基板に結合する作業を必要とするだけでモルタル作業を必要としないので少数の作業員で極めて短時間で交換作業を行うことができる。」(四欄二六行ないし三二行)との記載がある。

更に、実施例についての説明として、「頂板9および摺動ゲート部材12の金属包囲体の寸法は夫々取付プレート66およびキヤリア14の凹所に隙間なく嵌まり込むことのできる寸法である。これ等のゲート部材は金属で包囲されているので夫々の凹所に挿入するだけで取付けられ、従来のようにモルタルを使用して凹所内に結合する必要はない。」(七欄二〇行ないし二六行)との記載がある。

(3) また、原告ユーエスエクスは、本件第一特許権の出願の経過においても、前記2(一)(2)(ウ)のとおり、昭和五六年八月一七日付審判請求理由補充書(乙第一一号証)の中で、「従来摺動ゲートとキヤリアの凹所の間に介在させていたモルタルを本願発明は摺動ゲートと金属ケースの間に介在させ摺動ゲートを金属ケース付としてキヤリアの凹所に対して金属対金属接触の状態で着脱可能に嵌入できるようにしたものである。」、「金属ケースをキヤリアの凹所に適合する所定寸法に正確に製作することは容易であるのでキヤリアの凹所に対し金属ケース付摺動ゲートを嵌め込むだけで固定具で固定する必要はない。」と記載していた。

(4) 以上のような、本件第一明細書中の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載並びに出願の過程において原告ユーエスエクスが主張した事項に、前記2(一)に判断した「金属包囲体」の意味を合わせ考えれば、本件第一発明にいう「金属対金属接触する状態で装着され」とは、前記2(一)(3)に判断したように所定寸法に正確に製作された金属包囲体を金属性のキヤリアの凹所に固定具で固定する必要がないように嵌め込んだ状態を意味するものであって、出願の経過における「嵌入」、「嵌め込む」との用語もまさしく右のような状態を表現しているものと解される。したがって、金属包囲体とキャリアの凹所の間に金属包囲体を固定できない隙間があり、金属包囲体をキャリアの凹所に固定するために、何らかの手段、道具を要するような場合は、「金属対金属接触する状態で装着され」たものとはいえない。

(二)  被告各装置の構成は、「摺動金枠3は第4図に示されるように枠部19と底板20からなり、下部プレート5は第6図に示されているように摺動金枠3に対し金属ブロック21を介してレンガ押さえボルト22で締め付けて固定される。プレートレンガの薄鉄板18は金枠の底板20と接し、又スチールフープは金属ブロック21の内側面とそれによって押圧された状態で接しているが、金枠の枠部の側壁23とプレートレンガのスチールフープ16は接触しておらず両者の間には間隙が設けられている(上部プレートと固定金枠の関係も同様である)。」というものである。

この被告各装置のスチールフープが金属ブロック21の内側面と接し、レンガ押さえボルトで締め付けられて固定されている等のキャリアの凹所の側壁部分とプレートレンガとの関係が「金属対金属接触する状態で装着され」たものと評価できるか否かについて検討する。

前記3(一)(4)のとおり、本件第一発明にいう「金属対金属接触する状態で装着され」とは、前記2(一)(3)に判断したように所定寸法に正確に製作された金属包囲体を金属性のキヤリアの凹所に固定具で固定する必要がないように嵌め込んだ状態を意味するものであり、金属包囲体とキャリアの凹所の間に金属包囲体を固定できない隙間があり、金属包囲体をキャリアの凹所に固定するために、何らかの手段、道具を要するような場合は、これに該当しないものと解されるところ、下部プレートが摺動金枠に対し金属ブロックを介してレンガ抑えボルトで締め付けて固定されるもので、プレートレンガの側面に巻かれたスチールフープが金属ブロックの内側面とそれによって押された状態で接している状態は、金属ブロックとレンガ押さえボルトという固定のための手段、道具を必要としているものであり、かつ、摺動金枠の枠部の側壁とプレートレンガのスチールフープは接触しておらず両者の間には金属包囲体で包囲できない間隙があるのであるから、この状態をもって「金属対金属接触する状態で装着され」ているということはできない。

また、摺動ゲート部材の金属包囲体で包囲された面の一つがキャリアの凹所の金属面と接触していることのみをもって「金属対金属接触する状態で装着され」たものといえないことは前記(一)(4)のとおりであるから、被告各装置において、プレートレンガの摺動面の反対側の面に貼りつけられている薄鉄板(被告各装置の構成H項)が摺動金枠の底板と接していることをもって「金属対金属接触する状態で装着され」ているということはできない。

(三)  以上によれば、被告各装置は、構成要件〈6〉を充足するということはできない。

4  よって、その余の点について判断するまでもなく、被告各装置は本件第一特許権を侵害しない。

四  間接侵害の主張について

原告らは、被告プレートが被告各装置にのみ使用されるものであり、本件第一特許権についての間接侵害が成立する旨主張する。しかしながら、被告各装置が本件第一発明の技術的範囲に属しないことは既に検討したところであるから、被告プレートが被告各装置にのみ使用されるものであるか否かについて検討するまでもなく、原告らの間接侵害についての主張は理由がない。

五  被告各装置が、本件第二発明の技術的範囲に属するか否かについて

1  被告各装置のA及びCの構成が本件第二発明の構成要件〈1〉、〈2〉を充足すること、被告各装置のB及びDの構成が構成要件〈3〉を充足すること、被告各装置のKの構成が構成要件〈4〉を充足すること及び被告各装置が構成要件〈11〉を充足することは当事者間に争いがない。

2  被告各装置が構成要件〈5〉を充足するか否かについて判断する。

別紙物件目録(一)ないし(三)によれば、被告各装置の開閉金枠2の軸穴10が存在する突起部分が開閉金枠の両外側に二つずつ上下に間隔を置いて存在する(E項、F項、第5図)ところ、右開閉金枠が本件第二発明の主フレーム構造体に、右突起部分が本件第二発明の構成要件〈5〉のブラケットに相当するものと認められるから、被告各装置が構成要件〈5〉の「主フレーム構造体に間隔を置いて取り付けられた複数個のブラケットを有する」ことを充足するものと認められる。

被告は、被告各装置には、ブラケットは開閉金枠の両側にあるから、構成要件〈5〉中のブラケットが「主フレーム構造体の一方の側に・・・取り付けられた」の要件を充足しない旨主張する。

しかし、主フレーム構造体に相当する開閉金枠の両側に二つずつ上下に間隔を置いてブラケットに相当する突起部分があることは、本フレーム構造体の「一方の側に」間隔を置いて取り付けられた複数個のブラケットを有するとの構成を充足することは明らかであるが、なお、本件第二発明におけるブラケットの技術的意味に即して検討する。

(一)  前記甲第四号証によれば、本件第二明細書の発明の詳細な説明には、「前記構造体の一方の側に間隔を置いて取り付けられた複数個のブラケツトを有し、これらのブラケツトの夫々には容器に取り付けたピンが嵌まり込む長孔が形成されており、さらに前記構造体の他方の側に取り付けた部材に着脱可能に係合するラツチ装置が取り付けられ、・・・さらに前記構造体が前記ラツチ装置で保持されているとき前記ピンを前記ブラケツトの長孔に摺動させながら前記ゲート・プレートを前記頂板に密着せしめてこの密着状態を維持する装置が設けられ」(訂一三頁一行ないし九行)とされ、このような構造によって、「摺動ゲート閉鎖装置は、ゲート・プレートを支持する構造体をその一方の側に取り付けたブラケツトに形成された長孔を容器に取り付けたピンに嵌め込み容器に対し揺動および往復直線運動を可能に結合すると共に、構造体の他方の側に取り付けた支承部材に容器に取り付けたラツチ装置を係合離脱せしめるようにしているので、構造体は極めて容易に開閉でき、したがつて摩耗あるいは損傷したゲート・プレートおよび静止頂板の両耐火物の交換作業は極めて容易となる。」(同頁一二行ないし一六頁)とされている。これらの記載に示されている本件第二発明における構成要件〈5〉のブラケットの技術的な意味は、a容器と主フレーム構造体との結合部を形成するためブラケットに長孔が形成されていて、そこに容器に取り付けたピンが嵌まり込むことによって、容器と主フレームが結合され、b主フレーム構造体は、右のとおり結合された後、ブラケットの長孔に嵌まり込んだピンを軸として揺動が可能となっており、c更に、ブラケットの長孔にピンが摺動することによる直線運動により主フレーム構造体を頂板に密着させることができる、そのような長孔を主フレーム構造体と一体のものに設けるための部材ということである。

(二)  被告各装置において、ピン〈1〉、〈2〉が挿入されている突起部分(第5図において中央奥側にある。)と軸孔10が形成されている突起部分(第5図において右手前側にある。)とは、構成D、E及び前記二で認定した構成Lから、いずれも右a、cの機能を果たすことが可能であることが認められるが、右bの機能を果たすことができるのは、いずれか一方の側の突起部分に限られ(両側が同時にbの機能を果たすことはありえない。)、第5図に示された状態では構成Dのピン〈1〉、〈2〉が挿入されている側の突起部分のみであり、軸孔10が形成されている部分は、右bの機能は有しないものである。その意味で、第5図に示された状態では被告各装置の構成Dのピン〈1〉、〈2〉が挿入されている部分のみが構成要件〈5〉にいう「主フレーム構造体の一方の側に間隔を置いて取り付けられた複数個のブラケット」に相当するものであり、被告各装置においても、「主フレーム構造体の一方の側」にのみ複数のブラケットが取り付けられているということができる。

もっとも、被告各装置は、別紙物件目録(一)ないし(三)の各図面のとおり、左右対称に構成されているから、軸穴に挿入された右ピン〈1〉、〈2〉を軸として揺動してbの機能を果たすことも、反対側の軸穴に挿入されたピン〈3〉を軸として揺動してbの機能を果たすことも可能と認められるが、同時には右両者のいずれか一方の側がbの機能を果たすことができるにすぎないから、複数のブラケットが取り付けられているのは「主フレーム構造体の一方の側」であると認められる。

3  被告各装置が構成要件〈6〉、〈7〉を充足するかの判断に先立って、構成要件〈8〉を充足するか否かについて判断する。

(一)  「前記主フレーム構造体の他方の側に取り付けた支承部材に着脱可能に係合するラッチ装置が容器に取り付けられ」の部分について

(1) ここでいう「前記主フレーム構造体の他方の側」とは、主フレーム構造体におけるブラケットの存在する側とは異なる側という意味であることは本件第二発明の特許請求の範囲から明らかである。本件第二明細書の発明の詳細な説明の欄の「構造体の他方の側に取り付けた支承部材に容器に取り付けたラツチ装置を係合離脱せしめるようにしているので、構造体は極めて容易に開閉でき」(訂一三頁一四行、一五行)との記載によれば、「支承部材」とは、主フレーム構造体を開閉するために、ラッチ装置を係合離脱させることのできる装置であり、「ラッチ装置」とは、支承部材に係合離脱する装置であり、容器に取り付けられているものと認められる。

(2)(ア) 被告各装置は、いずれも開閉金枠2のブラケットに相当する突起部分のある側と異なる側に設けられたバネ箱の中のバネ押しの底部に、係合のための部分が存在する。

(イ) 被告装置(一)においては、トグルリンク14に結合されたトグル14’の先端がバネ押しの溝に係合される。そして、トグルリンク14は容器に固定して取り付けられている固定金枠の外側に取り付けられているから、容器に取り付けられているものと認められる。

被告装置(二)においては、アーム15の先端のボルト14をバネ押し13に係合させる。アーム15は容器に固定して取り付けられている固定金枠の外側に取り付けられているから、容器に取り付けられているものと認められる。

被告装置(三)においては、フック15をバネ押し13にかけて固定する。フック15は、別紙物件目録(三)第4-1図、第5-1図のとおり、固定金枠2に取り付けられているから容器に取り付けられているものと認められる。なお、被告装置(三)においては、フックがバネ押しにかけられる前に加圧治具を用いて、その先端に装着した油圧ラムでバネを収縮させ、プレート問に面圧を加えるが、加圧治具自体はバネ押しに係合されるものではないし、また、油圧ラムは容器に取り付けられたものではなく、また、バネ押しに所定の力を加え、フック15がバネ押しにかけられ固定されると取り外されるから、バネ押しに係合されるものとはいえない。

(3) 以上によれば、被告各装置は、いずれも主フレーム構造体たる開閉金枠の他方の側に取り付けた支承部材に相当するバネ押しの底部に、ラッチ装置(被告装置(一)においてはトグル、被告装置(二)においてはボルト、被告装置(三)においてはフック)が容器に取り付けられているものということができる。

(二)  「該ラッチ装置は前記支承部材に係合させると前記ゲート・プレートの上面が前記静止頂板の下面に対し両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持される」の部分について

(1)(ア) 右「ラッチ装置を支承部材に係合」させたときのゲート・プレートと静止頂板との関係について、本件第二明細書中の特許請求の範囲には、「前記ゲート・プレートの上面が前記静止頂板の下面に対し両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持されるようになっており」と記載されており、ゲート・プレートの上面を静止頂板の下面の間に間隔を置いて向き合う状態に保持することが明示されている。

しかしながら、本件第二明細書の発明の詳細な説明中の実施例の説明は、「主フレーム13が水平位置に揺動されたときラツチ・トグル機構Lのリンク33の先端をラツチピン31に係合させる。このときヒンジ・トグル機構H側において主フレーム13は長孔35’の上端を保持ピン28に係合させて水平に保持され、負荷パッド15の上に支持されたゲート・プレート12は静止頂板9に軽く接触する状態か若干静止頂板9と間隔を置いた状態で保持される」(訂一七頁二八行ないし三二行)との記載がある。すなわち、特許請求の範囲においては、ゲート・プレートと静止頂板とは両者の間に間隔を置いて向き合う状態のみが明示されているのに対し、右実施例の説明においては、間隔を置いて向き合う状態のほか、両者が軽く接触する状態も含め記載されている。

右のように、特許請求の範囲に極めて明確に両者の間に「間隔を置いて向き合う状態」と記載されている以上、これを重視することは当然であるが、特許請求の範囲にいう「間隔を置いて向き合う状態」の中には、実施例の説明で述べられている「軽く接触する状態」も含まれると解する余地があるか否かについて検討する。

(イ) 前記甲第四号証によれば、出願公告時の本件第二明細書の特許請求の範囲中には、「前記容器に取り付けたラツチ装置があつてこの装置を前記構造体の他方の側に固着した部材に係合させたりこの係合を解除したりすることによつて前記ゲート・プレートの上面と前記頂板の下面とが前記両者の間にある間隔を置いて向かい合う関係に解放可能に保持されるようになつており」(二欄一二行ないし一八行)と記載され、発明の詳細な説明には、本件第二発明の目的について、「本発明の目的は、摺動するゲート・プレートと容器に固定した頂板とに接近して、これらの点検、修理、取替えを行うためにゲートを閉鎖するに際して、前記両者を接近させて密着させまたは離隔させる操作を2段階で行うようにし、前記両者を局部的に当接させることなく一様に密着させて耐火物に損傷を与えないように構成した摺動ゲート閉鎖機構を提供することにある。」(三欄一九行ないし二六行)と記載されていた。

(ウ) 前記乙第七号証、原本の存在、成立に争いのない乙第一六号証、乙第一七号証、乙第一九号証、乙第二〇号証によれば、次の事実が認められる。

本件第二特許権は、本件第一特許権の原出願と同じ出願を原出願として昭和五〇年に分割出願されたものであるが、右原出願の特許請求の範囲第(2)項には、「・・・摺動ゲート閉鎖機構において、前記構造体が、容器の注入開口に隣接して容器にヒンジ結合された支持体からなり、容器に取付けた掛けがねが前記支持体を摺動ゲートを支持する作業位置に解放可能に保持するようになつており、前記支持体に前記支持体が作業位置にあるとき容器の注入開口と整合する耐火ノズルを備えた底部を設け、それにより掛けがねをはずして支持体を開口位置へ揺動させることにより摺動ゲートと耐火ノズルとに接近しうるようにしたことを特徴とする摺動ゲート閉鎖機構」(乙第七号証二頁下から七行ないし三頁五行)との記載があり、発明の詳細な説明中には、発明の特長として、「消耗した時に容易に取はずすことができ、容器が再び充填される毎にさらに使用するために逆にされ、或は、新しいものと変えることのできる挿入体を有する注入バルブ又は閉鎖機構を提供するにある。」(同号証五頁下から二行ないし六頁三行)と記載され、実施例の説明において、「このトグル機構により作業中に消耗した耐火部品の取換えを容易にする。」(同号証三〇頁下から六行ないし五行)とされていた。

右原出願から本件第二発明について分割出願された後昭和五一年七月二八日付で拒絶理由通知書が発せられ、その理由中で、「本願発明は、上記出願(原出願のこと)の特許請求の範囲第2項の発明と同一と認められる」とするものであった。

原告ユーエスエクスは、この拒絶理由通知に対して、特許請求の範囲を原出願との差異が明確になるように補正し、その昭和五一年一二月二二日付意見書(乙第一七号証)において、訂正した内容について次のように説明した。 「(2) 訂正した本願発明においては、容器の側に固定されたピン28がゲート・プレートを支持する構造体13の側に形成された長孔35’に嵌まりこんで、この両者の係合によりゲートの開閉に際して構造体の運動が規制されるようになつている。したがつてゲートの閉鎖に際しては、構造体13に収容されているゲート・プレート12の上面である耐火面Rと容器に収容された頂板9の下面である耐火面Rとがある間隔を置いて相互にほぼ平行に向かい合う位置まで、構造体が第6図に示す開いた位置から旋回し(第1段階)、その後構造体に配設されたばね装置の弾力に抗してゲート・プレートを頂板に均一に接近させて両耐火面を各部均一に密着させる(第2段階)ことができるようになつており、またゲートを開く際には上記と全く反対の操作をすることができるようになつている。(3) 上記のように2段階でゲートを閉鎖する構成は引例の発明には全く存在しないものであり、したがつて本発明はその構成において引例の発明と明確に異なるものである。ゲートの閉鎖に際して、上記2つの耐火面が一様に接触して密着しないで局部的は接触が起ると、その接触部に力が集中して加わり、そのために脆弱な耐火物を破損させる危険がある。しかしながら、本発明のゲートは上記の構成を有するので、上記2つの耐火面内の各部を均等に接近させて密着させることができるから、局部的に過大な力が加わることがなく、したがつて耐火物を破損するおそれがほとんどない。」(同号証二頁一〇行ないし三頁下から二行)

更に、原告ユーエスエクスは、昭和五三年五月二四日付の特許異議答弁書(新日本製鉄株式会社の特許異議に対するもの)(乙第一九号証)中において、「本願の特許請求の範囲にあるラツチ構成要素についての「前記容器に取り付けたラツチ装置があつてこの装置を前記構造体の他方の側に固着した部材に係合させたりこの係合を解除したりすることによつて前記ゲートプレートの上面と前記頂板の下面とが前記両面の間にある間隔を置いて向かい合う関係に解放可能に保持されるようになつており」の記載を検討すると、ラッチ装置の係合を解除しなければ、ゲート・プレートは頂板からある間隔を置いて向かい合う関係に離れないことになると主張している。上記ラツチ構成要素についての記載中の「解放可能に」は、ラツチ装置と構造体の他方の側に固着した部材との係合を解除することによつてゲート・プレートの上面と頂板の下面とが前記両面の間にある間隔を置いて向かい合つている状態を解除することができることを意味し、異議申立人が述べているようにゲート・プレートが頂板に密着した状態を解除できることを意味するものではない」(同号証五頁一行ないし六頁一行)と述べていた。

また、原告ユーエスエクスは、昭和五三年五月二四日付の特許異議答弁書(被告の特許異議に対するもの)(乙第二〇号証)中において、「ゲートの閉鎖に際しては、構造体13に収容されているゲート・プレート12の上面である耐火面Rと容器に収容された頂板9の下面である耐火面Rとがある間隔を置いて向かい合う位置まで、構造体が第6図に示す開いた位置から旋回し(第1段階)、その後構造体に配設されたばね装置の弾力に抗してこのばね装置を圧縮しつつゲート・プレートを頂板に均一に接近させて両耐火面を各部均一に密着させさらにこの密着状態を維持する(第2段階)ことができるようになつており、またゲートを開く際には上記と全く反対の操作をすることができるようになつている。」(同号証一三頁一二行ないし一四頁四行)、「本願発明の構成Bにおいては前記のように摺動ゲートを2段階を経て開閉する機構を限定しているので、ゲートの閉鎖に際して上記2つの耐火面内の各部を均等に接近させて密着させることができるから、両耐火面の接触部に局部的に過大な力が加わることがなく、したがつて耐火物を破損するおそれをなくする効果を奏する」(同号証一四頁一〇行ないし一六行)と述べている。

(エ) 右(イ)、(ウ)の事実によれば、本件第二発明においては、公告後の補正前までの段階においては、原出願との差異を明らかにするために、原出願が耐火部品の取換え容易を発明の目的としていたのに対し、ゲート・プレートと固定頂板との局部的当接を回避することによって、耐火物に損傷を与えないことをその目的として明らかにしていたものである。そして、そのための構成として、ゲート・プレートを収容した構造体が旋回する第一段階とゲート・プレートを頂板に密着させるための第二段階とを分け、第一段階が終了した段階では、両耐火物の向き合う面は間隔を置いて向き合って接触せず、第二段階において、右両面が均一に接近したのち均一に密着することとしている。そのことが、公告時の特許請求の範囲において、「前記ゲート・プレートの上面と前記頂板の下面とが前記両者の間に間隔を置いて向かい合う関係に解放可能に保持されるようになっており」(第一段階)、「前記構造体がラツチされているときに前記ピンを前記ブラケツトの長孔に沿つて摺動させて前記ばね装置の弾力に抗して前記ゲート・プレートを前記頂板に接近させて密着させる装置があり」(第二段階)と表現されているものと認められる。

(オ) ところが、公告後の補正を経た本件第二明細書においては、発明の目的として、「交換作業に際して耐火物を損傷させることがない」という目的のほかに、「耐火物の交換作業を容易迅速に行い生産性を高める」という目的の追加が行われるとともに、実施例の説明において、「主フレーム13を第5図に示す装置から第6図に示す水平位置に揺動させるとき主フレームは長孔’35の上端を保持ピン28に係合させて回動するので静止頂板9に対しゲート・プレート12は主フレーム13の枢着点側においてもある程度の間隔を保つて揺動し主フレームを通常のピボツトで連結している場合のように静止頂板9とゲート・プレートのうちの一方の縁が他方の表面に点接触することによつて起る損傷を避けることができる。」(訂一七頁二四行ないし二八行)、「揺動および垂直運動の二重の運動ができる。この構造によりゲート・プレート12を静止頂板9に対し間隔をあけたまま主フレーム13を枢動せしめることができると共に静止頂板9とゲート・プレート12を両者の向き合つた面を互に平行にして円滑に離接せしめることができるので静止頂板9とゲート・プレート12が点接触することによる損傷はなくなり又均一な接触圧力を保つことができる。」(同頁下から四行ないし訂一九頁一行)とされている。

右のうち、ゲート・プレートの一方の縁の点接触による損傷については、公告後の補正前には具体的に明示されていなかった点であるが、これは局部的当接による損傷の一態様とみることができる。

もっとも、右二箇所の説明の間に、前記(ア)の、軽く接触する状態を含む説明があるため、あたかも本件第二発明の目的が右点接触による損傷を防ぐことにあり、ゲート・プレートの面と静止頂板の面との軽い接触は右損傷とは関係がないから本件第二発明を満たすかのような印象を与えている。

しかしながら、公告後の発明の詳細な説明においても、発明の効果についての一般的説明として、「このように本発明によれば長孔を使用して構造体は2段階の操作で開閉されるようにヒンジ結合されているため両耐火物は均一な接触圧をもつて密着し、又閉鎖の際に両者が局部的に当接することによつて起る耐火物の損傷を避けることができる。」(訂一三頁二〇行ないし二二行)との記載があり、補正前と同様、二段階操作による損傷の回避を挙げるのみである。そして、特許請求の範囲においても、「該ラツチ装置は前記支承部材に係合させると前記ゲート・プレート12の上面が前記静止頂板9の下面に対し両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持されるようになつており、」と記載されているのみであり、右両面が軽く接触する状態も含むような記載とはなっていない。

(カ) 以上のような本件第二明細書の記載に、本件第二特許権の出願の過程において、原告ユーエスエクスが主張した事項、補正の経過によれば、公告後の補正を経た本件第二明細書の実施例の説明中に「軽く接触する状態」についての記載があるからといって、構成要件〈8〉の「間隔を置いて向き合う状態」に「軽く接触する状態」を含めて解することはできない。

(2) 被告各装置の構成中L項については、「右Kのような手段により、開閉金枠に対し第3図の上方向への力が作用するため、軸孔10中でのピン〈1〉、〈2〉、〈3〉の位置は、軸穴の長手方向に相対的に移動し、開閉金枠を閉じた状態では、部分的に当接していた上下プレートの摺動面が互いに密着し面圧の加わった状態となる。」とするのが相当であることは、前記二で認定したとおりであり、被告各装置においては、開閉金枠を閉じた状態では、上下プレートは部分的に当接しているものである。

右によれば、被告各装置は、ラッチ装置たるトグル等を支承部材であるバネ押しに係合させたとき、ゲート・プレートたる下部プレートの上面が静止頂板たる上部プレートの下面に対し部分的に当接しており、両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持されていないから、本件第二発明の構成要件〈8〉を充足しない。

また、被告装置(三)においては、ラッチ装置たるフックは、油圧ラムでバネを収縮させ、プレート間に面圧をかけた状態で係合されるから、本件第二発明の構成要件〈8〉「該ラッチ装置が前記支承部材に係合されると前記ゲート・プレートの上面が前記静止頂板の下面に対し両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持される」に該当せず、この点においても、本件第二発明の構成要件〈8〉を充足しない。

4  次に、被告各装置が構成要件〈6〉、〈7〉を充足するか否かについて判断する。

(一)  被告各装置の構成DないしF第5図によれば、開閉金枠2には、軸孔10が形成されている突起部分があり、ピン〈1〉、〈2〉が挿入されている部分も同様の突起部分に形成された同様の軸孔である。この突起部分の少なくとも一方は、構成要件〈5〉、〈6〉のブラケットに該当する(第5図においては中央奥側にあるピン〈1〉、〈2〉が挿入されている部分)ことは前記2(二)のとおりである。また、構成DないしFのとおり、ブラケットに相当する各軸孔には固定ピン〈1〉、〈2〉が挿入されるところ、右固定ピン〈1〉、〈2〉は、いずれも固定金枠の丸孔にも通されているところ、固定金枠は被告各装置の構成Bのとおり、容器側に固定して取り付けられているから、右軸孔には「容器に取り付けたピンが嵌まり込む」と評価することができる。

したがって、被告各装置は、「これらのブラケットの夫々には容器に取り付けたピンが嵌まり込む孔が形成されている」限度では構成要件〈6〉の一部を充足する。

被告は、本件第二発明の出願公告時の明細書における特許請求の範囲の記載においては、「容器に固定されたピン」とされており、公告後の補正ではその意味は変わっていないはずであるから、「容器に取り付けたピン」とは「容器に固定されたピン」の意味であるところ、被告各装置のピン〈1〉、〈2〉は抜差し自在であって容器に固定されていないから、被告各装置は構成要件〈6〉を充足しない旨主張する。そして、右のとおりピンが抜差し自在であること自体は原告らもこれを積極的に争わない。確かに、「固定」とは「ひと所に定まって移動しないこと」を意味するのに対し、「取り付ける」とは、「ある物を他の物に装置する」ことであって、二つの対象物が固定している場合のほか、接触はしているが相対的に移動可能な場合も含む広いものと考えられるから、公告後の補正における「取り付ける」の意味を「固定」よりも広く解釈するのは相当でない。しかしながら、被告各装置のピン〈1〉、〈2〉が固定金枠2の丸孔に挿入されたときには、丸穴の直径はピン〈1〉、〈2〉の外径とは挿入、抜き出し可能な程度のクリアランスを有するものの、ピン〈1〉、〈2〉の動きは丸孔によって規制されて、ほとんど移動できない状況となっているものと認められるから、この状態は実質的にみて「固定」されているものと評価することができる。

また、被告各装置の軸孔は、長径が短径プラス九ミリメートル(タンディッシュ用小型装置で短径プラス三ないし六ミリメートル)で、その長手方向が下部プレートの上面に対しほぼ垂直になる方向に形成されているから、被告各装置は「この孔はその長手方向が前記ゲート・プレートの上面に対しほぼ垂直になる方向に形成されている。」限度では構成要件〈7〉の一部を充足する。

したがって、被告各装置が構成要件〈6〉、〈7〉を充足するか否かは、被告各装置の軸穴が構成要件〈6〉、〈7〉の長孔に該当するか否かにかかるものである。

(二)  被告各装置の軸穴は真円ではなく、前記のように長径と短径の差があるものであるから、国語的には「長孔」と称することができないわけではない。

しかし、本件第二明細書の発明の詳細な説明中には、発明の一般的は説明として「前記長孔はその長手方向がゲート・プレートの上面に対してほぼ垂直になる方向に形成されているので耐火物の交換後の構造体の取り付け作業においては、先ず構造体の支承部材にラッチを係合させたとき両耐火物はほぼ平行に向き合った状態に保持され、次いで両者を締め付け機構によって密着させるとき両者は平行状態を維持したまま一様の圧力で圧接させることができる。このように本発明によれば長孔を使用して構造体は2段階の操作で閉鎖されるようにヒンジ結合されているため両耐火物は均一な接触圧をもって密着し、又閉鎖の際に両者が局部的に当接することによって起る耐火物の損傷を避けることができる。」との記載があり、これによれば、本件第二発明の、「ラッチ装置は前記支承部材に係合させると前記ゲート・プレートの上面が前記静止頂板の下面に対し両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持されるようになっており」という構成は、ゲート・プレートの上面に対しほぼ垂直に長孔が形成されていることによって実現するものである。そして、この長孔の長径が短い場合には、ゲート・プレートの上面と静止頂板の下面との間に間隔を置くことができず、局部的にであっても、両者が接触してしまい、「両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持される」という構成を実現できないことは技術上自明である。

したがって、技術的に見れば、本件第二発明における「長孔」とは長径と短径の差がありさえすればよいものではなく、長径が、ゲート・プレートの上面と静止頂板の下面が間隔を置いて向き合う状態に保持される構成を実現することのできる長さを有するものをいうものであって、両者が局部的であっても接触するような長さの長径のものを含まないものと解するのが相当である。

(三)  被告各装置においては、開閉金枠を閉じた状態では、上下プレートは部分的に当接しているものであり、開閉金枠を閉じた状態で上下プレートの間に間隔を置いて向き合う状態に保持することができないものであるから、そのような程度の長径の長さしかない被告各装置の軸穴10は本件第二発明の「長孔」に該当するものではない。したがって、被告各装置は構成要件〈6〉、〈7〉を充足するものではない。

5  よって、その余の点について判断するまでもなく、被告各装置は本件第二特許権を侵害しない。

六  以上によれば、原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条一項を適用して、主文のとおり版判決する。

(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官大須賀 滋は転官により、櫻林正己は転補により、いずれも署名 押印することができない。 裁判長裁判官 西田美昭)

物件目録(一)

左記の構成を有する、YPQと呼ばれるタイプの被告の製造するスライディングノズル装置(SN装置)

A 第1図に示されているように、SN装置は容器Vの底部に取りつけられ、溶融金属の通過する部分は耐火物製の上部ノズル6、上部プレート4、下部プレート5、下部ノズル7からなる。

B 耐火物を収容する金属製金枠として上部プレートを収容する固定金枠1が容器側に固定して取り付けられ、下部プレート、下部ノズルは摺動金枠3の内側に取り付けられ、さらに摺動金枠3は開閉金枠2内に収容されている。

C 摺動金枠は容器Vの底面と平行な方向に摺動可能で、上部プレート及び下部プレートに設けられた開口の位置を調節して溶融金属の容器からの流出を制御することができる。

D 第5図は開閉金枠2を開いた時の状態を示す図であるが、摺動金枠3は摺動可能に(第5図矢印の方向)開閉金枠2に取り付けられ、開閉金枠2は固定金枠1から延びたブラケット8と固定ピン〈1〉及び〈2〉によって固定金枠1に対し回動可能に結合されている。

E 開閉金枠2を閉じ、ピン〈3〉を固定金枠1の他方のブラケット8の丸孔9と開閉金枠2の軸孔10に挿入することによって固定金枠と開閉金枠が結合される。

F 丸孔9は真円であるが、軸孔10は長径が短径プラス九ミリメートル(但し、タンディッシュ用小型装置では短径プラス三乃至六ミリメートル)となっており、その長手方向は下部プレートの上面とほぼ垂直になる方向に形成されている(ピン〈1〉、〈2〉が挿入されている、開閉金枠の他の側の孔も同様の軸孔となっている)。

G プレートレンガの交換時には容器Vを横転させ、SN装置の摺動方向が垂直になるような位置をとる。第4図はプレートレンガ交換時に開閉金枠2を開いて上下プレートレンガを取り外した状態であり、第5図は上部プレート4を固定金枠1に、下部プレート5を摺動金枠3にそれぞれ固定した状態を示している。上部プレート及び下部プレートは、各金枠に固定された状態において、それぞれのプレートの摺動面が各金枠の面より標準で八ミリメートル、少なくとも五ミリメートル高い(金枠より飛び出した)位置にある(第3ーロ図参照)。

H 上部及び下部プレートは、第7~9図に示されているように側面にプレートレンガの厚みより約一〇ミリメートル狭い巾のスチールフープ16が予熱してまかれ、これによって締め付けられており、又プレートレンガの摺動面の反対側の面にはレンガの表面を完全に覆うよりやや小さいセラミックシート17と厚さ〇・二五八ミリメートルの薄鉄板18が貼りつけられている。

I 摺動金枠3は第4図に示されているように枠部19と底板20からなり、下部プレート5は第6図に示されているように摺動金枠3に対し金属ブロック21を介してレンガ押さえボルト22で続め付けて固定される。プレートレンガの薄鉄板18は金枠の底板20と接し、又スチールフープは金属ブロック21の内側面とそれによって押圧された状態で接しているが、金枠の枠部の側壁23とプレートレンガのスチールフープ16は接触しておらず両者の間には間隙が設けられている(上部プレートと固定金枠の関係も同様である)。

J 開閉金枠2を閉じ、ピン〈3〉を固定金枠1のブラケット8の丸孔9と開閉金枠2の軸孔10に挿入した後、次の手段によりプレート間に面圧がかけられる。

K 開閉金枠の両外側にはバネを収容するバネ箱11が設けられており、その中にはバネ12とバネ押し13がある。第3ーロ図は面圧をかける工程の前の状態を示しているが、この状態から固定金枠の両外側に取り付けられたトグルリンク14に結合されたトグル14’の先端をバネ押し13の溝に係合させ、トグルバー15を掛け金側と蝶番側のトグルバーソケットに挿入して、それぞれ同時にまたは順次中央に向かって押圧して、バネ押し13に所定の力を加えてバネを収縮せしめる。

トグルバーが金枠に対して垂直になる位置を超えて若干中央に向かって傾斜したところで、トグル固定作用によりバネを収縮した状態で固定する(第3ーイ図)。このバネの弾発力によって開閉金枠に対し第3図の上方向への力が作用し、プレート間に面圧が加わる。

L 右Kのような手段により、軸孔10中でのピン〈1〉、〈2〉、〈3〉の位置は軸穴の長手方向に移動し、開閉金枠を閉じた状態では間隔が開いているか或は部分的に当接していた上下プレートの摺動面が互いに密着し面圧の加わった状態となる。

(図面の説明)

第1図 SN装置の長手方向断面図

第2図 (欠番)

第3ーイ図 SN装置の横断面図(開閉金枠部分の図はバネの断面を含む図で、トグルリンクによつてバネが押された状態を示す。トグル固定作用によりプレート間の面圧が維持されるようになった後、トグルバー15は外される。)

第3ーロ図 SN装置の横断面図(トグルリンクは退避位置にあり、バネは押されていない状態を示す。)

第4図 SN装置の開閉金枠を開いた状態の斜視図(上下各プレートが装着されていない状態)

第5図 SN装置の開閉金枠を開いた状態の斜視図(上下各プレートが装着された状態)

第6図 金枠に金属ブロックを介してプレートを固定した状態の鳥瞰図

第7図 プレートレンガ外観図

第8図 プレートレンガの分解図

第9図 プレートレンガの断面図(第7図のA-Aの面における断面を示す。)

(図面中の符号の説明)

V 容器

1 固定金枠

2 開閉金枠

3 摺動金枠

4 上部プレート

5 下部プレート

6 上部ノズル

7 下部ノズル

8、8' ブラケット

9 丸孔

10 軸孔

11 バネ箱

12 バネ

13 バネ押し

14 トグルリンク

14' トグル

15 トグルバー

16 スチールフープ

17 セラミックシート

18 薄鉄板

19 摺動金枠の枠部

20 摺動金枠の底板

21 金属ブロック

22 レンガ押さえボルト

23 摺動金枠の枠部の側壁

24 防熱板

第一図

〈省略〉

第3-イ図

〈省略〉

第3-ロ図

〈省略〉

第4図

〈省略〉

第5図

〈省略〉

第6図

〈省略〉

第7図

〈省略〉

第8図

〈省略〉

第9図

〈省略〉

物件目録(二)

左記の構成を有する、YPNと呼ばれるタイプの被告の製造するスライディングノズル装置(SN装置)

A~J 被告物件目録(一)と同じ。

K 開閉金枠の両外側にはバネを収容するバネ箱11が設けられており、その中にはバネ12とバネ押し13がある。第3-ロ図は面圧をかける工程の前の状態を示しているが、この状態から固定金枠の両外側に取り付けられたアーム15の先端のボルト14をバネ押し13に係合させ、空圧工具(図示せず)により空圧をそれぞれに加えて該ボルトを回転前進させて、バネ押しを押圧して前記バネを収縮せしめる。左右のバネに所定の力が作用したところで空圧工具を止め、締められたボルトの作用によりバネを収縮した状態で固定する(第3-イ図)。

このバネの弾発力によって開閉金枠に対し第3図の上方向への力が作用し、プレート間に面圧が加わる。

L 右Kのような手段により、軸孔10中でのピン〈1〉、〈2〉、〈3〉の位置は軸穴の長手方向に移動し、開閉金枠を閉じた状態では間隔が開いているか或は部分的に当接していた上下プレートの摺動面が互いに密着し面圧の加わった状態となる。

(図面の説明)

第1図 目録(一)と共通

第2図 欠番

第3-イ図 SN装置の横断面図(開閉金枠部分の図はバネの断面を含む図で、バネが押された状態を示す。)

第3-ロ図 SN装置の横断面図(アームは退避位置にあり、バネは押されていない状態を示す。)

第4図 SN装置の開閉金枠を開いた状態の斜視図(上下各プレートが装着されていない状態)

第5図 SN装置の開閉金枠を開いた状態の斜視図(上下各プレートが装着された状態)

第6図 金枠に金属ブロックを介してプレートを固定した状態の鳥瞰図

第7図 プレートレンガ外観図

第8図 プレートレンガの分解図

第9図 目録(一)と共通

(注)第4~8図は、プレートレンガの押さえ方式に二種類あることに従い、「-1」「-2」の枝番をつけて書き分けた。被告第一二準備書面で言う「タテ押え方式」が「-1」、「コーナ押え方式」が「-2」である。

(図面中の符号の説明)

V 容器

1 固定金枠

2 開閉金枠

3 摺動金枠

4 上部プレート

5 下部プレート

6 上部ノズル

7 下部ノズル

8、8' ブラケット

9 丸孔

10 軸孔

11 バネ箱

12 バネ

13 バネ押し

14 ボルト

15 アーム

16 スチールフープ

17 セラミックシート

18 薄鉄板

19 摺動金枠の枠部

20 摺動金枠の底板

21 金属ブロック

22 レンガ押さえボルト

23 摺動金枠の枠部の側壁

24 防熱板

第3-イ図

〈省略〉

第3-ロ図

〈省略〉

第4-1図

〈省略〉

第5-1図

〈省略〉

第6-1図

〈省略〉

第7-1図

〈省略〉

第8-1図

〈省略〉

第4-2図

〈省略〉

第5-2図

〈省略〉

第6-2図

〈省略〉

第7-2図

〈省略〉

第8-2図

〈省略〉

物件目録(三)

左記の構成を有する、YPHと呼ばれるタイプの被告の製造するスライディングノズル装置(SN装置)

A~J 被告物件目録(一)と同じ

K 開閉金枠の両外側にはバネを収容するバネ箱11が設けられておりその中にはバネ12とバネ押し13がある。第3-ロ図は面圧をかける工程の前の状態を示しているが、この状態かりまず加圧治具14を作業位置に移動し加圧治具の先端に油圧ラム(図示せず)を装着してバネ押し13に所定の力を加えてバネを収縮せしめる。左右のバネに所定の力が作用したところでフック15をバネ押し13にかけバネを収縮した状態で固定し(第3-イ図)、次いで油圧ラムを取りはずし加圧治具は元の退避位置に戻される。このバネの弾発力によって開閉金枠に対し第3図の上方向への力が作用し、プレート間に面圧が加わる。

L 右Kのような手段により、軸孔10中でのピン〈1〉、〈2〉、〈3〉の位置は軸穴の長手方向に移動し、開閉金枠を閉じた状態では間隔が開いているか或は部分的に当接していた上下プレートの摺動面が互いに密着し面圧の加わった状態となる。

(図面の説明)

第1図 目録(一)と共通

第2図 欠番

第3-イ図 SN装置の横断面図(開閉金枠部分の図はバネの断面を含む図で、加圧治具が加圧時の作業位置にあり、バネが押されフックがかけられた状態を示す。)

第3-ロ図 SN装置の横断面図(加圧治具及びフックは退避位置にあり、バネは押されていない状態を示す。)

第4図 SN装置の開閉金枠を開いた状態の斜視図(上下各プレートが装着されていない状態)

第5図 SN装置の開閉金枠を開いた状態の斜視図(上下各プレートが装着された状態)

第6図 金枠に金属ブロックを介してプレートを固定した状態の鳥瞰図

第7図 プレートレンガ外観図

第8図 プレートレンガの分解図

第9図 目録(一)と共通

(注)第4~8図は、プレートレンガの押さえ方式に二種類あることに従い、「-1」「-2」の枝番をつけて書き分けた。被告第一二準備書面で言う「タテ押え方式」が「-1」、「コーナ押え方式」が「-2」である。

(図面中の符号の説明)

V 容器

1 固定金枠

2 開閉金枠

3 摺動金枠

4 上部プレート

5 下部プレート

6 上部ノズル

7 下部ノズル

8、8' ブラケット

9 丸孔

10 軸孔

11 バネ箱

12 バネ

13 バネ押し

14 加圧治具

15 フック

16 スチールフープ

17 セラミックシート

18 薄鉄板

19 摺動金枠の枠部

20 摺動金枠の底板

21 金属ブロック

22 レンガ押さえボルト

23 摺動金枠の枠部の側壁

24 防熱板

第3-イ図

〈省略〉

第3-ロ図

〈省略〉

第4-1図

〈省略〉

第5-1図

〈省略〉

第6-1図

〈省略〉

第7-1図

〈省略〉

第8-1図

〈省略〉

第4-2図

〈省略〉

第5-2図

〈省略〉

第6-2図

〈省略〉

第7-2図

〈省略〉

第8-2図

〈省略〉

物件目録(四)

スライディングノズル用耐火プレートであって、第7~9図に示されているように側面にプレートレンガの厚みより約一〇ミリ狭い巾のスチールフープ16が予熱してまかれ、これによって締め付けられており、又プレートレンガの摺動面の反対側の面にはレンガの表面を完全に覆うよりやや小さいセラミックシート17と厚さ〇・二五八ミリメートルの薄鉄板18が貼りつけられているもの。

(図面7、8は、符号の説明を含め目録(二)、(三)と、図面9は符号の説明を含め目録(一)とそれぞれ共通)

〈19〉日本国特許庁(JP) 〈11〉特許出願公告

〈12〉特許公報(B2) 昭58-41142

〈51〉Int.Cl.3B 22 D 37/00 識別記号 庁内整理番号 7225-4E 〈24〉〈44〉公告 昭和58年(1983)9月9日

発明の数 1

〈54〉溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構

審判 昭55-17583

〈21〉特願 昭51-71655

〈22〉出願 昭47(1972)6月7日

〈65〉公開 昭52-730

〈43〉昭52(1977)1月6日

優先権主張 〈32〉1971年6月7日米国(US)〈31〉150585

〈62〉特願 昭47-56787の分割

〈72〉発明者 アール・ペイジ・シヤープランド

アメリカ合衆国イリノイ州シヤムペイン・サウス・フアースト・ストリートロード3108 1/2

〈72〉発明者 ジエームス・トーマス・シヤープランド

アメリカ合衆国ペンシルバニア州ピツツバーグ・ペンハースト・ドライブ113

〈71〉出願人 ユーエスエス エンジニアーズ

アンドコンサルタンツインコーポレーテツド

アメリカ合衆国ペンシルバニア州ピツツバーググランドストリート600番

〈74〉代理人 弁理士 浅村皓 外2名

〈56〉引用文献

特公 昭35-14518(JP、B1)

米国特許 3511471(US、A)

英国特許 1193667(GB、A)

〈57〉特許請求の範囲

1 溶融金属を収容する容器の注ぎ口のまわりの密封領域に沿つて接触摺動し得る摺動面と該摺動面に対しほぼ直角方向に形成された注入開口とを有する耐火物性の摺動ゲート部材と、前記摺動ゲート部材を収容する凹所をもつた金属性のキヤリアを往復運動可能に支持し容器に着脱可能に結合されるフレームとを有し、前記フレームを容器に結合し前記キヤリアを動かして前記摺動部材の注入開口と容器の注ぎ口とを合致させたりずらしたりすることにより容器から流出する溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構において、前記摺動ゲート部材をその摺動面を除いた表面の大部分を前記キヤリアとは別体の金属包囲体で包囲し、かくして全属で包囲された摺動ゲート部材が前記キヤリアの凹所の中に該凹所の壁と金属対金属接触する状態で装着され凹所に対し容易に着脱できるようにしたことを特徴とする摺動ゲート閉鎖機構。

発明の詳細な説明

本発明は溶融スチール、アルミニウム、真ちゆう等の溶融金属を収容する容器からインゴツトケース等に注入される溶融金属の流れを制御するために容器の注ぎ口に取付ける摺動ゲート閉鎖機構に関する。

上記摺動ゲート閉鎖機構は注入開口を有する一対の耐火物から成るゲート部材を相対的に摺動せしめ両者の注入開口を合致させたりずらしたりすることにより溶融金属の流れを制御するようにしたものであるが、ゲート部材は高温の溶融金属の作用で損傷しやすくまた短時間の使用で摩耗するため頻繁に新しいものと交換することが必要である。その頻度は少くとも1日1回は交換しなければならないというほどの頻度である。従つてこの摺動ゲート閉鎖機構においては稼働率を高めるためにゲート部材の交換作業の能率を如何に高めるかが重要な課題である。

上記摺動ゲート閉鎖機構は容器に固定された基板の凹所に一方のゲート部材を取付け、他方のゲート部材を基板に対し着脱できろフレームに支持され駆動装置により往復動し得るキヤリアの凹所に取付けるようになし、基板からフレームを外して各ゲート部材が交換できるように構成されている。しかし従来のものでは各ゲート部材を基板またはキヤリアの凹所から取外しまた取付ける作業にかなりの時間と熟練を要することが問題となつている。これはゲート部材を凹所に対しモルタルを使用して強固に固定しなければならないからである。このモルタルの使用は次の理由で実際上欠くことのできないものである。

即ち先づ第1にゲート部材は高温の溶融金属に触れると熱衝撃を受けてひび割れを生ずるためモルタルで固定しておかないとひび割れ部分が拡がつて溶融金属の洩れを生ずるからである。

第2に2枚のゲート部材の全厚は摺動面に面圧を与えるスプリング力に関係するが摺動面の円滑摺動を保証しながら溶融金属の洩れを防ぐような最適の面圧をスプリング力の調整で与えることは非常に面倒であるのでスプリング力の調整を不要とするためにはゲート部材の厚さが常に一定していなければならない。しかしながら耐火物から成るゲート都材を正確に一定寸法に成形することは極めて困難であるため成形誤差をモルタルによつて調整することが必要となる。

第3にモルタルが耐火物製のゲート部材と金属製の基板またはキヤリアとの熱膨脹の差を吸収するクツシヨンの作用をなすことができるからである。

以上のような理由でゲート部材は基板またはキヤリアの凹所にモルタルで固定されているために、これを新しいものと交換するためにはモルタルをくずしてゲート部材を凹所から取出し、更に凹所から完全にモルタルを取除いた後再び凹所にモルタルを敷きその上に新しいゲート部材を載せて位置および高さを調整してから長時間加熱してモルタルを硬化させ更に冷却するのを待たねばならない。特にキヤリアに固定されているゲート部材を交換するためにはキヤリアをフレームから外しクレーンで別の場所に運び上述の手順でゲート部材を交換し新しいゲート部材を取付けたキヤリアを再びクレーンで容器に運びフレームに取付けるという作業が必要である。この作業はキヤリアが重量物であるために慎重なクレーン操作が必要である上フレームへの取付けには特別な治具を必要とし、更に前述の通りモルタルを硬化させるために長時間加熱してから自然冷却するまでの間作業を中断しなければならないために非常に労力と時間を費す作業となつている。この交換作業のために費される稼働時間の損失を短縮するために予め別のキヤリアに新しいゲート部材をモルタルで固定させたものを用意しておきゲート部材の交換に際しキヤリアごと交換する方法もとられているが、この方法はモルタルの加熱、冷却時間が節約できるとしても依然としてキヤリアの取外し、運搬、取付けに要する労力と少なからざる時間が残されており、更に1個の容器に対して余分のキヤリアを用意しておかなければならないという問題がある。

本発明は上記摺動ゲート閉鎖機構において、特にキヤリアに取付けるゲート部材(以下摺動ゲート部材と称す)の交換作業を短時間で極めて簡単にできるように改良することを目的とするものである。

本発明は従来のように摺動ゲート部材をキヤリアの凹所にモルタルで固定する代りに摺動ゲート部材を摺動面を除き大部分全属包囲体で包囲することを特徴とする。したがつて摺動ゲート部材はキヤリアの凹所に対しては金属包囲体を介して金属対金属接触をなしているので金属包囲と一体のまま凹所に対し容易に着脱できる。金属で包囲された摺動ゲート部材は交換現場とは別の専用工場で一貫生産できるので寸法精度を非常に高く維持できると共に生産性を高めることができる。交換現場では容器の基板からフレームを外しキヤリアの凹所から摩耗した金属包囲体付ゲート部材を取出し新しい金属包囲体付ゲート部材を嵌め込みフレームを基板に結合する作業を必要とするだけでモルタル作業を必要としないので少数の作業員で極めて短時間で交換作業を行うことができる。

本発明の実施例を添付図面を参照して説明することにする。

本発明を施した摺動ゲート閉鎖機構が透視図で第1図に示してある。この場合底部注ぎとりべとして図示される容器Vは外金属殼を有し、該容器Vの基部には基板66が固着させてあつてこれに摺動ゲート・バルブ即ち摺動ゲート閉鎖機構5が取付けてある。摺動ゲート・バルブは総体的に主フレーム13と、一対のトグルとで構成され、図示されているヒンジ・トグル34は、後述するように耐火ゲート部材の取替えに当つて主フレーム13を開閉する。摺動ゲート・バルブ5の下部から耐火注ぎノズルが延び、これは溶融金属Mをインゴツト1に流入させる。固定の熱シールド24が摺動ゲート・バルブ5の底部に設けられ、また熱シールド24に対し摺動する熱および飛散物のシールド25が耐火ノズル22を包囲して設けられ、これは耐火ノズル22と共に移動して摺動ゲート・バルブ5の内部の熱および飛散物を遮断する作用をする。

摺動ゲート・バルブ5はコントロール・スイツテ60でコントロールされる液圧シリンダー16により作動される。コントロール・スイツチ60はシリンダー16に圧力流体を供給すべく液圧管路62を作動し、シリンダー16はラム・シールド64の内部の図示されないラム・ロツドを介して摺動ゲート・バルブ5の作動部材を駆動する。空気ホース61が設けられていて液圧シリンダー16を冷却するためにこれに空気を連続的に流し且つ、摺動ゲート・バルブ5の内部にも流すようになつている。液圧シリンダー16、空気ホース61、液圧管路62およびコントロール部60を含む全装置はそれを回転することにより取はずすことができ、そのため、ラム・シールド64はその端都に摺動ゲート・バルブ5の連結部63と共動する部材を有し、そこから駆動要素を取はずすことができる。この簡単な取はずしは、駆動装置を別にしてトグル機構を釈放し摺動ゲート・バルブ5を開いてその中の内部耐火ゲート部材を取換える場合に重要になる。又容器Vに溶融金属を満たしている時、シリンダーはこぼれ出る溶融金属による損傷を防止すべく取はずされる。

第2図において、容器Vは外金属殻1および耐火ライニング2を有している。前述のようにこの特定の容器は底注ぎ容器であるが、説明が進むにつれて摺動ゲート・バルブ装置5の側注ぎ取付部も容易に形成できることが明らかになるであろう。2部片からなる筒ブロツク3が耐火ライニング2の中央部に設けられ、その中央に作業ノズル4を位置決めし、このノズルはブロツク3の底部および耐火ライニング2および容器Vの金属殻1を貫ぬいて延びる。作業ノズル4、特に第2図に示される安全ノズル6の機能は摺動ゲート・バルブ取付けプレート即ち基板66の位置、方向だけでなくその形体と統合される。取付けプレートは第4図に示されるようにボルト26により注ぎ容器Vの金属殻1に取付けられる。第2図において、取付けプレート66は安全ノズル・カラー68を有し、これは安全ノズル6の現状リング7に接している。安全ノズル6の現状リング8も耐火物から成る一方のゲート部材即ち静止頂板9と係合するように下方に延びている。こうしてラビリンス型式の結合部が摺動ゲート・バルブ5の取付けプレート66、静止頂板9の上面、およびブロツク3の間に形成される。

作業ノズル4は通常安価な耐火材料で製造され容易に取換えることができる。一方安全ノズル6は高強度で高密度の材料で製造される。従つて、安全ノズル6が形成される材料は作業ノズル4の破壊の場合に追加強度を与えるだけでなく、その高い伝導性によりそれに接触する溶融金属のくつつき(freeze)を起こす傾向がある。通常の作業では安全ノズル6は、容器Vの耐火ライニング2が取換えられる時のみ取換えられる。もちろん破損の場合はすぐに取換えても良い。そのような取換えの場合、安全ノズル6と作業ノズル4は通常同時に取換えられる。

第2図において、固定頂板9は安全ノズル6の現状リング8を受け入れるように形成れた中央現状溝を含む。金属包囲体10が静止頂板9を包囲し、そしてこれを頂板9に係合させるべくその周辺でクリンプされている。金属包囲体10にはセラミツク同志の結合を行なわしめるために現状リング8に隣接して開口が設けてある。金属包囲体と頂板9との間には通常寸法の不規則を整えるために好ましくはモルタル充填剤が挿入される。このようにして頂板の耐火材料は金属包囲体で包囲されモルタルで固定されているのでひび割れが入る場合にもそれはその位置に維持される。

他方のゲート部材即ち摺動ゲート部材12と付随ノズル22も同様に金属包囲体70内に包囲され好ましくはモルタルで固定される。金属包囲体70は好ましくは下端19および頂部周辺18で折り曲げられる。従つて、静止頂板9と摺動ゲート12の両方は金属で包囲された耐火物である。摺動ゲート12は好ましくは3つの部片で構成される。特に図示のようにノズル22は摺動ゲート12の注入口部として設けられた耐食性の高い耐火内側スリーブ21と伝導性の低い外側の耐火部分から構成される。静止頂板9が形成される材料に匹敵する材料の耐摩耗性頂板20が摺動ゲート12上に設けられる。

ここで高い耐食性耐火物というのは、通常85%から95%の高いアルミナ含有量の物質である。これらの材料は高密度を有し、高温度で焼成される。これら材料の表面はしばしば正確な形状に研摩されなければならない。一方、ブロツク3に用いられるような裏打ち耐火物、および摺動ゲート12の耐食性耐火スリーブ21を包囲する耐火ノズル22は通常、鋳造可能な低アルミナの多孔質構造体で形成される。鋳造可能な溶融シリカ物質も使用できるが、これは鋳造可能な低アルミナの多孔質構造体よりいくらか高価であり、あまり適当でない。作業ノズル4を安全ノズル6内に固定するのにモルタルが用いられる。安全ノズル6と頂板9との接合はガスケツト又はモルタルを用いないでそのまま行なわれ、その固着性は部品の相互結合、耐火材料の違つたタイプおよび高温注入条件における耐火材料の反応で左右される。

頂板9および摺動ゲート部材12の金属包囲体の寸法は夫々取付プレート66およびキヤリア14の凹所に隙間なく嵌まり込むことのできる寸法である。これ等のゲート部材は金属で包囲されているので夫々の凹所に挿入するだけで取付けられ、従来のようにモルタルを使用して凹所内に結合する必要はない。即ち第5図のように主フレーム13を開き先づ頂板9を取付プレート66の凹所の中に嵌め込む。嵌め込まれた頂板9が凹所から脱落することを防ぐためには適当な固定装置が使用される。そのような固定装置には止めボルト、カムロツク等が使用されまた取付プレート66に磁石を使用して固定することもできる。次に摺動ゲート部材12を主フレーム13の内側に配置されたキヤリア14の凹所内に嵌め込み主フレーム13を第2図乃至第4図に示すように作業位置に閉じることにより両ゲート部材は所定の場所に取付けられる。また両ゲート部材を交換するためには単に主フレーム13を開き各ゲート部材を夫々の凹所から取出し新しいものと交換するだけでよい。またこの点において頂板9および摺動ゲート部材12の形状を往復動の軸線とこれに直角な軸線の両方に対して対称になるように、すると都合がよい。このようにすると何回かの注入作業によつて摺動ゲート部材およびまたは頂板の注入開口から始まる侵食が一方向のみに拡がり他の方向には侵食がないか侵食があつても使用に耐える程度であることが観察されたとき、ゲート部材の向きを逆にすることによつて更に続けて何回かの注入作業に使用することができる。

摺動ゲート・バルブの中で互に摺動する耐火材料の2つの面間には適度の圧力関係を与えることが不可欠である。即ち第5図において、互に摺動密封係合する静止頂板9と摺動ゲート12の相対向した耐火面Rに適度の面圧を与えることが必要である。これらは前述の高い耐食性の耐火面である。2つの耐火面Rの間の圧力関係を維持するため、摺動ゲート・バルブ5内に多数の負荷パツド15が設けてある。これら負荷パツドは摺動ゲート12の金属包囲体70の下面に当つており、静止注入開口の周辺の回りにそのような多数の負荷パツド15が設けられるので、これらは耐火面Rの密封圧力を一様に高める現状の負荷領域をたえず形成する。第5図に示されるように摺動ゲート12の下部の下面に接する負荷パツド15は、摺動ゲート12を囲み且つ主フレーム13内で往復動するキヤリア14内に設けられる。現状の負荷領域は、取付けプレート66に当つていて、しかもこのプレート66に設けてある凹所内に収容されている静止頂板9の注入開口の回りに延びる。

第2、3図において、ラム又はピストン・ロツド17は液圧シリンダー16により作動され、そしてこれは摺動ゲート・キヤリア14に直接連結し、前記キヤリアはその内部に多数の連結された空気室75を有し、そして摺動ゲート12の下面に当る多数の負荷パツド15を支持する。第2図において、ロツド17とそれに関連する液圧シリンダー16内のビストン54は左側位置にあり、摺動ゲート12の後部は静止頂板9の注ぎ口を閉じる。空気ホース61は中空ロツド17の端部に連結され、空気の一定の流れを多数の空気室75に配送し、それによりキヤリア14と負荷パツド15を負荷パツド・スプリング71が永久に変形する温度より低い温度に冷却する。

注入時の摺動ゲート12の位置が第3図に示される。液圧ピストン54は右方位置にあり、而してロツド17は空冷式の摺動ゲート・キヤリア14をすべての注入ノズルが軸方向に整合する位置に引張る。引張り作用中いつでも負荷パツド15は摺動ゲート12にたえず接しており、摺動ゲート12の注入ノズルの周辺で摺動ゲートの上面Rを静止頂板9の下面Rに弾性的に押圧する。

この発明の目的を達成するには摺動ゲート部材12を容易に取はずし、取かえ、又は再挿入するために主フレーム13が取付けプレート66に対し容易に着脱できることが重要である。このため第5図には主フレーム13が取付けプレート66に対し蝶番式に開閉できることが示されており、そして特に第6図に一例として示されるように、これはヒンジ・トグル機構34とラツチ・トグル機構33とを使用すると便利である。主フレーム13とその内部に保持された空冷式摺動ゲート・キヤリア14はヒンジ・トグル34の回りに第5図に示す開位置まで揺動され、静止頂板9は取付けプレート66に設けられた凹所に挿入され、飛散物シールド25および摺動ゲート部材12は主フレーム13内に挿入され、それから機構が閉位置へ揺動し、ラツチ・トグル33が作動されて負荷パツド15のたわみ作用により耐火面Rを接触させ、同時に摺動ゲート・バルブ5は連結器63を介して液圧シリンダー16と連結されるときはこれによつて作動される状態にされる。

第6図において、取付けプレート66は相対向した垂下トグル支持体27を有する。各トグル支持体27はピボツト保持ピン28を有し、これにトグル・リンク29が回動自在に取付けてある。第6図の右側部分でわかるように、トグル・リンク291まその下部にラツチ・トグル33を支持するピボツト・ピン30を備える。ラツチ・トグル33は主フレーム13の外側部分に取付けられたラツチ・ピン31に係合するようになつている。ヒンジ・トグル34は同様にリンク29とピボツト・ピン30により垂下トグル支持体27に取付けられる。

第4図において、各トグル33、34の作動は各トグルにトグル・レバー・ソケツト36を設け、固定熱シールド24にトグル・レバー切欠部56を設けることにより達成され、トグル・レバー57(第4図に点線で示される)はトグル・レバー・ソケツト36に挿入され、トグル固定作用を逹成すべく互に中央に向つて押圧され、このトグル固定作用は、負荷パツド15を収容する空冷式摺動ゲート・キヤリア14を介して主フレーム13に作用する負荷パツド15の圧力によつて維持される。主フレーム13の一端の動きはプラケツト35の細長い孔35’内に制限される。このように構成してあるので、ラツテ・トグル33を釈放した直後の主フレーム13の運動はその初期においては容器からまつすぐに離れる方向に行われ、摺動ゲート12の耐火面Rと頂板9の耐火面Rとはほとんど互に平行に維持されたまま離れる。その後、トグル・レバー・ソケツト36に挿入されたトグル・レバー57の作用によりラツテ・トグル33が脱離される時にヒンジ・トグル34の揺動作用が続けられる。摺動ゲート・バルブ5を開閉する作用を再び考えると負荷パツド15の機能が耐火面Rの間に圧力接触を維持するだけでなく摺動ゲート・バルブ5をその作動状態に閉鎖するためにトグル装置33、34と共働するたわみ装置の作用もすることが明らかになる。

本発明は以上のように構成され、ゲート部材、即ち頂板9または摺動ゲート12の摩耗または損傷により交換が必要になつたときには、トグル装置33、34を釈放して第5図および第6図に示す如く主フレーム13を開放しゲート部材を金属包囲体ごと取出し、新しい金属包囲体付きゲート部材を所定の場所に嵌め込んだ後、主フレーム13を取付けプレート66に対して閉鎖しトグル装置33、34を使用して固定すればよいのでゲート部材の交換は極めて簡単である。

従来ではゲート部材を少くとも摺動ゲート12はキヤリア14にモルタルで固定し厚さの調整とひび割れによる崩懐を防止しなければならなかつたためゲート部材の交換に際してはゲート部材をキヤリアごと外し作業現場でモルタルをくずしてゲート部材をキヤリアから取出し新しいゲート部材をキヤリアに取付けモルタルで固定することが必要とされたため交換に非常に長時間を要すると共にモルタル調整に非常な熟練を必要としていたが、本発明ではこれ等の時間と熟練を要する作業を別の工場で行うことができるので交換作業自体は極めて能率化され注入容器の稼動率を著しく向上することができる。

なお以上の実施例においては頂板9と摺動ゲート部材12の両者が容易に交換できる例を示したが、ある場合には摺動ゲート部材のみが容易に交換できるように本発明を適用してもよい。また通常実施例に示す如く金属包囲体と摺動ゲート部材の間にモルタルを充填し寸法誤差の調整と摺動ゲート部材の崩懐を防ぐことが好ましいが、摺動ゲート部材の成形において寸法精度の高いものが得られる場合にはモルタルを介在させることなく摺動ゲート部材を金属包囲体で包囲しこれに直接固定するだけで本発明は所期の自的を達成できることは明らかであろう。

以上要約すると本発明は摺動ゲート部材を金属包囲体で包囲することに発明思想が存在するものであり、これにより摺動ゲート部材の交換作業の能率を従来に比べて格段と向上することができ産業の発達に寄与するところは極めて高い。

図面の簡単な説明

第1図はインゴツト・モールドに溶融鋼を注入するための本発明の摺動ゲート閉鎖機構又は注入バルブを用いるべく改造した底注入容器の斜視図、第2図は第1図に示す注入バルブの遮断位置を示す長手方向断面図、第3図はバルブの開位置又は注入位置を示す注入バルブの長手方向断面図、第4図はキヤリアの流路に隣接した断面に沿う横断面図、第5図は注入バルブが耐火ゲート部材の交換のために開かれた第1図に示すバルブの一部分解斜視図、第6図は第5図に示す注入バルブを開位置で示す第4図と同じ高さと位置からみた拡大断面図である。

V……容器、66……基板、13……主フレーム、14……キヤリア、9……頂板(ゲート部材)、12……摺動ゲート(ゲート部材)、10……金属包囲体(金属ケース)、70……金属ケース。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

第6図

〈省略〉

第4図

〈省略〉

第5図

〈省略〉

2部門 (2)

特許法第64条の規定による補正(昭和61年9月26日の掲載

公告特許番号

58-41142

昭和51年特許願第71655号(特公昭58-41142号昭55-17583号、昭58.9.9発行の特許公報2(2)-29〔183〕号掲載)については特許法第64条の規定による補正があつたので下記のとおり掲載する。

特許第1324716号

Int.Cl.4B 22 D 37/00 識別記号 庁内整理番号 7139-4E

1 「特許請求の範囲」の項を「1 溶融金属を収容する容器の注ぎ口のまわりの密封領域に沿つて接触摺動し得る摺動面と該摺動面に対しほぼ直角方向に形成された注入開口とを有する耐火物性の摺動ゲート部材と、前記摺動ゲート部材を収容する凹所をもつた金属性のキヤリアを往復運動可能に支持し容器に着脱可能に結合されるフレームとを有し、前記フレームを容器に結合し前記キヤリアを動かして前記摺動ゲート部材の注入開口と容器の注ぎ口とを合致させたりずらしたりすることにより容器から流出する溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構において、前記フレームは前記容器に対して揺動可能に取付けられて前記容器との結合が外されたとき前記耐火物性の摺動ゲート部材を露出する開放位置に揺動できるようになつており、前記摺動ゲート都材をその摺動面を除いた表面の大部分を前記キヤリアとは別体の金属包囲体で包囲し、かくして金属で包囲された摺動ゲート部材が前記キヤリアの凹所の中に該凹所の壁と金属対金属接触する状態で装着され、前記フレームが開放位置に揺動されるとき、凹所に対し容易に着脱できるようにしたことを特徴とする摺動ゲート閉鎖機構。」と補正する。

2 第4欄17-18行「キヤリア」を「金属性のキヤリア」と補正する。

3 第9欄9行「蝶番式に開閉できる」を「蝶番式に揺動可能に取付けられ揺動することにより開閉できる」と補正する。

4 第9欄15行「開位置」を「摺動ゲート部材を露出する開放位置」と補正する。

〈19〉日本国特許庁 〈11〉特許出願公告

特許公報 昭52-22900

〈51〉Int.Cl2. B 22 D 37/00 B 22 D 11/10 識別記号 〈52〉日本分類 11 C 1 11 B 091 庁内整理番号 6441-39 7605-39 〈44〉公告 昭和52年(1997)6月21日

発明の数 2

〈54〉溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構

〈21〉特願 昭50-48550

〈22〉出願 昭47(1972)6月7日

公開 昭51-84739

〈43〉昭51(1976)7月24日

優先権主張 〈32〉1971年6月7日〈33〉アメリカ国〈31〉150585

〈62〉特願 昭47-56787の分割

〈72〉発明者 アール・ペイジ・シヤープランド

アメリカ合衆国イリノイ州シヤムペイン・サウス・フアースト・ストリート・ロード3108 1/2

同 ジエームス・トーマス・シヤープランド

アメリカ合衆国ペンシルバニア州ピツツバーグ・ペンハースト・ドライブ113

〈71〉出願人 ユーエスエス・エンジニアーズ・アンド・コンサルタンツ・インコーボレーテツド

アメリカ合衆国ペンシルバニア州ピツツバーグ・グラント・ストリート600

〈74〉代理人 弁理士 浅村皓 外3名

〈57〉特許請求の範囲

1 耐火頂板を収容しており、この頂板に設けた開口が容器の注入開口と重なり合つている前記容器の注入開口を通る溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構であつて、この機構が耐火グート・プレートを有し、このプレートが前記頂板に接触して前記頂板の開口のまわりの密封する領域に沿つて制御位置へ摺動可能であり、前記制御位置において選択されたゲート・プレートの開口または開口のない部分が前記頂板の開口と重なり合つたとき液体金属の流れをそれぞれ許容しまたは停止させるようになつており、さらに前記ゲート・プレートを収容しかつ支持している構造体と、圧縮されると弾発力を前記ゲート・プレートに作用させるように前記構造体に配設されたばね装置とを有するものにおいて、前記構造体の一方の側に間隔を置いて固着された複数個のプラケツトを有し、これらのプラケツトのそれそれには前記容器に固定されたピン28が嵌まり込んでいる長孔35’が形成されており、この長孔の長手方向の軸線は前記ゲート・プレートの上面が前記頂板の下面とほぼ平行になつたときには該下面に対してほぼ垂直になるようになつており、また前記容器に取り付けたラツチ装置があつてこの装置を前記構造体の他方の側に固着した部材に係合させたりこの係合を解除したりすることによつて前記ゲート・プレートの上面と前記頂板の下面とが前記両面の間にある間隔を置いて向かい合う関係に解放可能に保持されるようになつており、さらにまた前記構造体がラツチされているときに前記ピンを前プラケツトの長孔に沿つて摺動させて前記ばね装置の弾力に抗して前記ゲート・プレートを前記頂板に接近させて密着させる装置があり、ラツチを解除して前記構造体を開いた位置に揺動させると前記ゲート・プレートと前記頂板とに接近できるようになつていることを特徴とする摺動ゲート閉鎖機構。

発明の詳細な説明

この発明は容器の注入開口からの溶融スチール、アルミニウムおよび真ちゆうを含む溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構に関する。

この発明に係わる装置は米国特許第3352465号明細書に「底注入容器の耐火閉鎖部材」として示されている。この特許は、或る物が孔を有さず、他の物が注入開口を有する複数個の摺動ゲート・プレートを容器の底部の注入開口に隣接して連続的に位置させるような底注入法および構造を開示している。関連した他の従来技術としては米国特許第3454201号、同第311902号、同第1507852号明細書がある。

周知の閉鎖機構はすべて種々の欠点を有する。例えば、米国特許第1507852号においては確実なたわみ密封が与えられない。米国特許第3454201号においても同様にたわみ密封に対する対策がなく、耐火部材の面の変化を調整するたわみ装置もない。米国特許第311902号および同第3352465号は、2つの耐火部材を密封するたわみ装置を開示しているが、たわみ支持体は縁を支持するものであつて接触面に亘つて分布されていない。

この分野において直面する問題は耐火部材間の作業接触面における磨耗を調整することである。この問題は耐火部材が幾分曲がりそして、密封を調整せねばならないような表面の不完全さをかならず有しているという性質によつて一層複雑になる。

本発明の目的は、摺動するゲート・プレートと容器に固定した頂板とに接近して、これらの点検、修理、取替えを行うためにゲートを開閉するに際して、前記両者を接近させて密着させまたは離隔させる操作を2段階で行うようにし、前記両者を局部的に当接させることなく一様に密着させて耐火物に損傷を与えないように構成した摺動ゲート閉鎖機構を提供することにある。

この発明の特徴は注入中何回となく往復動させることのできる往復動ゲート・プレートを提供す。例えば、容器に35トン充填すると20回の遮断が必要であり、そして1回の溶融物が更に多くなれば70回位の遮断が必要になる。

本発明によれば、耐火頂板を収容しており、この頂板に設けた開口が容器の注入開口と重なり合つている前記容器の注入開口を通る溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構であつて、この機構が耐火ゲート・プレートを有し、このプレートが前記頂板に接触して前記頂板の開口のまわりの密封する領域に沿つて制御位置へ摺動可能であり、前記制御位置において選択されたゲート・プレートの開口または開口のない部分が前記頂板の開口と重なり合つたとき液体金属の流れをそれぞれ許容しまたは停止させるようになつており、さらに前記ゲート・プレートを収容しかつ支持している構造体と、圧縮されると弾発力を前記ゲート・プレートに作用させるように前記構造体に配設されたばね装置とを有するものにおいて、前記構造体の一方の側に間隔を置いて固着された複数個のプラケツトを有し、これらのプラケツトのそれぞれには前記容器に固定されたピンが嵌まり込んでいる長孔が形成されており、この長孔の長手方向の軸線は前記ゲート・プレートの上面が前記頂板の下面とほぼ平行になつたときには該下面に対してほぼ垂直になるようになつており、また前記容器に取り付けたラツチ装置があつてこの装置を前記構造体の他方の側に固着した部材に係合させたりこの係合を解除したりすることによつて前記ゲート・プレートの上面と前記頂板の下面とが前記両面の問にある間隔を置いて向かい合う関係に解放可能に保持されるようになつており、さらにまた前記構造体がラツチされているときに前記ピンを前記プラケツトの長孔に沿つて摺動させて前記ばね装置の弾力に抗して前記ゲート・プレートを前記頂板に接近させて密着させる装置があり、ラツチを解除して前記構造体を開いた位置に摺動させると前記ゲート・プレートと前記頂板とに接近できるようになつている摺動ゲート閉鎖機構が提供される。

この発明は、それぞれ注入開口を有する2つの耐火プレートを合致させ或はずらすべく移動させる場合、たわみ圧力が可動プレートの周囲内で注入開口を取り囲む多数の位置において可動プレートに加えられるならば効果的な流体密封を維持させることができるということに基いたものである。キヤリア内の多数のたわみ部材が必要な圧力を加える。一実施例として圧力を加えるべく線型にたわむコイル・スプリングを使用する。このスプリングは注入中その作業温度が260℃(500°F)を越えないようにたえず空冷され、それにより高温で生じるような永久ひずみなしにスプリングの一定のたわみ作用を保証する。容器に取付けた固定耐火面はこれと対向した耐火面を有する摺動部材と弾性的に接し、摺動部材の面と固定耐火面は共に整合する注入開口を取り囲んでいる。

液圧駆動装置が往復動のために利用され、たわみ部材のスプリングを冷却する同し空気流で冷却される。シールドと密封は適当な位置に設けられる。別の実施例では、固定底部プレートが延長ノズルを保持し、これは浸入用注入管に連結され、遮断位置において、ゲート・プレートからの溶融金属の排出がもたらされる。

この発明の実施例を図面を参照して説明することにする。

この発明の概要が透視図で第1図に示してある。この場合底部注ぎとりべとして図示される容器Vは各金属殼を有し、該容器Vの基部には基板66が固着させてあつてこれに摺動ゲート・バルブ5が取付けてある。摺動ゲート・バルブは総体的に主フレーム13と、一対のトグルとで構成され、図示されているヒンジ・トグル34は、後述するように耐火部品の取替えに当つて主フレームを開閉する。摺動ゲート・バルブ5の下部から耐火注ぎノズル22が延び、これは溶融金属Mをインゴツト1に流入させる。固定の熱シールド24が摺動ゲート・バルブ5の底部に設けられ、摺動熱および飛散シールド25が内側に耐火ノズル22を包囲して設けられ、耐火ノズル22と共に移動して摺動ゲート・バルブ5の内部の追加的な熱および飛散シールドの作用をする。

摺動ゲート・バルブ5はコントロール・スイツチ60でコントロールされる液圧シリンダー16により作動される。コントロール・スイツチ60はシリンダー16に圧力流体を供給すべく液圧管路62を作動し、シリンダー16はラム・シールド64の内部の図示されないラム・ロツドを介して摺動ゲート・バルブ5の作動部材を駆動する。空気ホース61が設けられていて液圧シリンダー16を冷却するためにこれに空気を連続的に流し且つ、摺動ゲート・バルブ5の内部にも流すようになつている。液圧シリンダー16、空気ホース61、液圧管路62およびコントロール部60を含む全装置はそれを回転することにより取はずすことができ、その結果、ラム・シールド64はその端部に共働部材を有し、これは摺動ゲート・バルブ5の連結部63と共働し、そこから駆動要素を取はずす作用をする。この簡単な取はずしは、トグル機構が摺動ゲート・バルブ5を開いてその中の内部耐火部品を取換えるべく開かれ、且つ駆動装置を取出す場合に重要になる。又容器Vにその溶融装入物を満たしている時、シリンダーはこぼれることによる損傷を防止すべく取はずされる。

第2図において、溶器Vは外金属殼1および耐火ライニング2を有している。前述のようにこの特定な容器は底注ぎ容器であるが、説明が進むにつれて摺動ゲート・バルブ装置5の側注ぎ取付部も容易に形成できることが明らかになるであろう。2部片からなる筒ブロツク3が耐火ライニング2の中央部に設けられ、その中央に作業ノズル4を位置決めし、このノズルはブロツク3の底部および耐火ライニング2および容器Vの金属殼1を貫ぬいて延びる。作業ノズル4、特に第2図に示される安全ノズル6の機能は摺動ゲート・バルブ取付けプレート66の位置、方向だけでなくその形体と統合される。取付けプレートは第4図に示されるようにボルト26により注ぎ容器Vの金属殼1に取付けられる。第2図において、取付けプレート66は安全ノズル・カラー68を有し、これは完全ノズル6の環状リング8に接している。安全ノズル6の環状リング7も静止頂板9と係合するように下方に延びている。こうしてラビリンス型式の結合部が摺動ゲート・バルブ5の取付けプレート65、静止頂板9の上面、およびブロツク3の間に形成される。

作業ノズル4は通常安価な耐火材料で製造され容易に取換えることができる。一方安全ノズル6は高強度で高密度の材料で製造される。従つて、安全ノズル6が形成される材料は作業ノズル4の破壊の場合に追加強度を与えるだけでなく、その高い伝導性によりそれに接触する溶融金属のくつつき(freeze)を起こす傾向がある。通常の作業では安全ノズル6は、容器Vの耐火ライニング2が取換えられる時のみ取換えられる。もちろん、破損の場合はすぐに取換えても良い。そのような取換えの場合、安全ノズル6と作業ノズル4は通常同時に取換えられる。

第5図において、頂板9は取付けプレート66の凹所内に嵌合す。しかる後摺動ゲート12が摺動ゲート・バルブ5の主フレーム13の内側に配置され、そして第2図に示されるように作業状態に閉じられる。この点において、満足される頂板9の形体は好ましくは往復動の軸線および往復動の軸線と直角な軸線の両方に対して対称である。同様に、摺動ゲート12も往復動の軸線および往復動の軸線と直角な軸線の両方に対して対称である。従つて、一回以上の注入がなされた後、そして摺動ゲートおよび/又は頂板の注入開口からの侵食がそれ以上の使用を害しないことが観察されるとき、特に板が逆にされる時、その一方又は両方は容易に逆にされてさらに注入するのに使用される。

第2図において、固定頂板9は安全ノズル6の環状リング8を受け入れるように形成された中央環状溝を含む。金属包囲体10は静止頂板9を包囲し、そしてこれを板に係合させるべくその周辺でクリンプされている。金属包囲体10にはセラミツク同志の結合を行なわしめるために環状リング8に隣接して開口が設けてある。金属包囲体と頂板9との間には不規則を整えるためにモルタル充填剤が挿入される。このようにして頂板の耐火材料は包囲されているのでひび割れが入る場合にもそれはその位置に維持される。

摺動ゲート12と付随ノズル22も同様に金属シールド(保護体)70内に包囲され、シールド70は好ましくは下端19および頂部周辺18で折り曲げられる。従つて、静止頂板9と摺動ゲート12の両方は金属で包囲された耐火物である。摺動バルブ12は好ましくは3つの部片で構成される。特に図示のようにノズル22は摺動バルブ12の注入口部として設けられた耐食性の高い耐火内側スリーブ21と低伝導性の低い外側の耐火部分から構成される。静止頂板9が形成される材料に匹敵する材料の耐磨耗性頂板20が摺動ゲート12上に設けられる。

ここで高い耐食性耐火物というのは、通常85%から95%の高いアルミナ含有量の物質である。これらの材料は高密度を有し、高温度で焼成される。これら材料の表面はしばしば正確な形状に研摩されなければならない。一方、ブロツク3に用いられるような裏打ち耐火物、および摺動バルブ12の耐食性耐火スリーブ21を包囲する耐火ノズル22は通常、鋳造可能な低アルミナの多孔質構造体で形成される。鋳造可能な溶融シリカ物質も使用できるが、これは鋳造可能な低アルミナの多孔質構造体よりいくらか高価であり、あまり適当でない。作業ノズル4を安全ノズル6内に固定するのにモルタルが用いられる。安全ノズル6と頂板9との接合はガスケツト又はモルタルを用いないでそのまま行われ、その固着性は部品の相互結合、耐火材料の違つたタイプおよび高温注入条件における耐火材料の反応で左右される。

この発明によれば摺動ゲート・バルブの中で互に摺動する耐火材料の2つの面間の圧力関係を提供する。特に第5図において、互に摺動密封係合する耐火面Rが静止頂板9と摺動ゲート12の相対向した面にある。これらは前述の高い耐食性の耐火面である。2つの耐火面Rの問の圧力関係を維持するため、摺動ゲート・バルブ5内に多数の負荷パツド15が設けてある。これら負荷パツドは摺動ゲート12の包囲体の下面に当つており、静止注入開口の周辺の回りにそのような多数の負荷パツド15が設けられるので、これらは耐火面Rの密封圧力を一様に高める環状の負荷領域をたえず形成する。第5図に示されるように摺動ゲート12の下部の下面に接する負荷パツド15は、摺動ゲート12を囲み且つ主フレーム13内で往復動するキヤリア14内に設けられる。環状の負荷領域は、取付けプレート66に当つていて、しかもこのプレート66に設けてある凹所内に収容されている静止頂板9の注入開口の回りに延びる。

この発明は、一方が開口を備え、他方が閉鎖部を備えている摺動ゲート・プレートによる閉鎖機構に適用できる。新たなプレートを引出し用ラムの前方に置き、先のプレートが次のプレートによる移動で単純に落下するよう別々のプレートが往復動ラムで連続的に次々に移動される。このような閉鎖機構は米国特許第3352465号明細書に示されている。この発明をこのタイプの閉鎖機構に適用するには、キヤリアは往復動される代りに固定位置を有し、ラムは新たなプレートに係合する。ゲート・プレートは固定キヤリアを横切つて移動される。

第16図に詳細に示されるように各負荷パツド15はシヤンク(柱部)69を含み、その頭部69aには凸状支持面67が設けられる。コイルスプリング71が頭部68の下部に設けられ、シヤンク69を包囲する。スプリング71はカラー72により弾圧されている。カラー72はリング76を有し、これは摺動ゲート・キヤリア14の収容壁に摩擦係合し、シヤンク69を上方に押圧すべく収容壁棚状部に載つている。スナツプ・リング73がシヤンク69の下部の溝に保持され、第17図に示されるようにカラー72に係合することによつてスプリングの拡張を制限し、かくして負荷パツド15の頭部68は摺動ゲート・キヤリア14の面74の上方に或る距離だけ延びることができる。通常の作動においては、カラー72とスナツプ・リング73はスプリング71に予負荷を維持しながら、負荷パツド15の頭部69aの面の最大高さを摺動ゲート・キヤリア14の面74から12.7mm(1/2 in)に制限する。一方、通常の作業位置は面14の上方約6.35mm(1/4 in)である。従つて、摺動ゲート12を静止頂板9に対して加圧関係に取付けるべくトグル・ヒンジ・ラツチ(掛けがね)機構が用いられる場合、トグルが中心を通り越すと、負荷パツドは正常作業位置を僅かに越え、次に正常作業に戻る。この場合各スプリングの全たわみは、予負荷たわみの6.35mm(1/4インチ)と、トグル・ヒンジとラツチ機構がこれを正常作業位置に位置させるべく作動された後のたわみの6.35mm(1/4インチ)を加えたものであるのが好ましい。コイル・スプリング71は作動条件下の圧縮で摺動ゲート12に予じめ決められた負荷を与えるように選択される。最良の結果については、この負荷は負荷パツド当り約454kg(約1000ポンド)であるべきであり、摺動ゲート12の耐火面Rの表面積に換算すると2つの耐火物の接触面の圧力は約7kg/cm2(平方インチ当り約100ポンド)である。

第2、3図において、ラム又はピストン・ロツド17は液体シリンダー16により作動され、そしてこれは摺動ゲート・キヤリア14に直接連結し、前記キヤリアはその内部に多数の連結された空気室75を有し、そして摺動ゲート12の下面に当る多数の負荷パツド15を支持する。第2図において、ロツド17とそれに関連する液圧シリンダー16内のピストン54は左側位置にあり、摺動ゲート12の後部は静止頂板9のオリフイスを閉じる。空気ホース61は中空ロツド17の端部5に連結され、空気の一定の流れを多数の空気室75に配送し、それによりキヤリア14と負荷パツド15を負荷パツド・スプリング71が永久に変形する温度より低い温度に冷却する。

注入時の摺動ゲート12の位置が第3図に示される。液圧ピストン54は右方位置にあり、而してロツド17は空冷式の摺動ゲート・キヤリア14をすべての注入ノズルが軸方向に整合する位置に引張る。引張り作用中いつでも負荷パツド15は摺動ゲート12にたえず接しており、摺動ゲート12の注入ノズルの周辺で摺動ゲートの上面Rを静止頂板9の下面Rに弾性的に押圧する。さらに、摺動ゲート・バルブ5の内部を冷却維持し、注入中の飛散から保護するために固定熱シールド24が摺動ゲート・バルブ5の主フレーム13の下に設けられ、摺動ゲート12の延長ノズル部22を受け入れる中央開口55を有する摺動する熱および飛散シールド25が設けられる(第5図も参照)。従つて、空冷式摺動ゲート・キヤリア14が第2図に示される位置から第3図に示される位置へ、又は任意の中間位置へ往復動する時、固定された熱シールド24と熱および飛散シールド25が摺動ゲート・バルブの内部を熱および飛散の両方から保護し続ける。熱および飛散シールド25は第5図に示されるように固定頂板9と摺動ゲート12が取換えられる時に容易に取はずすことができる。熱および飛散シールド25はアスベストのシートで形成されるのが最も良いが、溶融金属Mを注入している間摺動ゲート・バルブ5の環境温度と磨耗に耐えることのできる金属その他の材料のシートで形成されても良い。固定熱シールド24および熱および飛散シールド25に加えて、熱および飛散シールド25が形成されている材料に匹敵する材料の幅シールド(図示せず)が固定熱シールド24の下方に設けられる。これは熱シールド24の外部柱体77に取付けられ、第1図に示されるように熱シールド24から垂下するピン78によつて位置決めされる。この副シールド並に熱および飛散シールド25に用いられる材料は種々のタイプの可撓性セメント・アスベストから選択されこれは摺動ゲート12と共に往復動するに充分な厚さと弾性を有する。

この発明の目的を達成するには摺動ゲート12および頂板9を容易に取はずし、取かえ、又は再挿入するための装置が重要である。第5図、そして特に第6図に示されるように、これはヒンジ・トグル機構34とラツチ・トグル機構33とによつて達成される。主フレーム13とその内部に保持された空冷式摺動ゲート・キヤリア14はヒンジ・トグル34の回りに第5図に示す開位置まで揺動され、静止頂板9は取付けプレート66に設けられた凹所に挿入され、飛散シールド25および摺動ゲート12は主フレーム13内に挿入され、それから機構が閉位置へ揺動し、ラツチ・トグル33が作動されて負荷パツド15のたわみ作用により耐火面Rを接触させ、同時に摺動ゲート・バルブ5は連結器63を介して液圧シリンダ16と連結されるときはこれによつて作動される状態にされる。

なお、本発明の特許請求の範囲に記載する構造体を開いた位置とは第6図に示すように主フレーム13を開いた位置をいう。

第6図において、取付けプレート66は相対向した垂下トグル支持体27を有する。各トグル支持体27はピボツト保持ピン28を有し、これにトグル・リンク29が回動自在に取付けてある。第6図の右側部分でわかるように、トグル・リンク29はその下部にラツチ・トグル33を支持するピボツト・ピン30を備える。一方、ラツチ・トグル33は主フレーム13の外側部分に取付けられたラツチ・ピン31に係合するようになつている。ヒンジ・トグル34は同様にリンク29とピバツト・ピン30により垂下トグル支持体27に取付けられる。

第4図において、各トグル33、34の作動は各トグルにトグル・レバー・ソケツト36を設け、固定熱シールド24にトグル・レバー切欠部56を設けることにより達成され、トグル・レバー57(第4図に点線で示される)はトグル・レバー・ソケツト36に挿入され、トグル固定作用を達成すべく互に中央に向つて押圧され、このトグル固定作用は、負荷パツド15を収容する空冷式摺動ゲート・キヤリア14を介して主フレーム13に作用する負荷パツド15の圧力によつて維持される。主フレーム13の動きはプラケツト35の細長い孔で制限される、摺動ゲート12と静止頂板9との間の運動が始まると、摺動ゲート12の耐火面Rを静止頂板9の耐火面Rから実質的に一様に離隔させるように主フレーム13の離脱を行うために、フレーム13の左側を取付プレート66に固定する、向かい合うように隔置されたプラケツト35のそれぞれに保持ピン28を受け入れる長孔35’が設けられる。このように構成してあるので、ラツチトグル33を釈放した直後の主フレーム13の運動はその初期においては容器からまつすぐに離れる方向に行われ、摺動ゲート12の耐火面Rと頂板9の耐火面Rとはほとんど互いに平行に維持される。その後、トグル・レバー・ソケツト36に挿入されたトグル・レバー57の作用によりラツチ・トグル33が脱離される時にヒンジトグル34の揺動作用が続けられる。摺動ゲート・バルブ5を開閉する作用を再び考えると、負荷パツド15の機能が耐火面Rの間に圧力接触を維持するだけでなく、摺動ゲート・バルブ5をその作動状態に閉鎖するためにトグル装置33、34と共働するたわみ装置の作用もすることが明らかになる。図示ならびに説明された構造の種々の利点は以下の説明から明らかになるであろう。

この発明の機能は従来技術と比較することにより最もよく理解されるであろう。第8図において、静止頂板39と摺動ゲート38の耐火面Rを按触させる従来構造は主として縁支持体58による。ボルトで示される固定縁支持体58に代えてたわみ可能な支持部が用いられても、耐火面の問の本質的な関係は同しであり、即ち、図示のように点37における縁の支持関係は同じである。コイル・スプリングを基板40の下側で固定支持部58の回りに設けることにより、スプリングは基板40を耐火部材と固定取付け部材41に向つて押圧するが、縁37における支持のために、なおギヤツプ(第8図に誇張して示す)が耐火面Rの間に存在する。

この発明は第9図に示されるように注入開口を取り囲む耐火面R間に生しる流体シールの不整合を調整することに関する。これに固定又は静止頂板9(第9図参照)を摺動ゲート12と共に移動するのを拘束することにより行われる。従つて、第9図に示されるように耐火面Rは注入位置へ又は遮断位置から移動される。第9図に示されるこの発明と第8図に示される従来技術との主な相違は、勿論耐火面Rを互に押圧する多数のたわみ部材即ち負荷パツド15を設けた結果である。さらに第9図および第1~7図に示されるように、たわみ部材即ち負荷パツドは、それらが注入開口を囲み、そして固定耐火面の外縁周辺内部に在るように位置決めされている。従つて、可動耐火面は比較的たわんで、固定耐火部材の表面に不整合を調整する。

従つて、第9図に概略的に示すこの発明の例示装置では、固定又は静止頂板9および摺動バルブ又はゲート・プレート12のゆがみは負荷パツド15の圧力により調整されるが、第8図に示されるような静止頂板39と摺動ゲート38のゆがみは耐火面Rの間に相互接触関係をもたらすように調整されない。

さらに第10図に示されるように、往復動する摺動ゲートを開示する従来装置の頂板42と摺動ゲート43の概略図に注目する。縁44、45において腐食と磨耗が生じる。事実、往復動を繰返えすと、第11図に最も良く示されているように頂板42の磨耗領域が摺動ゲート43の周辺に重なり、摺動ゲート43によつて制限される流れ部から溶融金属がバルブ又は閉鎖装置の外部に直接流れる通路を開く。この状態は第11図に示されるように部分的な開き又は絞りによりさらに悪化される。つまり溶融金属が表面を磨耗させ、図示されるように右方部分から流出する。さらに第10図において、閉鎖位置においても第10、11図について述べた磨耗により漏れを引き起し又はその領域で凍結が起こる。漏れはこれが正常な注入口からのもので遮断が達成できる場合は許容される。

これに対して、この発明による閉鎖機構において面および縁に沿つて第12、13図に示す如く同様の磨耗が起る場合には、この磨耗は面間のたわみ可能な共働作用によつて調整され、特に第13図に示されるように面44、45の延長部に生しる磨耗はなお摺動ゲートと静止頂板9の外端周辺の境界内にある。第14図に示されるように静止頂板9の上部が変形して、それと取付けプレート66の間に溶融金属の侵透(Penetration)が生じても、静止基板9の外端にはなお確実な密封が形成され、摺動部材は第12および13図に説明したのと同様に密封を続ける。

第15図に示す閉鎖機構の別の実施例では、延長又は浸入用注入管又はノズル部49が摺動ゲート・バルブ5のフレーム13の下部の挿入部52に設けられる。共通の参照番号が適用できる場合は以下の説明にもそれが用いられる。金属外側ケース又は殼1を有する容器Vは耐火ライニング2を偏え、その中央部にはブロツク3が設けてある。この発明の第1実施例と同様な材料の安全ノズル6が用いられ、静止頂板9は金属で包囲され、又は固定環状リングと共に形成され、第1実施例のように安全ノズル6と共働する。これは摺動ゲート・バルブ5の取付けプレート66の凹所に受け入れられ、取付けプレート66は容器Vの金属ケース1に取付けられる。

しかし乍ら、この場合には、周りがフレームで包まれたキヤリア50が、液圧シリンダー16によつて作動されるラム17に取付けられる。負荷パツド15に対する空冷は異なる位置にある空気連結部47によりなされ、前記連結部はスベーサー46に配置され、空気を主フレーム13の一部に送る。

負荷パツド15の圧力はノズル挿入部52に向られ、摺動ゲート12は2つの部片の耐火物から成り、従つて静止頂板9と可動摺動ゲート12の間に耐食性耐火面R-Rが前述の第1実施例と同様に設けられる。片寄り(オフセツト)部65、67がそれぞれ摺動ゲート12と注入管およびノズル延長部の頭部51の上面に設けられる。従つて、摺動ゲート12が右方向に往復動される(図示されない)と、摺動ゲートの中央に位置する注入開口は作業ノズル4の注入開口と整合し、注入管49を通つて下方に向かう。第15図の遮断位置では、摺動ゲート12の上面と静止頂板9の下面との間に確実な閉鎖が起こり、この2部分は耐火面Rを有し、負荷パツド15により前述のような相互圧力関係に保持される。第1実施例と同様に負荷パツド15は、連結部47とフレーム13の内部に設けられた空気室75を通して噴射される空気によりたえず冷却される。フレームについては、直立した障壁59がスベーサー46のレベルの直上に設けられていて、ノズル挿入部52とノズル49の頭部51をその位置にしつかりと保持し、摺動ゲート12だけが可動部材であり、前述のように負荷パツド15によりその位置に保持されるので一定の圧力が共働する耐火面Rに与えられて摺動ゲート12の開放又は閉鎖位置においていかなる磨耗をも最小にする。

容器に対する注入バルブの2つの実施例を図示し且つ説明したが、両方とも共通に固定耐火部材又は頂板に向つて弾性的に押圧される摺動耐火ゲート・プレートを有する。たわみ装置又は負荷パツドを用いて2つの耐火面をたえず押圧して互に弾性的に接触させ、これによつて不整合を補償し、使用甲密封を維持する。実際の機構では2つの実施例共にスプリング負荷形パツドについて示し且つ又トグル機構による摺動ゲート・バルブ機構5を開閉する機構を示した。このトグル機構により作業中に消耗した耐火部品の取換えを容易にする。

この発明の実施態様は下記の通りである。

(1) ゲート・プレートは、開口部分と開口のない部分とを備えている一体の部材からなり、該部材はラムによつて往復動するようキヤリアと組合され、キヤリアは容器に取付けた主フレーム内で移動することができ、前記主フレームが構造体で形成されたことを特徴とする特許請求の範囲に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(2) キヤリアが、冷却空気の供給部に連結された空気室を有し、該空気室は負荷パツドに対し冷却関係を有するように配置されていることを特徴とする特許請求の範囲に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(3) 空気室と冷却空気の供給源との連結はラムを形成する中空ロツド内の通路を介して行なわれることを特徴とする第(2)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(4) 各負荷ロツドはキヤリアの凹所に位置させた圧縮スプリングを備え、該スプリングは、キヤリアから突出してゲート・プレートに係合する頭部を有するシヤンクを包囲していることを特徴とする特許請求の範囲に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(5) 圧縮スプリングの動きを制限し、ゲート・プレートに及ぼす負荷を決定する拘束装置を設けたことを特徴とする第(4)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(6) キヤリアを支持する構造体の一部がゲート・プレートを露出する位置へ移動できるように取付けられていることを特徴とする特許請求の範囲に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(7) キヤリアを作業位置へ移動させる時にすべての負荷パツドを圧縮させることのできるトグル機構を設けたことを特徴とする第(6)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(8) 前記構造体の一部を構造体の側部材に枢着連結し、構造体の反対側の側部材にラツチ機構を設け、前記枢着連結およびラツチ機構がトグル・ジヨイントを有することを特徴とする第(7)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(9) ラムとキヤリアとの連結はキヤリアをゲート露出位置へ移動させうるよう解放可能であることを特徴とする第(1)項および第(7)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(10) ゲート・プレートがキヤリアの凹所に取はずし可能に受け入れられていることを特徴とする第(1)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(11) ゲート・プレートが、容器の注入開口と整合するオリフイスを有する頂板と共働し、前記頂板が、容器に取付けた取付け部材の凹所に取はずし可能に受け入れられていることを特徴とする第(6)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(12) 各プレートを受け入れる凹所とその外寸法が直交軸に関して対称でプレートを逆にできるようにしたことを特徴とする第(10)項又は(11)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(13) ゲート・プレートがキヤリアの流路内に受け入れられたノズル延長部を有することを特徴とする第(1)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(14) ノズル延長部を摺動可能に受け入れる開口を有する飛散シールドを設け、前記飛散シールドが排出金属の熱にさらされるキヤリアの側部に隣接して配置され、キヤリアと共に往復動できるようにしたことを特徴とする第(13)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(15) ゲート・プレートと頂板の側部が金属ケーシング内にあり頂板に接触するゲート・プレートの表面部が高耐食性耐火材料で形成されていることを特徴とする第(11)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(16) ゲート・プレートがキヤリアに固定してあるプレート部材と摺接し、該プレート部材は、キヤリア内の流路と連通する開口を有しており、ゲート部材内の開口と前記流路との連通部はゲート・プレートとゲート・プレートの閉鎖位置において協働する固定プレート部材とに設けてある片寄り凹部からなつていることを特徴とする第(1)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(17) ゲート・プレートは上部および下部プレート部分で形成され、片寄り(オフセツト)凹所の一つが下部分に設けられ、固定プレートに設けてある補足凹所がゲート・プレートの開放位置において邪魔のない流路を形成するようにしたことを特徴とする第(16)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(18) 容器の注入開口は取替え可能な作業ノズルと容器に取付けられ且つ前記ノズルを取はずし可能に支持するプレートの開口とで構成され、高強度な耐火材料の安全ノズルが前記作業ノズルを包囲し且つ密封ジヨイントで支持されていることを特徴とする特許請求の範囲に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(19) 安全ノズルの耐火材料が溶融金属をこれに付着凍結(フリーズ)させるような高い熱伝導性を有していることを特徴とする第(18)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

図面の簡単な説明

第1図はインゴツト・モールドに溶融鋼を注入するための摺動ゲート閉鎖機構又は注入バルブを用いるべく改造した底注入容器の斜視図、第2図は第1図に示す注入バルブの遮断位置を示す長手方向断面図、第3図はバルブの開位置又は注入位置を示す注入バルブの長手方向断面図、第4図はキヤリアの流路に隣接した断面に沿う横断面図、第5図は注入バルブが耐火部品の交換のために開かれた第1図に示すバルブの一部分解斜視図、第6図は第5図に示す注入バルブを開位置で示す第4図と同じ高さと位置からみた拡大断面図、第7図は各耐火プレートを合致させて密封を行わしめるのに用いられるたわみ装置の位置と方向を特に示す第2図のⅦ-Ⅶ線に沿う水平断面図、第8図~14図はすべて種々の問題点とその解決点を示す概略断面図で、第8図は一方の耐火部材を他方に取付ける従来装置が耐火部材表面間に一様な密封作用を行わしめない状態を示す横断面図、第9図は耐火部材表面間にたわみ圧力面を形成し要求される密封条件をもたらすたわみ装置を有するこの発明の装置を示す第8図と同様な水平断面図、第10図は腐食され且つ磨耗される領域がこの設計で調整される状態を示す、耐火プレートとノズルを有する部材の別の断面図、第11図は磨耗が密封面よりさらに進んで漏れの生じる場所を示す別の問題点を示す図、第12図は2つの耐火部材面の磨耗およびたわみ効果が本発明の注入バルブにより調整される状態を示す図、第13図はこの発明による注入バルブによる磨耗の調整を示す別の図、第14図は凍結部又は汚染部がこの発明の注入バルブを非作動にしない状態を示す第8、9図と同様な横断面図、第15図はゲート・プレートの往復動の邪魔にならないように注入容器に対して設けられ溶融金属の流れを作動させる延長注入管が用いられるこの発明の別の実施例の注入バルブの長手方向横断面図、第16図は正常な作業位置にある負荷パツドの一つの中間部に沿う横断面図、第17図は予負荷された位置で移動の限界を示された負荷パツドの一つの横断面図である。

Ⅴ……容器、12……ゲート・プレート、14……キヤリア、15……スプリング装置、17……ラム、22……耐火ノズル。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

〈19〉日本国特許庁 〈11〉特許出願公告

特許公報 昭52-22900

〈51〉Int.Cl2. B 22 D 37/00 B 22 D 11/10 識別記号 〈52〉日本分類 11 C 1 11 B 091 庁内整理番号 6441-39 7605-39 〈44〉公告 昭和52年(1977)6月21日

発明の数 2

〈54〉溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構

〈21〉特願 昭50-48550

〈22〉出願 昭47(1972)6月7日

公開 昭51-84739

〈43〉昭51(1976)7月24日

優先権主張 〈32〉1971年6月7日〈33〉アメリカ国〈31〉150585

〈62〉特願 昭47-56787の分割

〈72〉発明者 アール・ペイジ・シヤープランド

アメリカ合衆国イリノイ州シヤムペイン・サウス・フアースト・ストリート・ロード3108 1/2

同 ジエームス・トーマス・シヤープランド

アメリカ合衆国ペンシルバニア州ピツツバーグ・ベンハースト・ドライブ113

〈71〉出願人 ユーエスエス・エンジニアーズ・アンド・コンサルタンツ・インコーボレーテツド

アメリカ合衆国ペンシルバニア州ピツツバーグ・グラント・ストリート600

〈74〉代理人 弁理士 浅村皓 外3名

〈57〉特許請求の範囲

1 耐火頂板を収容しており、この頂板に設けた開口が容器の注入開口と重なり合つている前記容器の注入開口を通る溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構であつて、この機構が耐火ゲート・プレートを有し、このプレートが前記頂板に接触して前記頂板の開口のまわりの密封する領域に沿つて制御位置へ摺動可能であり、前記制御位置において選択されたゲート・プレートの開口または開口のない部分が前記頂板の開口と重なり合つたとき液体金属の流れをそれぞれ許容しまたは停止させるようになつており、さらに前記ゲート・プレートを収容しかつ支持している構造体と、圧縮されると弾発力を前記ゲート・プレートに作用させるように前記構造体に配設されたばね装置とを有するものにおいて、前記構造体の一方の側に間隔を置いて固着された複数個のプラケツトを有し、これらのプラケツトのそれそれには前記容器に固定されたピン28が嵌まり込んでいる長孔35’が形成されており、この長孔の長手方向の軸線は前記ゲート・プレートの上面が前記頂板の下面とほぼ平行になつたときには該下面に対してほぼ垂直になるようになつており、また前記容器に取り付けたラツチ装置があつてこの装置を前記構造体の他方の側に固着した部材に係合させたりこの係合を解除したりすることによつて前記ゲート・プレートの上面と前記頂板の下面とが前記両面の間にある間隔を置いて向かい合う関係に解放可能に保持されるようになつており、さらにまた前記構造体がラツチされているときに前記ピンを前記プラケツトの長孔に沿つて摺動させて前記ばね装置の弾力に抗して前記ゲート・プレートを前記頂板に接近させて密着させる装置があり、ラツチを解除して前記構造体を開いた位置に揺動させると前記ゲート・プレートと前記頂板とに接近できるようになつていることを特徴とする摺動ゲート閉鎖機構。

発明の詳細な説明

この発明は容器の注入開口からの溶融スチール、アルミニウムおよび真ちゆうを含む溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構に関する。

この発明に係わる装置は米国特許第3352465号明細書に「底注入容器の耐火閉鎖部材」として示されている。この特許は、或る物が孔を有さず、他の物が注入開口を有する複数個の摺動ゲート・プレートを容器の底部の注入開口に隣接して連続的に位置させるような底注入法および構造を開示している。関連した他の従来技術としては米国特3454201号、同第311902号、同507852号明細書がある。

周知の閉鎖機構はすべて種々の欠点を有する。例えば、米国特許第1507852号においては確実なたわみ密封が与えられない。米国特許第3454201号においても同様にたわみ密封に対する対策がなく、耐火部材の面の変化を調整するたわみ装置もない。米国特許第311902号および同第3352465号は、2つの耐火部材密封するたわみ装置を開示しているが、たわみ構造体は縁を支持するものであつて接触面に亘つて分布されていない。

この分野において直面する問題は耐火部材間の作業接触面における磨耗を調整することである。この問題は耐火部材が幾分曲がりそして、密封を調整せねばならないような表面の不完全さをかならず有しているという性質によつて一層複雑になる。

本発明の目的は、摺動するゲート・プレートと容器に固定した頂板とに接近して、これらの点検、修理、取替えを行うためにゲートを開閉するに際して、前記両者を接近させて密着させまたは離隔させる操作を2段階で行うようにし、前記両者を局部的に当接させることなく一様に密清させて耐火物に損傷を与えないように構成した摺動ゲート閉鎖機構を提供することにある。

この発明の特徴は注入中何回となく往復動させることのできる往復動ゲート・プレートを提供す。例えば、容器に35トン充填すると20回の遮断が必要であり、そして1回の溶融物が更に多くなれば70回位の遮断が必要になる。

本発明によれば、耐火頂板を収容しており、この頂板に設けた開口が容器の注入開口と重なり合つている前記容器の注入開口を通る溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖機構であつて、この機構が耐火ゲート・プレートを有し、このプレートが前記頂板に接触して前記頂板の開口のまわりの密封する領域に沿つて制御位置へ摺動可能であり、前記制御位置において選択されたゲート・プレートの開口または開口のない部分が前記頂板の開口と重なり合つたとき液体金属の流れをそれぞれ許容しまたは停止させるようになつており、さらに前記ゲート・プレートを収容しかつ支持している構造体と、圧縮されると弾発力を前記ゲート・プレートに作用させるように前記構造体に配設されたばね装置とを有するものにおいて、前記構造体の一方の側に間隔を置いて固着された複数個のプラケツトを有し、これらのプラケツトのそれぞれには前記容器に固定されたピンが嵌まり込んでいる長孔が形成されており、この長孔の長手方向の軸線は前記ゲート・プレートの上面が前記頂板の下面とほぼ平行になつたときには該下面に対してほぼ垂直になるようになつており、また前記容器に取り付けたラツチ装置があつてこの装置を前記構造体の他方の側に固着した部材に係合させたりこの係合を解除したりすることによつて前記ゲート・プレートの上面と前記頂板の下面とが前記両面の間にある間隔を置いて向かい合う関係に解放可能に保持されるようになつており、さらにまた前記構造体がラツチされているときに前記ピンを前記プラケツトの長孔に沿つて摺動させて前記ばね装置の弾力に抗して前記ゲート・プレートを前記頂板に接近させて密着させる装置があり、ラツチを解除して前記構造体を開いた位置に揺動させると前記ゲート・プレートと前記頂板とに接近できるようになつている摺動ゲート閉鎖機構が提供される。

この発明は、それぞれ注入開口を有すう2つの耐火プレートを合致させ或はずらすべく移動させる場合、たわみ圧力が可動プレートの周囲内で注入開口を取り囲む多数の位置において可動プレートに加えられるならば効果的な流体密封を維持させることができるということに基いたものである。キヤリア内の多数のたわみ部材が必要な圧力を加える。一実施例として圧力を加えるべく線型にたわむコイル・スプリングを使用する。このスプリングは注入中その作業温度が260℃(500°F)を越えないようにたえず空冷され、それにより高温で生じるような永久ひずみなしにスプリングの一定のたわみ作用を保証する。容器に取付けた固定耐火面はこれと対向した耐火面を有する摺動部材と弾性的に接し、摺動部材の面と固定耐火面は共に整合する注入開口を取り囲んでいる。

液圧駆動装置が往復動のために利用され、たわみ部材のスプリングを冷却する同じ空気流で冷却される。シールドと密封は適当な位置に設けられる。別の実施例では、固定底部プレートが延長ノズルを保持し、これは浸入用注入管に連結され、遮断位置において、ゲート・プレートからの溶融金属の排出がもたらされる。

この発明の実施例を図面を参照して説明することにする。

この発明の概要が透視図で第1図に示してある。この場合底部注ぎとりべとして図示される容器Vは各金属殼を有し、該容器Vの基部には基板66が固着させてあつてこれに摺動ゲート・バルブ5が取付けてある。摺動ゲート・バルブは総体的に主フレーム13と、一対のトグルとで構成され、図示されているヒンジ・トグル34は、後述するように耐火部品の取替えに当つて主フレームを開閉する。摺動ゲート・バルブ5の下部から耐火注ぎノズル22が延び、これは溶融金属Mをインゴツト1に流入させる。固定の熱シールド24が摺動ゲート・バルブ5の底部に設けられ、摺動熱および飛散シールド25が内側に耐火ノズル22を包囲して設けられ、耐火ノズル22と共に移動して摺動ゲート・バルブ5の内部の追加的な熱および飛散シールドの作用をする。

摺動ゲート・バルブ5はコントロール・スイツチ60でコントロールされる液圧シリンダー16により作動される。コントロール・スイツチ60はシリンダー16に圧力流体を供給すべく液圧管路62を作動し、シリンダー16はラム・シールド64の内部の図示されないラム・ロツドを介して摺動ゲート・バルブ5の作動部材を駆動する。空気ホース61が設けられていて液圧シリンダー16を冷却するためにこれに空気を連続的に流し且つ、摺動ゲート・バルブ5の内部にも流すようになつている。液圧シリンダー16、空気ホース61、液圧管路62およびコントロール部60を含む全装置はそれを回転することにより取はずすことができ、その結果、ラム・シールド64はその端部に共働部材を有し、これは摺動ゲート・バルブ5の連結部63と共働し、そこから駆動要素を取はずす作用をする。この簡単な取はずしは、トグル機構が摺動ゲート・バルブ5を開いてその中の内部耐火部品を取換えるべく開かれ、且つ駆動装置を取出す場合に重要になる。又容器Vにその溶融装入物を満たしている時、シリンダーはこぼれることによる損傷を防止すべく取はずされる。

第2図において、容器Vは外金属殼1および耐火ライニング2を有している。前述のようにこの特定な容器は底注ぎ容器であるが、説明が進むにつれて摺動ゲート・バルブ装置5の側注ぎ取付部も容易に形成できることが明らかになるであろう。2部片からなる筒ブロツク3が耐火ライニング2の中央部に設けられ、その中央に作業ノズル4を位置決めし、このノズルはブロツク3の底部および耐火ライニング2および容器Vの金属殼1を貫ぬいて延びる。作業ノズル4、特に第2図に示される安全ノズル6の機能は摺動ゲート・バルブ取付けプレート66の位置、方向だけでなくその形体と統合される。取付けプレートは第4図に示されるようにボルト26により注ぎ容器Vの金属殼1に取付けられる。第2図において、取付けプレート66は安全ノズル・カラー68を有し、これは完全ノズル6の環状リング8に接している。安全ノズル6の環状リング7も静止頂板9と係合するように下方に延びている。こうしてラビリンス型式の結合部が摺動ゲート・バルブ5の取付けプレート65、静止頂板9の上面、およびブロツク3の間に形成される。

作業ノズル4は通常安価な耐火材料で製造され容易に取換えることができる。一方安全ノズル6は高強度で高密度の材料で製造される。従つて、安全ノズル6が形成される材料は作業ノズル4の破壊の場合に追加強度を与えるだけでなく、その高い伝導性によりそれに接触する溶融金属のくつつき(freeze)を起こす傾向がある。通常の作業では安全ノズル6は、容器Vの耐火ライニング2が取換えられる時のみ取換えられる。もちろん、破損の場合はすぐに取換えても良い。そのような取換えの場合、安全ノズル6と作業ノズル4は通常同時に取換えられる。

第5図において、頂板9は取付けプレート66の凹所内に嵌合す。しかる後摺動ゲート12が摺動ゲート・バルブ5の主フレーム13の内側に配置され、そして第2図に示されるように作業状態に閉じられる。この点において、満足される頂板9の形体は好ましくは往復動の軸線および往復動の軸線と直角な軸線の両方に対して対称である。同様に、摺動ゲート12も往復動の軸線および往復動の軸線と直角な軸線の両方に対して対称である。従つて、一回以上の注入がなされた後、そして摺動ゲートおよび/又は頂板の注入開口からの侵食がそれ以上の使用を害しないことが観察されるとき、特に板が逆にされる時、その一方又は両方は容易に逆にされてさらに注入するのに使用される。

第2図において、固定頂板9は安全ノズル6の環状リング8を受け入れるように形成された中央環状溝を含む。金属包囲体10は静止頂板9を包囲し、そしてこれを板に係合させるべくその周辺でクリンプされている。金属包囲体10にはセラミツク同志の結合を行なわしめるために環状リング8に隣接して開口が設けてある。金属包囲体と頂板9との間には不規則を整えるためにモルタル充填剤が挿入される。このようにして頂板の耐火材料は包囲されているのでひび割れが入る場合にもそれはその位置に維持される。

摺動ゲート12と付随ノズル22も同様に金属シールド(保護体)70内に包囲され、シールド70は好ましくは下端19および頂部周辺18で折り曲げられる。従つて、静止頂板9と摺動ゲート12の両方は金属で包囲された耐火物である。摺動バルブ12は好ましくは3つの部片で構成される。特に図示のようにノズル22は摺動バルブ12の注入口部として設けられた耐食性の高い耐火内側スリーブ21と低伝導性の低い外側の耐火部分から構成される。静止頂板9が形成される材料に匹敵する材料の耐磨耗性頂板20が摺動ゲート12上に設けられる。

ここで高い耐食性耐火物というのは、通常85%から95%の高いアルミナ含有量の物質である。

れらの材料は高密度を有し、高温度で焼成される。これら材料の表面はしばしば正確な形状に研摩されなければならない。一方、ブロツク3に用いられるような裏打ち耐火物、および摺動バルブ12の耐食性耐火スリーブ21を包囲する耐火ノズル22は通常、鋳造可能な低アルミナの多孔質構造体で形成される。鋳造可能な溶融シリカ物質も使用できるが、これは鋳造可能な低アルミナの多孔質構造体よりいくらか高価であり、あまり適当でない。作業ノズル4を安全ノズル6内に固定するのにモルタルが用いられる安全ノズル6と頂板9との接合はガスケツト又はモルタルを用いないでそのまま行われ、その固着性は部品の相互結合、耐火材料の違つたタイプおよび高温注入条件における耐火材料の反応で左右される。

この発明によれば摺動ゲート・バルブの中で互に摺動する耐火材料の2つの面間の圧力関係を提供する。特に第5図において、互に摺動密封係合する耐火面Rが静止頂板9と摺動ゲート12の相対向した面にある。これらは前述の高い耐食性の耐火面である。2つの耐火面Rの間の圧力関係を維持するため、摺動ゲート・バルブ5内に多数の負荷パツド15が設けてある。これら負荷パツドは摺動ゲート12の包囲体の下面に当つており、静止注入開口の周辺の回りにそのような多数の負荷パツド15が設けられるので、これらは耐火面Rの密封圧力を一様に高める環状の負荷領域をたえず形成する。第5図に示されるように摺動ゲート12の下部の下面に接する負荷パツド15は、摺動ゲート12を囲み且つ主フレーム13内で往復動するキヤリア14内に設けられる。環状の負荷領域は、取付けプレート66に当つていて、しかもこのプレート66に設けてある凹所内に収容されている静止頂板9の注入開口の回りに延びる。

この発明は、一方が開口を備え、他方が閉鎖部を備えている摺動ゲート・プレートによる閉鎖機構に適用できる。新たなプレートを引出し用ラムの前方に置き、先のプレートが次のプレートによる移動で単純に落下するよう別々のプレートが往復動ラムで連続的に次々に移動される。このような閉鎖機溝は米国特許第3352465号明細書に示されている。この発明をこのタイプの閉鎖機構に適用するには、キヤリアは往復動される代りに固定位置を有し、ラムは新たなプレートに係合する。ゲート・プレートは固定キヤリアを横切つて移動される。

第16図に詳細に示されるように各負荷パツド15はシヤンク(柱部)69を含み、その頭部69aには凸状支持面67が設けられる。コイル・スプリング71が頭部68の下部に設けられ、シヤンク69を包囲する。スプリング71はカラー72により弾圧されている。カラー72はリング76を有し、これは摺動ゲート・キヤリア14の収容壁に摩擦係合し、シヤンク69を上方に押圧すべく収容壁棚状部に載つている。スナツプ・リング73がシヤンク69の下部の溝に保持され、第17図に示されるようにカラー72に係合することによつてスプリングの拡張を制限し、かくして負荷パツド15の頭部68は摺動ゲート・キヤリア14の面74の上方に或る距離だけ延びることができる。通常の作動においては、カラー72とスナツプ・リング73はスプリング71に予負荷を維持しながら、負荷パツド15の頭部69aの面の最大高さを摺動ゲート・キヤリア14の面74から12.7mm(1/2 in)に制限する。一方、通常の作業位置は面14の上方約6.35mm(1/4 in)である。従つて、摺動ゲート12を静止頂板9に対して加圧関係に取付けるべくトグル・ヒンジ・ラツチ(掛けがね)機構が用いられる場合、トグルが中心を通り越すと、負荷パツドは正常作業位置を僅かに越え、次に正常作業に戻る。この場合各スプリングの全たわみは、予負荷たわみの6.35mm(1/4インチ)と、トグル・ヒンジとラツチ機構がこれを正常作業位置に位置させるべく作動された後のたわみの6.35mm(1/4インチ)を加えたものであるのが好ましい。コイル・スプリング71は作動条件下の圧縮で摺動ゲート12に予じめ決められた負荷を与えるように選択される。最良の結果については、この負荷は負荷パツド当り約454kg(約1000ポンド)であるべきであり摺動ゲート12の耐火面Rの表面積に換算すると2つの耐火耐の接触面の圧力は約7kg/cm2(平方インチ当り約100ポンド)である。

第2、3図にいて、ラム又はピストン・ロツド17は液体シリンダー16により作動され、そしてこれは摺動ゲート・キヤリア14に直接連結し、前記キヤリアはその内部に多数の連結された空気室75を有し、そして摺動ゲート12の下面に当る多数の負荷パツド15を支持する。第2図において、ロツド17とそれに関連する液圧シリンダー16内のピストン54は左側位置にあり、摺動ゲート12の後部は静止頂板9のオリフイスを閉じる。空気ホース61は中空ロツド17の端部に連結され、空気の一定の流れを多数の空気室75に配送し、それによりキヤリア14と負荷パツド15を負荷パツド・スプリング71が永久に変形する温度より低い温度に冷却する。

注入時の摺動ゲート12の位置が第3図に示される。液圧ピストン54は右方位置にあり、而してロツド17は空冷式の摺動ゲート・キヤリア14をすべての注入ノズルが軸方向に整合する位置に引張る。引張り作用甲いつでも負荷パツド15は摺動ゲート12にたえず接しており、摺動ゲート12の注入ノズルの周辺で摺動ゲートの上面Rを静止頂板9の下面Rに弾性的に押圧する。さらに、摺動ゲート・バルブ5の内部を冷却維持し、注入中の飛散から保護するために固定熱シールド24が摺動ゲート・バルブ5の主フレーム13の下に設けられ、摺動ゲート12の延長ノズル部22を受け入れる中央開口55を有する摺動する熱および飛散シールド25が設けられる(第5図も参照)。従つて、空冷式摺動ゲート・キヤリア14が第2図に示される位置から第3図に示される位置へ、又は任意の中間位置へ往復動する時、固定された熱シールド24と熱および飛散シールド25が摺動ゲート・バルブの内部を熱および飛散の両方から保護し続ける。熱および飛散シールド25は第5図に示されるように固定頂板9と摺動ゲート12が取換えられる時に容易に取はずすことができる。熱および飛散シールド25はアスベストのシートで形成されるのが最も良いが、溶融金属Mを注入している間接動ゲート・バルブ5の環境温度と磨耗に耐えることのできる金属その他の材料のシートで形成されても良い。固定熱シールド24および熱および飛散シールド25に加えて、熱および飛散シールド25が形成されている材料に匹敵する材料の幅シールド(図示せず)が固定熱シールド24の下方に設けられる。これは熱シールド24の外部柱体77に取付けられ、第1図に示されるように熱シールド24から垂下するピン78によつて位置決めされる。この副シールド並に熱および飛散シールド25に用いられる材料ば種々のタイプの可撓性セメント・アスベストから選択されこれは摺動ゲート12と共に往復動するに充分な厚さと弾性を有する。

この発明の目的を達成するには摺動ゲート12および頂板9を容易に取はずし、取かえ、又は再挿入するための装置が重要である。第5図、そして特に第6図に示されるように、これはヒンジ・トグル機構34とラツチ・トグル機構33とによつて達成される。主フレーム13とその内部に保持された空冷式摺動ゲート・キヤリア14はヒンジ・トグル34の回りに第5図に示す開位置まで揺動され、静止頂板9は取付けプレート66に設けられた凹所に挿入され、飛散シールド25および摺動ゲート12は主フレーム13内に挿入され、それから機構が閉位置へ揺動し、ラツチ・トグル33が作動されて負荷パツド15のたわみ作用により耐火面Rを接触させ、同時に摺動ゲート・バルブは連結器63を介して液圧シリンダ16と連結されるときはこれによつて作動される状態にされる。

なお、本発明の特許請求の範囲に記載する構造体を開いた位置とは第6図に示すように主フレーム13を開いた位置をいう。

第6図において、取付けプレート66は相対向した垂下トグル支持体27を有する。各トグル支持体27はピボツト保持ピン28を有し、これにトグル・リンク29が回動自在に取付けてある。第6図の右側部分でわかるように、トグル・リンク29はその下部にラツチ・トグル33を支持するピボツト・ピン30を備える。一方、ラツチ・トダル33は主フレーム13の外側部分に取付けられたラツチ・ピン31に係合するようになつている。ヒンジ・トグル34は同様にリンク29とピボツト・ピン30により垂下トグル支持体27に取付けられる。

第4図において、各トグル33、34の作動は各トグルにトグル・レバー・ソケツト36を設け、固定熱シールド24にトグル・レバー切欠部56を設けることにより達成され、トグル・レバー57(第4図に点線で示される)はトグル・レバー・ソケツト36に挿入され、トグル固定作用を達成すべく互に中央に向つて押圧され、このトグル固定作用は、負荷パツド15を収容する空冷式摺動ゲート・キヤリア14を介して主フレーム13に作用する負荷パツド15の圧力によつて維持される。主フレーム13の動きはプラケツト35の細長い孔で制限される。摺動ゲート12と静止頂板9との間の運動が始まると、摺動ゲート12の耐火面Rを静止頂板9の耐火面Rから実質的に一様に離隔させるように主フレーム13の離脱を行うために、フレーム13の左側を取付プレート66に固定する、向かい合うように隔置されたプラケツト35のそれぞれに保持ピン28を受け入れる長孔35’が設けられる。このように構成してあるので、ラツチトグル33を釈放した直後の主フレーム13の運動はその初期においては容器からまつすぐに離れる方向に行われ、摺動ゲート12の耐火面Rと頂板9の耐火面Rとはほとんど互いに平行に維持される。その後、トグル・レバー・ソケツト36に挿入されたトグル・レバー57の作用によりラツチ・トグル33が脱離される時にヒンジトグル34の揺動作用が続けられる。摺動ゲート・バルブ5を開閉する作用を再び考えると、負荷パツド15の機能が耐火面Rの間に圧力接触を維持するだけでなく、摺動ゲート・バルブ5をその作動状態に閉鎖するためにトグル装置33、34と共働するたわみ装置の作用もすることが明らかになる。図示ならびに説明された構造の種々の利点は以下の説明から明らかになるであろう。

この発明の機能は従来技術と比較することにより最もよく理解されるであろう。第8図において、静止頂板39と摺動ゲート38の耐火面Rを接触させる従来構造は主として縁支持体58による。ボルトで示される固定縁支持体58に代えてたわみ可能な支持部が用いられても、耐火面の間の本質的な関係は同じであり、即ち、図示のように点37における縁の支持関係は同じである。コイル・スプリングを基板40の下側で固定支持部58の回りに設けることにより、スプリングは基板40を耐火部材と固定取付け部材41に向つて押圧するが、縁37における支持のために、なおギヤツプ(第8図に誇張して示す)が耐火面Rの間に存在する。

この発明は第9図に示されるように注入開口を取り囲む耐火面R間に生じる流体シールの不整合を調整することに関する。これは固定又は静止頂板9(第9図参照)を摺動ゲート12と共に移動するのを拘束することにより行われる。従つて、第9図に示されるように耐火面Rは注入位置へ又は遮断位置から移動される。第9図に示されるこの発明と第8図に示される従来技術との主な相違は、勿論耐火面Rを互に押圧する多数のたわみ部材即ち負荷パツド15を設けた結果である。さらに第9図および第1~7図に示されるように、たわみ部材即ち負荷パツドは、それらが注入開口を囲み、そして固定耐火面の外縁周辺内部に在るように位置決めされている。従つて、可動耐火面は比較的たわんで、固定耐火部材の表面に不整合を調整する。

従つて、第9図に概略的に示すこの発明の例示装置では、固定又は静止頂板9および摺動バルブ又はゲート・プレート12のゆがみは負荷パツド15の圧力により調整されるが、第8図にされるような静止頂板39と摺動ゲート38のゆがみは耐火面Rの間に相互接触関係をもたらすように調整されない。

さらに第10図に示されるように、往復動する摺動ゲートを開示する従来装置の頂板42と摺動ゲート43の概略図に注目する。縁44、45において腐食と磨耗が生じる。事実、往復動を繰返えすと、第11図に最も良く示されているように頂板42の磨耗領域が摺動ゲート43の周辺に重なり、摺動ゲート43によつて制限される流れ部から溶融金属がバルブ又は閉鎖装置の外部に直接流れる通路を開く。この状態は第11図に示されるように部分的な開き又は絞りによりさらに悪化される。つまり溶融金属が表面を磨耗させ、図示されるように右方部分から流出する。さらに第10図において、閉鎖位置においても第10、11図について述べた磨耗により漏れを引き起し又はその領域で凍結が起こる。漏れはこれが正常な注入口からのもので遮断が達成できる場合は許容される。

これに対して、この発明による閉鎖機構において面および縁に沿つて第12、13図に示す如く同様の磨耗が起る場合には、この磨耗は面間のたわみ可能な共働作用によつて調整され、特に第13図に示されるように面44、45の延長部に生じる磨耗はなお摺動ゲートと静止頂板9の外端周辺の境界内にある。第14図に示されるように静止頂板9の上部が変形して、それと取付けプレート66の間に溶融金属の侵透(Penetration)が生じても、静止基板9の外端にはなお確実な密封が形成され、摺動部材は第12および13図に説明したのと同様に密封を続ける。

第15図に示す閉鎖機構の別の実施例では、延長又は浸入用注入管又はノズル部49が摺動ゲート・バルブ5のフレーム13の下部の挿入部52に設けられる。共通の参照番号が適用できる場合は以下の説明にもそれが用いられる。金属外側ゲース又は殼1を有する容器Vは耐火ライニング2を備え、その中央部にはブロツク3が設けてある。この発明の第1実施例と同様な材料の安全ノズル6が用いられ、静止頂板9は金属で包囲され、又は固定環状リングと共に形成され、第1実施例のように安全ノズル6と共働する。これは摺動ゲート・バルブ5の取付けプレート66の凹所に受け入れられ、取付けプレート66は容器Vの金属ゲース1に取付けられる。

しかし乍ら、この場合には、周りがフレームで包まれたキヤリア50が、液圧シリンダー16によつて作動されるラム17に付けられる。負荷パツド15に対する空冷は異なる位置にある空気連結部47によりなされ、前記連結部はスベーサー46に配置され、空気を主フレーム13の一部に送る。

負荷パツド15の圧力はノズル挿入部52に向られ、摺動ゲート12は2つの部片の耐火物から成り、従つて静止頂板9と可動摺動ゲート12の間に耐食性耐火面R-Rが前述の第1実施例と同様に設けられる。片寄り(オフセツト)部65、67がそれぞれ摺動ゲート12と注入管およびノズル延長部の頭部51の上面に設けられる。従つて、摺動ゲート12が右方向に往復動される(図示されない)と、摺動ゲートの中央に位置する注入開口は作業ノズル4の注入開口と整合し、注入管49を通つて下方に向かう。第15図の遮断位置では、摺動ゲート12の上面と静止頂板9の下面との間に確実な閉鎖が起こり、この2部分は耐火面Rを有し、負荷パツド15により前述のような相互圧力関係に保持される。第1実施例と同様に負荷パツド15は、連結部47とフレーム13の内部に設けられた空気室75を通して噴射される空気によりたえず冷却される。フレームについては、直立した障壁59がスベーサー46のレベルの直上に設けられていて、ノズル挿入部52とノズル49の頭部51をその位置にしつかりと保持し、摺動ゲート12だけが可動部材であり、前述のように負荷パツド15によりその位置に保持されるので一定の圧力が共働する耐火面Rに与えられて摺動ゲート12の開放又は閉鎖位置においていかなる磨耗をも最小にする。

容器に対する注入バルブの2つの実施例を図示し且つ説明したが、両方とも共通に固定耐火部材又は頂板に向つて弾性的に押圧される摺動耐火ゲート・プレートを有する。たわみ装置又は負荷パツドを用いて2つの耐火面をたえず押圧して互に弾性的に接触させ、これによつて不整合を補償し、使用中密封を維持する。実際の機構では2つの実施例共にスプリング負荷形パツドについて示し且つ又トグル機構による摺動ゲート・バルブ機構5を開閉する機構を示した。このトグル機構により中に消耗した耐火部品の取換えを容易にする。この発明の実施態様は下記の通りである。

(1) ゲート・プレートは、開口部分と開口のないとを備えている一体の部材からなり、該部ラムによつて往復動するようキヤリアと組れ、キヤリアは容器に取付けた主フレームで移動することができ、前記主フレームが構造体で形成されたことを特徴とする特許請求の範囲に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(2) キヤリアが、冷却空気の供給部に連結された空気室を有し、該空気室は負荷パツドに対し冷却関係を有するように配置されていることを特徴とする特許請求の範囲に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(3) 空気室と冷却空気の供給源との連結はラムを形成する中空ロツド内の通路を介して行なわれることを特徴とする第(2)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(4) 各負荷ロツドはキヤリアの凹所に位置させた圧縮スプリングを備え、該スプリングは、キヤリアから突出してゲート・プレートに係合する頭部を有するシヤンクを包囲していることを特徴とする特許請求の範囲に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(5) 圧縮スプリングの動きを制限し、ゲート・プレートに及ぽす負荷を決定する拘束装置を設けたことを特徴とする第(4)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(6) キヤリアを支持する構造体の一部がゲート・プレートを露出する位置へ移動できるように取付けられていることを特徴とする特許請求の範囲に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(7) キヤリアを作業位置へ移動させる時にすべての負荷パツドを圧縮させることのできるトグル機構を設けたことを特徴とする第(6)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(8) 前記構造体の一部を構造体の側部材に枢着連結し、構造体の反対側の側部材にラツチ機構を設け、前記枢着連結およびラツチ機構がトグルジヨイントを有することを特徴とする第(7)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(9) ラムとキヤリアとの連結はキヤリアをゲート露出位置へ移動させうるよう解放可能であることを特徴とする第(1)項および第(7)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(10) ゲート・プレートがキヤリアの凹所に取はずし可能に受け入れられていることを特徴とする第(1)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(11) ゲート・プレートが、容器の注入開口と整合するオリフイスを有する頂板と共働し、前記頂板が、容器に取付けた取付け部材の凹所に取はずし可能に受け入れられていることを特徴とする第(6)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(12) 各プレートを受け入れる凹所とその外寸法が直交軸に関して対称でプレートを逆にできるようにしたことを特徴とする第(10)項又は(11)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(13) ゲート・プレートがキヤリアの流路内に受け入れられたノズル延長部を有することを特徴とする第(1)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(14) ノズル延長部を摺動可能に受け入れる開口を有する飛散シールドを設け、前記飛散シールドが排出金属の熱にさらされるキヤリアの側部に隣接して配置され、キヤリアと共に往復動できるようにしたことを特徴とする第(13)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(15) ゲート・プレートと頂板の側部が金属ケーシング内にあり頂板に接触するゲート・プレートの表面部が高耐食性耐火材料で形成されていることを特徴とする第(11)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(16) ゲート・プレートがキヤリアに固定してあるプレート部材と摺接し、該プレート部材は、キヤリア内の流路と連通する開口を有しており、ゲート部材内の開口と前記流路との連通部はゲート・プレートとゲート・プレートの閉鎖位置において協働する固定プレート部材とに設けてある片寄り凹部からなつていることを特徴とする第(1)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(17) ゲート・プレートは上部および下部プレート部分で形成され、片寄り(オフセツト)凹所の一つが下部分に設けられ、固定プレートに設けてある補足凹所がゲート・プレートの開放位置において邪魔のない流路を形成するようにしたことを特徴とする第(16)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(18) 容器の注入開口は取替え可能な業ノズルと容器に取付けられ且つ前記ノズルを取はずし可能に支持するプレートの開口とで構成され、高強度な耐火材料の安全ノズルが前記作業ノズルを包囲し且つ密封ジヨイントで支持されていることを特徴とする特許請求の範囲に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

(19) 安全ノズルの耐火材料が溶融金属をこれに付着凍結(フリーズ)させるような高い熱伝導性を有していることを特徴とする第(18)項に記載の摺動ゲート閉鎖機構。

図面の簡単な説明

第1図はインゴツト・モールドに溶融鋼を注入するための摺動ゲート閉鎖機構又は注入バルブを用いるべく改造した底注入容器の斜視図、第2図は第1図に示す注入バルブの遮断位置を示す長手方向断面図、第3図はバルブの開位置又は注入位置を示す注入バルブの長手方向断面図、第4図はキヤリアの流路に隣接した断面に沿う横断面図、第5図は注入バルブが耐火部品の交換のために開かれた第1図に示すバルブの一部分解斜視図、第6図は第5図に示す注入バルブを開位置で示す第4図と同じ高さと位置からみた拡大断面図、第7図は各耐火プレートを合致させて密封を行わしめるのに用いられるたわみ装置の位置と方向を特に不す第2図のⅦ-Ⅶ線に沿う水平断面図、第8図~14図はすべて種々の問題点とその解決点を示す概略断面図で、第8図は一方の耐火部材を他方に取付ける従来装置が耐火部材表面間に一様な密封作用を行わしめない状態を示す横断面図、第9図は耐火部材表面間にたわみ圧力面を形成し要求される密封条件をもたらすたわみ装置を有するこの発明の装置を示す第8図と同様な水平断面図、第10図は腐食され且つ磨耗される領域がこの設計で調整されろ状態を示す、耐火プレートとノズルを有する部材の別の断面図、第11図は磨耗が密封面よりさらに進んで漏れの生じる場所を示す別の問題点を示す図、第12図は2つの耐火部材面の磨耗およびたわみ効果が本発明の注入バルブにより調整される状態を示す図、第13図はこの発明による注入バルブによる磨耗の調整を示す別の図、第14図は凍結部又は汚染部がこの発明の注入バルブを非作動にしない状態を示す第8、9図と同様な横断面図、第15図はゲート・プレートの往復動の邪魔にならないように注入容器に対して設けられ溶融金属の流れを作動させる延長注入管が用いられるこの発明の別の実施例の注入バルブの長手方向横断面図、第16図は正常な作業位置にある負荷パツドの一つの中間部に沿う横断面図、第17図は予負荷された位置で移動の限界を示された負荷パツドの一つの横断面図である。

V……容器、12……ゲート・プレート、14……キヤリア、15……スプリング装置、17……ラム、22……耐火ノズル。

第1図

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第2図

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第3図

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第4図

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第5図

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第6図

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第7図

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第8図

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第9図

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第10図

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第11図

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第12図

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第13図

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第14図

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第15図

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第16図

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第17図

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第2部門 (2) 特許法第64条の規定による補正 (昭和61年10月20日の掲載

公告特許番号

52-22900

昭和50年特許願第48550号(特52-22900号、〔JPC11C1〕、昭52.6.21発行の特許公報2(1)-74〔653〕号掲載)については特許法第64条の規定による補正があつたので下記のとおり掲載する。

特許第1328859号

Int. Cl.4B 22 D 37/00 11/10 識別記号 庁内整理番号 7139-4E 8116-4E

1 「発明の名称」の項を「溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖装置」と補正する。

2 「特許請求の範囲」の項を「1 容器Vに対して固定され容器Vの注入開口と整合した開口を形成された耐火物の静止頂板9と、前記静止頂板9と密着し該静止頂板9の開口の周りの密封領域に沿つて摺動可能な耐火物のゲート・プレート12にしてその開口または開口のない部分が前記静止頂板9の開口ど整合したとき夫々容器Vからの溶融金属Mの流れを許容しまたは停止させるゲート・プレート12と、前記ゲート・プレート12を収容しかつ支持する主フレーム構造体13と、圧縮されるとき弾発力を前記ゲート・プレート12に作用させるように前記主フレーム構造体に装架された弾性押圧体と、を有し容器Vの注入開口を通る溶融金属Mの流れを制御する摺動ゲート閉鎖装置において、前記主フレーム構造体の一方の側に間隔を置いて取り付けられた複数個のプラケツト35を有し、これらのプラケツト35の夫々には容器Vに取り付けたピン28が嵌まり込む長孔35’が形成されており、かつこの長孔35’はその長手方向が前記ゲート・プレート12の上面に対しほぼ垂直になる方向に形成されており、さらに前記主フレーム構造体13の他方の側に取り付けた支承部材に着脱可能に係合するラツチ装置が容器Vに取り付けられ、該ラツチ装置は前記支承部材に係合させると前記ゲート・プレート12の上面が前記静止頂板9の下面に対し両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持されるようになつており、さらに前記主フレーム構造体13が前記ラツチ装置で保持されているとき前記ピン28を前記プラケツト35の長孔35’に摺動させながら前記ゲート・プレート12を前記静止頂板9に向つて動かし前記弾性押圧体の弾発力に抗して前記ゲート・プレート12を前記静止頂板9に密着せしめてこの密着状態を維持する装置が設けられていることを特徴とする摺動ゲート閉鎖装置。」と補正する。

3 「発明の詳細な説明」の項を「この発明は溶融スチール、アルミニウム、真ちゆう等の溶融金属を収容する容器からインゴツトケース等に注入する溶融金属の流れを制御するために容器の注入開口に取付ける摺動ゲート閉鎖装置に関する。

上記摺動ゲート閉鎖装置は容器の注入開口と整合した関口を形成された耐火物の頂板に対し同じく開口を形成された耐火物のゲート・プレートを密着摺動せしめ両者の開口を合致させたりずらしたりすることにより溶融金属の流れを制御するようにしたものであるが、両耐火物は高温の溶融金属の作用で損傷しやすくまた短時間で摩耗するため頻繁に新しいものと交換することが必要である。例えばその頻度は少なくとも1日1回は交換しなければならないというほどの頻度である。従つてこの摺動ゲート閉鎖装置においては稼働率を高めるために耐火物の静止頂板およびゲート・プレートの交換作業の能率を如何に高めるかが重要な問題であるが、従来の摺動ゲート閉鎖装置はこれ等の耐火物の交換に多くの労力と時間を要し生産性の悪い構造となつていた。

本発明の目的は耐火物の交換作業を容易迅速に行い生産性を高めると同時に交換作業に際して耐火物を損傷させることがないように構成された摺動ゲート閉鎖装置を提供することである。

本発明によれば、上記目的は容器に対して固定され容器の注入開口と整合した開口を形成された耐火物の静止頂板と、前記静止頂板と密着し該頂板の開口の周りの密封領域に沿つて摺動可能な耐火ゲート・プレートにしてその開口または開口のない部分が前記頂板の開口と整合したとき夫々容器からの溶融金属の流れを許容しまたは停止させるゲート・プレートと、前記ゲート・プレートを収容しかつ支持する構造体と、圧縮されるとき弾発力を前記ゲート・プレートに作用させるように前記構造体に装架された弾性押圧体と、を有し容器の注入開口を通る溶融金属の流れを制御する摺動ゲート閉鎖装置において、前記構造体の一方の側に間隔を置いて取り付けられた複数個のプラケツトを有し、これらのプラケツトの夫々には容器に取り付けたピンが嵌まり込む長孔が形成されており、かつこの長孔はその長手方向が前記ゲート・プレートの上面に対しほぼ垂直になる方向に形成されており、さらに前記構造体の他方の側に取り付けた部材に着脱可能に係合するラツチ装置が容器に取り付けられ、該ラツチ装置が容器に取り付けられ、該ラツチ装置を係合させると前記ゲート・プレートの上面が前記頂板の下面に対し両者の間に間隔を置いて向き合う状態に保持されるようになつており、さらに前記構造体が前記ラツチ装置で保持されているとき前記ピンを前記プラケツトの長孔に摺動させながら前記ゲート・プレートを前記頂板に向つて動かし前記弾性押圧体の弾発力に抗して前記ゲート・プレートを前記頂板に密着せしめてこの密着状態を維持する装置が設けられ、かくして前記ラツチ装置を外し前記構造体を開いた位置に揺動させると前記ゲート・プレートと頂板とに接近できるようになつていることを特徴とする摺動ゲート閉鎖装置を提供することによつて達成される。

上記本発明の摺動ゲート閉鎖装置は、ゲート・プレートを支持する構造体をその一方の側に取り付けたプラケツトに形成された長孔を容器に取り付けたピンに嵌め込み容器に対し揺動および往復直線運動を可能に結合すると共に、構造体の他方の側に取り付けた支承部材に容器に取り付けたラツチ装置を係合離脱せしめるようにしているので、構造体は極めて容易に開閉でき、したがつて摩耗あるいは損傷したゲート・プレートおよび静止頂板の両耐火物の交換作業は極めて容易となる。更に前記長孔はその長手方向がゲート・プレートの上面に対しほぼ垂直になる方向に形成されているので耐火物の交換後の構造体の取り付け作業においては、先づ構造体の支承部材にラツチ装置を係合させたとき両耐火物はほぼ平行に向き合つた状態保持され、次いで両者を締め付け機構によつて密着させるとき両者は平行状態を維持したまま一様の圧力で圧接させることができる。このように本発明によれば長孔を使用して構造体は2段階の操作で閉鎖されるようにヒンジ結合されているため両耐火物は均一な接触圧をもつて密着し、又閉鎖の際に両者が局部的に当接することによつて起る耐火物の損傷を避けることができる。

この発明の実施例を添付図面を参照して説明することにする。

この発明の概要が透視図で第1図に示してある。この場合底部注ぎとりべとして図示される容器Vは金属殼1を有し、該容器Vの基部には取付けプレート66が固着させてあつてこれに摺動ゲート・バルブ5が取付けてある。摺動ゲート・バルブは総体的に主フレーム13と、一対のトグル機構とで構成され、図示されているヒンジ・トグル機構は、後述するように耐火部品の取替えに当つて主フレーム13を開閉する。摺動ゲート・バルブ5の下部から耐火注ぎノズル22が延び、これは溶融金属Mをインゴツト1に流入させる。固定の熱シールド24が摺動ゲート・バルブ5の底部に設けられ、また熱シールド24に対し摺動する熱および飛散物のシールド25が耐火ノズル22を包囲して設けられ、これは耐火ノズル22と共に移動して摺動ゲート・バルブ5の内部の熱および飛散物を遮断する作用をする。

摺動ゲート・バルブ5はコントロール・スイツチ60でコントロールされる液圧シリンダー16により作動される。コントロール・スイツチ60はシリンダー16に圧力流体を供給すべく液圧管路62を作動し、シリンダー16はラム・シールド64の内部の図示されないラム・ロツドを介して摺動ゲート・バルブ5の作動部材を駆動する。空気ホース61が設けられていて液圧シリンダー16を冷却するためにこれに空気を連続的に流し且つ、摺動ゲート・バルブ5の内部にも流すようになつている。液圧シリンダー16、空気ホース61、液圧管路62およびコントロール部60を含む全装置はそれを回転することにより取りはずすことができ、そのため、ラム・シールド64はその端部に摺動ゲート・バルブ5の連結部63と共働する部材を有し、そこから躯動要素を取はずす作用をする。この簡単な取はずしは、駆動装置を別にしてトグル機構を釈放し摺動ゲート・バルブ5を開いてその中の内部耐火部品を取換える場合に重要になる。又容器Vに溶融金属を満たしている時、シリンダーはこぼれ出る溶融金属による損傷を防止すべく取はずされる。

第2図において、容器Vは金属殼1および耐火ライニング2を有している。前述のようにこの特定の容器は底注ぎ容器であるが、説明が進むにつれて摺動ゲート・バルブ装置5の側注ぎ取付部も容易に形成できることが明らかになるであろう。2都片からなる筒状のブロツク3が耐火ライニング2の中央部に設けられ、その中央に作業ノズル4を位置決めし、このノズルはブロツク3の底部および耐火ライニング2および容器Vの金属殻1を貫ぬいて延びる。作業ノズル4、特に第2図に示される安全ノズル6の機能は取付けプレート66の位置、方向だけでなくその形体と統合される。取付けプレートは第3図に示されるようにボルト26により注ぎ容器Vの金属殻1に取付けらる。第3図において、取付けプレート66は安全ノズル・カラー68を有し、これは安全ノズル6の第1の環状リング6aに接している。安全ノズル6の第2の環状リング6bも静止頂板9と係合するように下方に延びている。こうしてラビリンス型式の結合部が摺動ゲート・バルブ5の取付けプレート66、静止頂板9の上面、およびブロツク3の間に形成される。

作業ノズル4は通常安価な耐火材料で製造され容易に取換えることができる。一方安全ノズル6は高強度で高密度の材料で製造される。従つて、安全ノズル6が形成される材料は作業ノズル4の破壞の場合に追加強度を与えるだけでなく、その高い伝導性によりそれに接触する溶融金属のくつつき(freeze)を起こす傾向がある。通常の作業では安全ノズル6は、容器Vの耐火ライニング2が取換えられる時のみ取換えられる。もちろん、破損の場合はすぐに取換えても良い。そのような取換えの場合、安全ノズル6と作業ノズル4は通常同時に取換えられる。

第4図において、静止頂板9は取付けプレート66の凹所内に嵌合する。しかる後ゲート・プレート12が摺動ゲート・バルブ5の主フレーム13の内側に配置され、そして第2図に示されるように作業状態に閉じられる。

第3図において、静止頂板9は安全ノズル6の環状リング6bを受け入れるように形成された中央環状溝を含む。金属包囲体10(第2図参照)は静止頂板9を包囲し、そしてこれを静止頂板に係合させるべくその周辺でクリンプされている。金属包囲体10にはセラミツク同志の結合を行なわしあるために第2の環状リング6bに隣接して開口が設けてある。金属包囲体と頂板9との間には不規則を整えるためにモルタル充填剤が挿入される。このようにして静止頂板の耐火材料は包囲されているのでひび割れが入る場合にもそれはその位置に維持される。

ゲート・プレート12と耐火ノズル22も同様に金属包囲体70内に包囲され、金属包囲体70は好ましくは下端19および頂部周辺18で折り曲げられる(第2図参照)。従つて、静止頂板9とゲート・プレート12の両方は金属で包囲された耐火物である。ゲート・プレート12は好ましくは3つの部片で構成される。特に図示のように耐火ノズル22はゲート・プレート12の注入口部として設けられた耐食性の高い耐火内側スリーブ21と伝導性の低い外側の部分から構成れる。静止頂板9が形成される材料に匹敵する材料の耐摩耗性頂板20がゲート・プレート12上に設けられる。

摺動ゲート・バルブの中で互に摺動する耐火材料の2つの面間に適度の圧力関係を与えることが不可欠である。即ち第4図において、互に摺動密封係合する静止頂板9とゲート・プレート12の相対向した耐火面Rに適度の面圧を与えることが必要である。2つの耐火面Rの間の圧力関係を維持するため、摺動ゲート・バルブ5内に多数の負荷パツド15が設けてある。これら負荷パツド15はばねで押圧されてゲート・プレート12の金属包囲体70の下面に当つており、静止注入開口の周辺の回りにそのような多数の負荷パツド15が設けられるので、これらは耐火面Rの密封圧力を一様に高める環状の負荷領域をたえず形成する。第4図に示されるようにゲート・プレート12の金属包囲体70の下面に接する負荷パツド15は、ゲート・プレート12を曲み且つ主フレーム13内で往復動するキヤリア14内に設けられる。環状の負荷領域は、取付けプレート66に当つていて、しかもこのプレート66に設けてある凹所内に収容されている静止頂板9の注入開口の回りに延びる。

第2図において、ラム又はピストン・ロツド17は液体シリンダー16により作動され、そしてこれはゲート・プレートのキヤリア14に直接連結し、前記キヤリアはその内都に多数の連結された空気室75を有し、そしてゲート・プレート12の下面に当る多数の負荷パツド15を支持する。第2図において、ピストン・ロツド17とそれに関連する液圧シリンダー16内のピストン54は右側位置にあり、ゲート・プレート12は静止頂板9のオリフイスを開いている。空気ホース61は中空ロツド17の端部に連結され、空気の一定の流れを多数の空気室75に配送し、それによりキヤリア14と負荷パツド15を負荷パツド・スプリングが永久に変形する温度より低い温度に冷却する。

注入時のゲート・プレート12の位置が第2図に示され、液圧ピストン54は右方位置にあり、而してロツド17は空冷式の摺動ゲート・キヤリア14をすべての注入ノズルが軸方向に整合する位置に引張る。引張り作用中いつでも負荷パツド15はゲート・プレート12にたえず接しており、ゲート・プレート12の注入ノズルの周辺でゲート・プレートの上面Rを静止頂板9の下面Rに弾性的に押圧する。

この発明はゲート・プレート12および静止頂板9を容易に取はずし、取かえ、又は再挿入するために主フレーム13が取付けプレート66に対し揺動可能でかつ容易に着脱できることが重要である。第3図、第4図、そして特に第5図、第6図に示される一実施例では、この着脱動作はヒンジ・トグル機構Hとラツチ・トグル機構Lとによつて達成される。主フレーム13とその内部に保持された空冷式ゲート・プレート・キヤリア14はヒンジ・トグルHの回りに第4図に示す開位置まで揺動され、静止頂板9は取付けプレート66に設けられた凹所に挿入され、熱および飛散物のシールド25およびゲート・プレート12は主フレーム13内に挿入され、それから主フレーム13が第6図に示す閉位置へ揺動し、ラツチ・トグル機構Lおよびヒンジ・トグル機構Hを作動させて第3図に示す如く負荷パツド15のばねのたわみ作用により耐火面Rを強く接触させ、同時に摺動ゲート・バルブ5は連結器63を介して液圧シリンダ16と連結されるときはこれによつて作動される状態にされる。

ヒンジ・トグル機構Hには互いに枢着されているトグル・リンク29とリンク34とがあり、またラツチ・トグル機構Lには互いに枢着されているトグル・リンク29とリンク33とがある。

第5図において、取付けプレート66は相対向した垂下トグル支持体27を有する、各トグル支持体27はピボツト保持ピン28を有し、これに両トグル機構のトグル・リンク29が回動自在に取付けてある。第5図でわかるように、ラツチ・トグル機構Lのトグル・リンク29はその下部にリンク33を支持するピボツト・ピン30を備える。一方、リンク33は他端が主フレーム13の外側都分に取付けられたラツチ・ピン31に係合する円弧形の凹所になつている。ヒンジ・トグル機構Hのリンク29は同様にリンク34とピボツト・ピン30により連結され、更にリンク34の他端はピボツト・ピン30によりラツチ・ピン31と反対側の主フレーム13の外側部分に回動自在に取付けられている。更にヒンジ・トグル機構Hの側において主フレーム13にはプラケツト35が取付けられており、このプラケツト35に主フレーム13と直角をなす方向に長孔35’が形成され、長孔35’に保持ピン28が嵌入されて主フレームは保持ピン28を中心として揺動可能である。

主フレーム13を第5図に示す装置から第6図に示す水平位置に揺動させるとき主フレームは長孔35’の上端を保持ピン28に係合させて回動するので静止頂板9に対しゲート・プレート12は主フレーム13の枢着点側においてもある程度の間隔を保つて揺動し主フレームを通常のピボツトで連結している場合のように静止頂板9とゲート・プレートのうちの一方の縁が他方の表面に点接触することによつて起る損傷を避けることができる。主フレーム13が水平位置に揺動されたときラツチ・トグル機構Lのリンク33の先端をラツチピン31に係合させる。このときヒンジ・トグル機構H側において主フレーム13は長孔35’の上端を保持ピン28に係合させて水平に保持され、負荷パツド15の上に支持されたゲート・プレート12は静止頂板9に軽く接触する状態か若干静止頂板9と間隔を置いた状態で保持される。各トグル機構L、Hのリンク33、34にはトグル・レバー・ソケツト36が設けられ、固定熱シールド24の両側には2つのトグル・レバー57(第3図および第6図に破線で示されている)のための切欠部56が設けられており、各トグル機構の作動は両トグル・レバー57をトグル・レバーソケツト36に挿入して互に中央に向つて押圧することによつて行われる。この作動により長孔35’の下端が保持ピン28に係合するまで主フレームが押し上げられ負荷パツド15のばねが圧縮されてゲート・プレート12が静止頂板9に強い圧力で密着し、更に両トグル・レバー57は垂直になる位置を越えて第3図に示す如く若干中央に向つて傾斜した位置まで押圧されてトグル固定作用が達成される。このトグル固定作用はトグル・レバー57によつてリンク33、34を垂直位置を越えて外方に開かない限りキヤリア14を介して主フレーム13に作用する負荷パツド15のばねの圧力によつて維持される。主フレーム13の動きはプラケツト35の長孔35’で制限され、主フレーム13はトグル・レバー57の操作で固定または釈放されるとき容器に対して平行に維持されたまま真直ぐに近づきまた離れる。

本発明は以上のように長孔35’に容器Vから垂下する支持体27に設けた保持ピン28を嵌入させているので主フレーム13は容器Vに対し揺動および垂直運動の二重の運動ができる。この構造によりゲート・プレート12を静止頂板9に対し間隔をあけたまま主フレーム13を枢動せしめることができると共に静止頂板9とゲート・プレート12を両者の向き合つた面を互に平行にして円滑に離接せしめることができるので静止頂板9とゲート・プレート12が点接触することによる損傷はなくなり又均一な接触圧力を保つことができる。

図示の実施例は耐火面Rの間に圧力接触を維持するために負荷パツド15のばね力を利用してトグル機構H’.L.を作動し主フレーム13を作動位置に締め付けまた作動位置から釈放するように構成されているが、主フレーム13を締め付けまた釈放する作用はトグル機構に限らず他の手段で行うこともできる。本発明において重要な点は前述の通り主フレーム13を容器Vに対して揺動のみならず垂直運動できるように長孔35’を介して保持ピン28に取り付けたことにある。」と補正する。

4 「図面の簡単な説明」の項を「第1図はインゴツト・モールドに溶融鋼を注入するための揺動ゲート閉鎖装置即ち注入バルブを用いるべく改造した底注入容器の斜視図、第2図は第1図に示す注入バルブの開位置即ち注入位置を示す注入バルブの長手方向断面図、第3図はキヤリアの流路に隣接した断面に沿う横断面図、第4図は注入バルブが耐火部品の交換のために開かれた第1図に示すバルブの一部分解斜視図、第5図は第4図に示す注入バルブを開位置で示す第3図と同じ高さと位置からみた拡大断面図、第6図は第3図と同じ高さと位置からみた注入バルブをラツチ・トグルを係合させているが両トグル機構を作動して閉位置に固定する前の状態を示す拡大断面図である。

V:容器、9:頂板、12:ゲート・プレート、13:主フレーム、28:ピン、35:プラケツト、35’:長孔。」と補正する。

5 「図面」を「」と補正する。

第1図

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第2図

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第3図

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第6図

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第4図

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第5図

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特許公報

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特許法第64条の規定による補正の掲載

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特許公報

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特許公報

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特許法第64条の規定による補正の掲載

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